最近の神世界(2011.8.1)【1】

 神世界が過去に行ってきたことを知るのは比較的容易だが、”今現在”、神世界内部でどのようなことが行われているのかを知ることはなかなか難しい。被害者から聞くことができるのは神世界を止めるまでの情報であり、被害者が止めた時点で情報入手も止まってしまう。神世界に今でも通っている人が最新の情報を提供してくれるといいのだが、神世界を信じている人から見れば、私は”悪魔”に見えるようなので、これまでは現役会員からのアクセスは非常に少なかった。
 しかし、各種情報端末が広く行き渡った現代において、組織の内部情報流出を完全に抑えるのはなかなか難しい。何もやましいことをしていない企業であればともかく、自社の看板を塗りつぶしたり、電話応対で自社名を名乗らず、個人名で電話を取るようなことをしている怪しげな企業にあっては、働いている者の中にも不信感や不平不満を持っている者も多く、そうした者から情報が外部に出るケースも多い。九州電力の”やらせメール”がバレたのも、九電子会社社員の内部告発からだった。
 急速なネット環境の発達により、中国政府ですら、国内で発生した新幹線追突事故の情報統制ができない時代になってきた。神世界や観音会に関する情報も、もはや隠蔽することは不可能な時代になってきたのだ。Googleで、「神世界」や「ヒーリング」、「御霊光」などの単語で検索すると、私が作っているサイトが上位にヒットする。特に最近はiPhone等の手軽な携帯端末で私のサイトを閲覧している新規閲覧者も非常に多い。多くの神世界関係者が逮捕されていることもあって、現役会員やその家族からのメールもちらほらと舞い込むようになってきた。以下で紹介する最近の神世界内部の様子は、そうした”風の便り”をまとめてみたものだ。
 なお、この記事では現在でもサロンに通っている者を「会員」と表現している。これは、多くの者がすでに観音会に移籍していることと、神世界内部でも「先生」や「スタッフ」という肩書が廃止されている場合が多いので、これらをまとめて「会員」と表現している。会員と言っても、決して”創価学会会員”のことではないので、お間違いのないようにお願いしたい。
 なお、この記事で紹介した内容に間違いや補足すべき事項があった場合は、遠慮なくお知らせいただきたい。

神のお文字
このお守りから御霊光が・・?
(右は大きさ確認用のボールペン)
(クリックすると大きくなります)
 右の写真は、「神のお守り」と呼ばれているもので、現在営業中の神世界系列サロンで入手することができる”新アイテム”だ。写真の品は名刺サイズであるが、もう少し大きなハガキサイズの「神のお文字」もある。大きさは違っても内容は同じで、「神」の一文字が書いてあるだけだ。ハガキサイズのものをA4サイズ程の額に入れたものが2011年4月頃から各拠点やサロンに置かれている。
 これらの品をどれくらいの値段で売っているのかが気になるところだが、なんと値段は決まっていないそうだ。「神のお守り」の値段は、会員が自由に決めてよい事になっている。そう聞くと私などはすぐに「じゃー、タダでもいいのか?」と思ってしまうが、”御霊光命”の熱心な客はそのようには考えないものらしい。大半の客は、「創造者の方の分御霊(わけみたま)となるお方のお文字だから」と、最低でも1万円以上の金額を納めているようだ。
 なお、「創造者の方の分御霊となるお方の文字」の意味はお分かりいただけるだろうか? 創造者とは教祖・斉藤亨のことだ。ここ一年程の間にいつの間にか、教祖については「神書をかかれた方」とは呼ばす、「創造者の方」というようになった。”教祖の分御霊となるお方”とは、斉藤亨が教祖に昇格?した際に二代目教主となった斉藤亨の息子のことである。つまり、この「神」の文字を書いたのは二代目新教主とされている。しかし斉藤亨の5名の子供の中で、誰が2代目教主になったのかは会員には一切知らされておらず、もちろん誰一人として二代目教主の顔など見たこともない。また会員もそのようなことを知ろうとはしない。教祖様や教主様は神様に近い方なので、そのように”下世話な疑問”を持ってはいけないのだ(笑)。神世界という組織は北朝鮮の金親子以上に”秘密のベール”が好きな連中である。
 この「神のお守り」には意味があるそうで、これを身につけていると、「魂の奥底にある本当の気持ちなどが引き出され、悪いもの(薬毒・尿毒・肉毒・遺伝毒素の4大毒素)も出て、その分、体や運命も好転する」とされている。言われたままそれを信じ、このお守りを大切にしている客やスタッフもいるようで、”イワシの頭も信心から”は現代でも生き続けているようである。
 神世界では、これと似た趣旨のものが過去にも作られていた。切断カードで紹介した千手観音を描いた名刺大のカードがそれだ。しかし千手観音図を使うことは著作者人格権の問題があると私が指摘したことと、現在は観音会との関係がこじれているので千手観音図を使うことは叶わず、もっと簡単に大量生産できる「神」の文字にしたのだろう。

