2016年と神世界事件

 2016年の年頭に当たり、神世界事件を振り返るとともに、これからの問題点などについて考えてみたいと思います。
 2013年6月4日に最高裁への上告が棄却され、斉藤亨被告の懲役4年6月の判決が確定してから2年半が経過しました。
現在、斉藤亨受刑者は日本海側の某刑務所に収監されていますが、あと2年ほどで刑期を終えて出所してきます。

●神世界残党の動向
 斉藤受刑者が刑務所に収監された後、神世界事件によって斉藤と同じように逮捕・起訴され有罪となったが執行猶予となり、実刑を免れた元神世界幹部連中は、自身が執行猶予中ということもあり、現時点では目立った活動は控えているようです。執行猶予中に再び犯罪を犯すと執行猶予は取り消され、刑務所に収監されるので彼らも今は身動きが取れません。
 被告人佐野孝の執行猶予期間は判決から5年間、被告人淺原史利、被告人淺原嘉子の執行猶予期間は4年間ですので、あと1〜2年ほどで彼らの執行猶予期間が終わり、彼らも「自由の身」となります。その頃には斉藤亨受刑者も刑期を満了して出所してくるので、「満を持して」神世界が活動を再開させる危険性もあります。
 巷には神世界事件に深く関与していながら逮捕されなかった連中も多数おり、その中の一部の者は事件のほとぼりがある程度冷めたと判断したのか、既に活動を再開させている者もいます。
 活動を再開させた連中も神世界事件を通して”学習”したので、現時点では「神世界」という名称は使っておらず、外見は普通のヒーリングサロン等を装っています。ヒーリングサロンと呼ばれるものは日本中に数え切れないほどあるので、その中に紛れ込んでしまえば彼らの活動が神世界とつながっていると気づくことは難しくなります。しかしその構成メンバーを私が見ると、神世界とのつながりが色濃く見えてきます。

●神世界幹部は反省しているか
 斉藤亨やその他幹部が事件を反省し、自分たちがやったことを本当に悔い改めているのであれば、彼らから何らかのアクションがあって然るべきと思いますが、2013年6月4日の有罪判決確定から2年半が過ぎた現時点まで、彼らからのそうした動きは何一つありません。神世界の泡沫分子からの嫌がらせメールが私のところに届くことはあっても、神世界幹部からは一通のメールも私のところに届いていません。
 「神世界解散宣言」では、「私たちは、このたびの神世界事件(民事事件・刑事事件双方含む)により、多くの被害者及び会員等関係者の方に御迷惑をお掛けしたことについて、心より謝罪いたします」とし、神世界各社が行ってきた犯罪行為が「道義的法律的に重大な責任があるということです」と述べていますが、その後の彼らの動向からは彼らが本当に事件を反省しているとは到底思われません。
 数ある犯罪の中でも詐欺の再犯率は高く、ある調査によると詐欺の再犯率は37.4%という数字も示されています。人を騙して楽に金を稼ぐ方法を一度覚えてしまうと真面目に働いて金を稼ぐことがバカらしくなってしまうのかと思います。
 現時点での私の判断は、「神世界幹部は反省していない」と結論づけています。彼らは卑怯です。

●ホームページの今後
 最近、google(及びyahoo)に対して「自分の過去の犯罪歴が表示され続けている」として表示の差し止めを求める訴訟が裁判所に提訴されました。インターネットが現在のように発達する以前であれば個人の過去の犯罪歴を探ることは非常に困難でしたが、現在はインターネット上に膨大な情報が蓄積されており、インターネット上で検索をすれば個人の過去の犯罪歴を知ることは簡単にできます。
 一度犯罪を犯しても所定の法的裁き受け、刑期を満了した者は「普通の人」になったのだから、その者の更正のためにはいつまでも犯罪歴がインターネット上に表示され続けるのは好ましくないという考え方があります。しかしその一方で、犯罪を抑止するためには過去の犯罪情報を市民がいつでも検索できることは有用であり、過去の犯罪情報を検索できることは憲法に保障された「知る権利」であるとする考え方もあります。
 裁判所の見解は「ケースバイケース」で、事例によって若干の揺れがあるようですが、掲載されている内容に虚偽がない場合は犯罪を犯した者の氏名が掲載され続けていても「知る権利」を重要視する傾向が強いようです。過去の犯罪事実を正確に記録し報道することは社会的公益性があります。過去の犯罪事実を詳細に記録した記事は人々を同じような犯罪被害から守ることができるからです。個人のプライバシーを守ることも非常に大切なことですが、その一方で神世界事件のように多くの人々に甚大な被害を与えた組織詐欺犯罪の実態を後々まで閲覧可能な状態に保存することも公益を守る大切なことです。
 神世界事件関係者が本当に事件を悔い改め、二度と同じような過ちを犯さないであろうことが担保される場合は別ですが、そうした確証が得られない現状では、「ヒーリングサロンによる被害」のホームページに掲載されている内容を改変するつもりは私にはありません。
 「ヒーリングサロンによる被害」に実名が記載されている者が表示の差し止めを求める訴訟を起こすのは自由ですが、その行為によって再び自分の実名が公になる覚悟も必要です。