神世界新聞に掲載さ
れている「神」の文字
(クリックすると大きくなります)
 神世界は言うことがコロコロとよく変わるところだが、2年ほど前からは、「ご霊光は、”新しいお文字”や”神品”、神世界新聞も”新しい号”の方が強力だから、その都度新しいものに変えた方がよい」と言われてきた。この言葉、そのバカさ加減は置いておくとして、敵ながらなかなかうまい”金を出させるフレーズ”を考えついたものだと妙に感心してしまった。会員はこの指導に従って、神世界が次々と作り出す”新アイテム”に群がり、それによって得られる御礼で小銭を稼いでいるのが現在の神世界の姿だ。
 以前は、ご霊光はライセンス取得者から取り次いでもらうか、拠点内の額からしか受けることはできないとされていたが、現在は拠点の額か、神世界新聞3月号から紹介されてる「神のお文字」から受けることができるとされている。
 神世界新聞に掲載されている「神」の文字はこのお守りとは書体が違っているが、「新しいものの方が御霊光が強力」とされているので、神世界新聞にも、そのうちお守りの「神」の文字が登場するかもしれない。朝令暮改は神世界の最も得意とするところである(笑)。サロンには、二代目教主が書いたとされる「神」の文字と、教祖が書いたとされる「神」の文字の両方がセットで掲げてあるところもあり、会員はS藤親子が書いた二つの神の文字に向かって礼拝をしている。
 神世界事件が大きく報道されてからは、サロンに通ってこない会員が増えたが、神世界新聞に掲載された「神」の文字からも御霊光が出ているとされているので、”御霊光命”と思い込んでいる客は、自分を神世界に紹介した者を通して神世界新聞を受け取り、新聞の「神」の文字から御霊光をいただいた「つもり」になり、その御礼を紹介者を通してサロンに届けている。新聞自体は無料で配布しているが、ちゃんと収益が上がる仕組みが考えられているのだ。なんとも「商売上手」な神世界である。
 しかし、2007年12月に吉田元警視がらみで「神世界事件」として警察の捜査を受けた後は、「ラインセンス」や「神書」、「お清めの塩」などの”神様グッズの販売”は見合わされており、物品販売での収益は大幅に減少した。高額な御祈願や鑑定なども「警察の目」を気にして自粛しているので、スタッフに払う金もなくなり、神世界の台所は”火の車”である。


金龍水

「金龍水」の井戸(甲斐市竜王のアカサカ本部)
神世界新聞第4号より
 甲斐市竜王のえんとらんすアカサカ敷地内に作られた井戸から出る、”金龍水”と名付けた水も、今では神世界の小銭稼ぎに一役買っている。井戸から金龍水を汲むこと自体に価格設定はされていないが、”タダほど高い物はない”を地で行く巧みな仕組みが作られている。何しろ水を汲みに来る者達は皆、”御霊光命”と思っている者たちなので、”神様に失礼のない金額”の御礼を納めるのが普通と言われると、それを素直に信じて、水を汲む前か後には、汲んだ水の量や、本人の感謝の気持ちの大きさに応じて、「御礼」の金を各サロンに払っている。神世界幹部としては、「あの水はタダで汲んでもらっている。決して金を出すことを強要してはいない。水を汲んだ会員が自分の意思でお礼の金を出すことはあるが、それは本人の判断で行っていることだ」と言い逃れができるようになっている。下手に価格設定を行わず、”それぞれの自由意思で御礼をする”というシステムは、なかなかよく考えられた集金システムだ。なお、井戸から出てくる水に”金龍水”と勝手な名前つけているが、あの水は鑿泉(さくせん)業者に頼んで地下150メートルまでボーリングを行い、そこから出てきた単なる地下水でしかない。