●神世界事件関係者へ
 これまで述べてきたように、神世界事件の詳細な内容を公開し続けることは公益性の観点から必要と私は考えています。しかし、法的な裁きを終えた後も事件関係者の氏名をいつまでも掲載し続けることに対しては一抹の不安もあります。その不安とは、氏名を公開されている者の家族のことです。直接事件に関与した者の氏名が公開されるのはやむを得ないことですが、それによってその子供達が進学や就職する際に何らかの不利益を被ることがあれば、それは必要な範囲を超えた制裁となってしまいます。子供達には罪はありません。
 しかし神世界事件関係者が本当に事件を悔い改めており、今後絶対に再犯しないという保証はどこにもありません。再び同様の事件が繰り返される危険性が少しでもあれば掲載内容に手を加えることはできません。

 神世界解散宣言に名を連ねた9名の者。斉藤亨、日原易子、宮入英実、和田美和、吉田明枝、佐野孝、淺原史利、淺原嘉子、栗山悦子。
 誰か一人ぐらいは私とまともに話ができる者はいないのか?
真摯に私と話ができる者がいるのであれば下記に連絡してきなさい。話し合いの結果によっては、「ヒーリングサロンによる被害」に掲載されている内容の一部を、一定の条件の下で変更することも検討してみたい。

2016年1月1日 藤谷歩湖(fujiya)
anti_cult2004@yahoo.co.jp








(以下、過去記事)

2014年と神世界事件

 2014年の年頭に当たり、神世界事件を振り返るとともに、これからの問題点などについて考えてみたいと思います。

●元教祖・斉藤亨の収監
 神世界事件は2011年6月から11月にかけて延べ25名(実人数17名)が組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)等で逮捕され、3名が書類送検された。
 この事件で起訴された被告6名に対する裁判では全ての被告人に有罪判決が下されそれぞれの刑が確定した。元教祖・斉藤亨以外の者は執行猶予付き判決だったが、斉藤亨被告だけは実刑判決となり、斉藤はこの実刑判決を不服として上告し、高裁、最高裁まで争ったが最高裁への上告は2013年6月に棄却され、斉藤亨に対する懲役4年6月の高裁判決が確定した。

 2013年7月に斉藤は収監され、最終的には日本海側の某刑務所に移送された。斉藤亨の刑期は4年6月であるが逮捕後の未決拘留日数90日が刑期に参入されることになっているので収監から4年3月の間、収監先刑務所での生活が続く。斉藤が収監されたのは2013年7月なので斉藤受刑者が刑期を終えて出所できるのは2017年(H29年)10月頃になる。ただし刑務所での受刑態度によってはホリエモンのように刑期満了前に仮釈放になる可能性もある。しかし集団生活が至って苦手な斉藤亨受刑者が模範囚となる可能性は低いだろう。

 斉藤亨は2014年の正月はもちろん、2015年、2016年、2017年の正月も刑務所の鉄格子の中で新年を迎えることになる。刑務所の冬は寒く辛い。「寒さがマジ、ハンパねぇ! MAX着込んで厚手の冬用靴下を履いても支給される毛布一枚と掛け布団だと足先まで暖まらない。寒すぎて、夜に何度もトイレに起きちまう。便座は氷のよう。寒すぎて熟睡できないって、なんか冬山で遭難した気分だよ」とホリエモンは刑務所での体験を述べている。