鑿泉業者によるボーリング作業
(2009.5.24アカサカ本部)
 2007年12月に神世界事件が公になってからは、それ以前のように東京のホテルなどを会場とするような各社合同の祭典などは開かれず、祭典は系列毎にそれぞれのサロンで行うようになっているので、系列の違う者が顔を合わせる機会は非常に少なくなった。そうした中で、唯一、この井戸だけは各系列の客やスタッフが顔を合わせることが可能な場所になっている。この井戸水を汲むことができるのは、えんとらんすアカサカの者だけでなく、びびっとやみろく等、他系列の客やスタッフ、そして何と観音会の会員もここへ水を汲みにきており、神世界のサロンから観音会に脱出した者と、まだ神世界に残っている者とがここでバッタリ顔を合わせることもある。しかしそのような場合でも、一応ここは”神聖な場所”であるので、内心とは裏腹に、軽く挨拶をする程度で平静を装っている場面も何度かあった。
 こうして施設内の井戸などの水を”ありがたい水”として会員に汲ませる方法は、カルトとして名高い、(宗)神慈秀明会の奇跡の水を真似たものであろう。
 山梨県で地下水を採取する井戸を設置する場合、「山梨県地下水資源の保護および採取適正化に関する要綱」に従わねばならず、神世界が井戸を設置した竜王町は、「第1種地下水採取適正化地域」に指定されているので、適正に届け出がなされているか調べてみる必要がある。また甲府盆地は農業が盛んなことから、農薬が地下水に混入しているケースもあり、水質検査も厳重に行うことが求められている。金龍水にも農薬等が混入しているかもしれないので、水質検査をしてもらってから飲んだ方がいい。”前日にあの井戸から汲んだものだ”とスタッフから渡されたペットボトルに入った金龍水をよく見ると、ペットボトルの下部にはかなり濁りがあり、飲んでみたところまずかったという会員の証言もある。一部の客に対しては、「井戸水なので、沸騰させてから飲んでください」と言っているようだが、そのような助言がなく、そのまま水を飲んでいた会員もいた。もし農薬が混入していた場合は、沸点が100℃以下の化学薬品は少ないので、沸騰させただけでは農薬は消えない参考:甲府盆地の地下水水質と農薬濃度


拠点を守ろう運動
 神世界新聞紙上では強気な発言を続けている神世界であるが、これだけ神世界の悪名が世間に知れ渡ってしまうと新たな客の獲得は望めず、またうっかり新たな客を内部に入れてそれが”スパイ”であったり、マスコミ関係者であっては大変なので、現在の神世界は会員を増やそうとする動きはほとんどなく、現在残っている客を確実につなぎ止めることに神経を注いでいる。
 多くの拠点では、「会員全員で各拠点を守ろう運動」が展開され、毎日、数名の会員が当番制で拠点に常駐し、掃除や電話番に当たっている。拠点で行事等がある場合は大掃除をするので、”出動可能”な者が総出で掃除をする。掃除と言っても「四角い部屋を丸く掃く」ような掃除ではダメで、朝一番にサロン内の各部屋全部を丁寧に掃除する。部分別に何枚ものタオルが分けられており、床、じゅうたん、電球、家具、雑貨、壁、天井、外壁など水拭き、から拭き、はたき、窓拭き、掃除機など、掃除の仕方が決められている。神殿の掃除は特に慎重に行うことが要求されており、神様の額に臀部を向けない、掃除機の排気も神様の額に向かないようにしなければならない。掃除中のおしゃべりなどは御法度であり、終始無言で清掃する。
 拠点の掃除を一生懸命するように仕向けることで”会員としての自覚”が高まり、マインド・コントロールが更に深く進む。神殿にお供えするお供物や、お話しをする際のお茶やお菓子も、各自が持ち寄り、自前でサロンの運営をしているのが現在のサロンの実態だ。もはや会社組織としてのサロン運営は崩壊しているのが現在の神世界サロンの姿だ。
 2007年12月の強制捜査後、各サロンでは大幅に客が減少したため収入が減少し、スタッフ等に給料を支払うことが困難になった。そのため、ある時点から「今後はこちらから世の中に浸透して神業を伝えていかなければならなくなったので、神様に繋がってるスタッフが他の会社にお勤めをはじめていくことになりました」いうことになり、大半のスタッフは神世界から給料をもらえなくなった。神世界から給料をもらえなくなったスタッフは、他の会社に勤めて給料を稼ぎ、その金をサロンに貢ぐことになった。”熱心”な会員は、サロンから離れてしまうと御霊光が受けられなくと思い込んでいるので、サロンの活動は”お手伝い”として無給で働き、御霊光を受けるためにサロンにしがみついている。そうした流れの一環なのか、2010年からは神世界全体で、「先生」など呼称が廃止され、全て「さん」づけで呼ぶことになった。そうした状況なので、現存サロンにいる者は全員が”ヒラ”または客であり、責任者がいない状態になっている。
 現在の会員が最も恐れていることは、「神世界が潰れ、御霊光をいただけなくなる」ことだ。会員にとって、御霊光を受けることができなくなることは、即健康ではなくなるという恐怖につながっている。神世界に対して多少の疑問や不審があっても、御霊光から離れることは「死」につながると思い込んでいる者もいるので、なんとしてでも拠点を守ろうと必死になっている。
 要するに彼女らは、”ただ働き”をさせられているだけなのだが、”お手伝い”は神様にお返しをすることになる=神様との取り引きになると言われているため、皆必死で、「楽しい楽しい」と喜んでお手伝いのシフトに入っている。