●一言も謝罪していない斉藤亨
 私は斉藤亨受刑者に対して再三、被害者に謝罪するよう求めてきた。掲示板で何度も呼びかけるとともに、2012年12月25日には「斉藤亨君への手紙」も公開したが、結局のところ彼は被害者に対して一言の謝罪をすることもなく刑務所に収監された。
 斉藤亨は刑事裁判の中で組織的詐欺を働いたことを認めている。彼が民事訴訟を和解し、被害者からの損害賠償請求に応じたのは自分の犯罪行為を認めたからである。彼が第一審の判決を不服として上告したのは組織的詐欺の犯罪事実について争うためではなく、「損害賠償に応じているのだから刑はもっと軽くすべきだ」と主張するためだった。
 「神世界解散宣言」の中では、「多くの被害者及び会員等関係者の方に御迷惑をお掛けしたことについて、心より謝罪いたします」、「私たちはこのような過ちを犯したことについて率直に反省し、お詫びし、法律的責任とは別に社会的責任も負わなければいけないものと考えています」、「被害者の方およびその御家族の方には重ねて陳謝いたします。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉らしきものを発しているが、この神世界解散宣言は裁判所の心証を良くするためのパフォーマンスとして一瞬だけネット上に公開したものでしかない。解散宣言をネット上に掲載したことは被害者には一切知らされておらず、これを掲載した神世界側弁護士(市河)のブログはすでに削除されている 。
 すでに刑が確定し刑務所に収監されたのだから普通の人間であれば己の罪を真摯に反省し、被害者に謝罪することは当然なのだが、彼は未だに一言の謝罪もしていない。刑務所に収監されていても本人にその気があれば面会者を通したり、手紙によって謝罪の言葉を伝えることはできる。刑務所内では贖罪教育というカリキュラムがあり、自分が犯した罪と向き合い反省する時間が設けられている。斉藤受刑者が贖罪教育によって自らの罪を真摯に反省し、被害者に対してきちんとした謝罪ができる日が来ることを期待したい。
 斉藤亨と共に有罪判決を受けた佐野孝、浅原史利など他の被告も誰一人として謝罪した者はいない。
 神世界事件を首謀した者達からきちんとした謝罪があれば、「ヒーリングサロンによる被害」の記事を若干整理することも考えているが、彼らから一言の謝罪もない現状では記事の整理はあり得ない。
 斉藤亨受刑者の収監先は分かっているので、私から彼に対して手紙を出すことも検討している。

●神世界に残された金
 一連の神世界事件では約180億円を超える被害金額が確認されている。しかし民事訴訟や返金請求によって被害者が取り戻すことができたのは12億円程であり、被害額の7%ほどでしかない。斉藤受刑者が違法かつ不当な手段で得た収益の多くはまだ彼らの手元に残されたままだ。斉藤受刑者は京都嵯峨野にある3棟の邸宅など多くの不動産を現在も所有している。刑期を終えた斉藤亨は莫大な金を自由に使えることになる。
 まだ返金請求をしていない神世界事件被害者はすぐに神世界事件被害対策弁護団に連絡していただきたい。 神世界事件被害対策弁護団 TEL03-3515-6681

●残党
 昨年の年頭挨拶でも述べたが、神世界グループ残党達の動きには今後も十分注意する必要がある。執行猶予中の者や起訴猶予中の者は現在は表だった動きを控えているが、神世界系列経営者の中には逮捕されなかった者もいる。詐欺によって労せずして金を稼ぐことを覚えた者は、ほとぼりが冷めればまた同じような方法で金を稼ごうとすることが多い。姿を隠した神世界関係者が素直に心を入れ替え、ハローワークに通って真っ当な仕事に就く姿は私には想像できない。残党等が再び動き出した形跡があれば、直ちに警察もしくは私まで連絡願いたい。

●これから
 表面的には神世界事件は一定の解決を見た感があるが、先にも述べたように神世界事件を首謀した者達は一言の謝罪もしていない。この事実は非常に重要であると私は思っている。謝罪がないということは彼らは反省など全くしていないということだ。神世界事件と同じような被害が再び発生しないようにするためにも、私はこれからも神世界事件から目をそらさず、彼らの動向を追っていく。

2014年1月1日 fujiya








2013年と神世界事件

 年頭に当たり、近年の神世界事件を振り返るとともに、今後の問題点などについて考えてみたいと思います。

●逮捕・起訴・裁判
 2011年3月10日に杉本(吉田)明枝が逮捕されたのを皮切りにして、この年に逮捕された神世界関係者は延べ25名(実人数17名)、書類送検3名に及んだ。
 起訴された6名の被告に対する裁判は2011年7月14日から横浜地方裁判所で始まり、公判回数は延べ24回を数えた。裁判の結果、6名の被告全員に有罪判決が下され、5名の被告の刑は確定したが、教祖・斉藤亨被告だけは懲役5年の実刑判決を不服として控訴した。
 控訴審(東京高等裁判所)は、「斉藤被告が犯した罪は執行猶予をつけるべきでは到底ない」として改めて懲役4年6月の実刑判決を下した。控訴審判決が第一審に比べて6月減刑されたのは第一審判決後新たに約5億円の損害賠償を斉藤被告が行ったためである。斉藤被告がこれまでに支払った損害賠償額は約12億円であるが、約180億円といわれている神世界事件全体の被害額からすれば斉藤被告が手放した額は被害額の7%程度でしかなく、斉藤被告が違法かつ不当な手段で得た収益の大多数は被告人らの手元に残されたままだ。
 斉藤被告は控訴審での懲役4年6月の実刑判決を不服として最高裁判所に上告した。しかし上告理由が認められる可能性は全くなく、このまま懲役4年6月の実刑が確定することになるだろう。


●謝罪
 私は神世界関係者に対し「被害者にきちんと謝罪するように」と何度も忠告してきた。「神世界は謝罪せよ」の記事に掲げた写真を見るまでもなく、被害者や社会に大きな迷惑をかけた企業や団体は自らの非を認めた段階で謝罪をするのが当たり前だ。
 神世界事件の被告全員が裁判で組織的詐欺を働いてきた事実を認め、彼らが公表した「解散宣言」の中でも「道義的法律的に重大な責任があるということです」と全面的に自らの責任を認めているのだ。
 解散宣言には逮捕された被告だけでなく、和田美和、宮入英実、栗山悦子の3名も名前を連ねており、神世界グループ全体で組織的詐欺を繰り返してきたことを認めている。
 神世界グループは組織として非を認め、その責任を取って組織を解散することも決議しているのであるから、その次に行わなければならないのは被害者への謝罪であることは当然だ。しかし彼らはこれまで一切の謝罪を行っていない。
 神世界関係者がここに至るも被害者に対して謝罪を行わない理由は三つある。
 その理由の第一は、”彼らは反省など全くしていない”ということだ。裁判や解散宣言で謝罪の言葉らしきものを述べたのは実刑判決を回避するための方便に過ぎず、本心では全く反省などしていない。
 理由の第二は、彼らの”幼児性”だ。彼らの組織を統括しているのは思慮分別も十分備わっているであろう70歳(逮捕時)にもなる女(日原易子)で、教祖であった斉藤亨被告も53歳(逮捕時)という熟年世代であり、その他取り巻き連中も40歳代、50歳代の者が多数を占めている。普通に考えれば、これだけ分別のある大人が複数名いれば、組織としての振る舞い方の判断が正しくなされて当然と思われるが、神世界を構成する主要メンバーの中には誰一人として大人として当然の判断を下せる者が存在していないため、今日まで謝罪が行われていないのであろう。
 3歳児でも親がきちんと教育すれば他人に迷惑をかけたときには謝罪することができるが、神世界の連中は3歳児にも及ばないようだ。
 理由の第三は、彼らは”詐欺師でしかなかった”ということだ。横浜地裁で行われた裁判では被告人全員が「御神業、一般的な言い方をすると、“宗教活動”は、すべてが詐欺ではありません」と口を揃えていた。もしこの言葉が真実であれば、彼らはどの部分が詐欺ではなかったのかを説明し、自らの宗教的正当性を強く訴えるであろう。しかし彼らはそうした説明を全くしない。いや、しないのではなく、”できない”のである。それは彼らに宗教的正当性など全くなく、彼らの活動の全てが客から如何にして金を詐取することに向けられていたからである。彼らは頭の先からつま先まで全て詐欺師だったので、今更説明も謝罪もすることなどできないのであろう。