なかなか目覚めない現役会員
 カルトの末期症状として、崩壊が迫ると逆に結束力が強まる傾向があるが、現在の神世界もそれと似た状況があり、神世界を取り巻く環境が日々厳しくなる中で、残っている者の”結束力”は強くなっている。会員が少しでも「神様」から外れるような言動をすると、その”ずれ”を直すために、周囲から「今あなたが健康で働けてるのは神様のお陰。神様に従っていく事が私達のモットーなのです」と”説教三昧”の声が浴びせられる。思い込みもここまでくると手が付けられない状態であり、周囲の者がどれだけ神世界の欺瞞を説いても、彼女らの頭から御霊光に対する思い込みを消すことはできそうになく、「哀れ」としか言いようがない。
 神世界関係者が逮捕されたことはニュースなどで知っていても、「逮捕された人は何かしたのかもしれないけれど、それと私が信じている神様とは全く関係のないこと。自分は神様についていくだけ」と考え、神世界関係者の逮捕には無関心だ。サロンの中で神世界関係者が逮捕されたことが話題にのぼることは皆無であり、そのような話題を口にできる雰囲気は一切ない。外部の者からすれば、神世界関係者が次々と逮捕され、サロン内はさぞかし大変なことになっているのでは?と考えるところだが、全くそのようなことはなく、サロン内では逮捕はどこかよその世界のことであるようだ。
 現在でも神世界を信じている者の思い込みの深さは相当なもので、玉川本殿で偶然W田会主と会話をする事ができただけで、「神様から気付かされた事ができて良かった」とか、臨時でW田会主の講話を聞けたことだけでも、「神様が時間を作って下さったんだ。神様は自分をみてくれているんだ…。話を聞けた分、神書の「天秤の法則」通り、神様と釣り合っていかねば…」と考え、誰かに講話参加料を払えと言われてなくても、「自発的に」”御礼”という形で会員は玉串として金を払っている。一度にまとまった金額の御礼ができない者は、”ちょこちょこ御礼”といって分割払いで、サロンにいく度に千円ずつでもと御礼をしている者が沢山いる。病状等が少しでも改善した者は、「これは御霊光のおかげ」と思い込んでいるので、病状が改善したからといってそこで金を出すのを止める訳ではなく、逆に「神様に命を救っていただいたことは、お金にかえられないこと。金額に糸目を付けられないありがたいこと」と受け止め、病状が改善した後もずっと金を払い続ける。病状が改善したのは病院に通っていた結果であったり、自然治癒力によるものであるとは全く考えず、全て「神様のおかげ」としか考えない思考パターンが染み付いており、どこまでも際限なく金を払い続け、神世界のよき金蔓(かねづる)となっている。こうした思い込みの強い会員が多いので、神世界の会員数は激減し、以前のような大金が転がり込むことはなくなったが、そこそこの現金収入は今でもあるようだ。
 現役会員は、「神様は永遠だ。ずっとこの拠点に通える。神世界は成就され、世界に浸透していく。だって事実、奇跡は新聞通り出ているもの」、と思い込んでおり強気だ。上からも、「神世界は何ら揺るぎない。新聞をもっと配れ!」と言われており、現役会員らは現実とは乖離した虚像の神世界しか見えていないようだ。
 そうした者が多いが、会員の中にはインターネットで密かに神世界に関する情報を得ている人もあるようで、少しずつではあるが真実に気づいていく人もいる。


最近の神世界【2】へ続く


戻る