●再起
 法務省のHPに「事件事務規程」(法務省訓令)が掲載されている。その第2条(6)に、「不起訴処分又は中止処分に付した事件を再起するとき」が書かれており、不起訴処分にした事件を検察官が再び捜査開始する場合の手続きが定められている。
 神世界事件で逮捕された17名の被疑者は6名が起訴され、他の11名は起訴猶予処分になっている。以前にも述べたが、これら11名の者は”起訴猶予処分”であり決して”無罪”ではない。起訴猶予処分というのは、「犯罪の事実は間違いないが裁判にはしない」というだけであり、新たな証拠が見つかったり、被害者に報復的行為を行うなどすれば直ちに捜査は再起され改めて起訴される可能性がある状態だ。
 起訴猶予処分となった者達は釈放される際に十分そうした内容を聞かされているであろうから、安易に以前と同様の詐欺行為を再開させたり、被害者への報復を行うことはできない状況だ。


●残党
 今後最も警戒せねばならないのが神世界グループ残党達の動きだ。一連の神世界事件捜査で最も大きな課題として残されたのが一部の神世界幹部を逮捕できなかった点だ。逮捕できなかった幹部についての嫌疑は十二分にあったのだが、諸般の事情で逮捕には至らなかった。その理由については今後の捜査に影響するので伏せておく。
 逮捕されなかった幹部等は、自分は逮捕されなかったことを良いことにして活動を再開させている。もちろん神世界という名称は絶対に表に出さず、音楽サークルや「○○の会」など誰でも参加できる形の活動を装っているので、それが神世界への入口とは知らずに参加してしまう人も多い。そうした場は人を集めるための”狩場”で、そこである程度の人間関係ができたところで「神様」を口実にした集金活動へ勧誘するのは以前と同じ手口だ。先日、2012年12月25日にもそうした会が都内某所で催され、”元会主”も参加していた。
 神世界の活動が組織的詐欺であったことが明らかになった現在に至るも、今なおそうした活動を続けている者は極めて悪質である。それらの者に誘われるまま、未だに神世界や御霊光を信じて活動に参加し、幹部と供に悪事に手を染め続けている者も多い。私のところにはそうした者を家族に持った人からの相談がたくさん寄せられている。
 冒頭で述べた私が斉藤等に対して謝罪を求めているのは、今なお目が覚めない人々の心を解放し、それらの人々を家族のところに返してやってほしいという思いもあるからだ。
 2013年は斉藤亨被告の収監を見届けるとともに、残党等の活動に対する監視網を整備する年になる。残党等が新たな犯罪を犯した証拠があれば、直ちに警察もしくは私まで連絡願いたい。


●法整備の必要性
 神世界事件ではこれまでに約12億円を被害者に賠償させることができた。しかし約180億円の被害額全体からすれば、これはまだほんの一部でしかない。客から奪った金で手に入れた資産や現金はその大半が斉藤等の手元に残されており、収監から数年して出所すれば、それらの資産や金は斉藤等の懐に納まってしまう。つまりこうした犯罪は”ヤリ得”なのである。だからこそこうした犯罪が後を絶たないのであり、全国各地で同様の霊感商法詐欺事件がその後も続いている。
 組織犯罪処罰法は不法な手段で得た犯罪収益を没収することができる法律であるが、没収するためには組織犯罪者が所有する金品が不法に取得されたものであることを証拠づけることが必要であり、安易に犯罪者から財産を没収できるものではない。神世界事件においても同法に基づいての犯罪収益没収が行えなかったことからしてもこの法律がまだ十分機能するに至っていないことが明らかだ。
 オーストラリアのニューサウスウェールズ州では画期的な法整備が進められている(注1)。現在同州で進められている改定案では、組織犯罪者が所持する金品が不法に取得されたものと警察が疑った場合、その金品を没収することができるようになる。オーストラリアでも現行法では犯罪者の財産といえども、それが不法に取得されたものと証明する挙証責任は警察側にかけられているが、改定案が施行されれば、その財産が合法的に取得されたものと証明する挙証責任が犯罪者側にかけられるようになる。
 アメリカ合衆国に於いても犯罪収益没収に関する法整備が進んだ結果、多くの犯罪収益が連邦政府によって没収されている(注2)。
 こうした法改正は日本においても早急になされるべきであり、そのためには私たちが声を上げていく必要がある。

 (注1)http://nichigopress.jp/ausnews/politics/10878/
 (注2)http://www.caa.go.jp/planning/22torimatome/4_2-Cap2.pdf


●未来に向かって
 まだ一部の神世界関係者が逮捕されていない点や、多額の犯罪収益が被告等の懐に残されている点など、今後解決していかねばならない問題点は残されているが、斉藤亨被告や主要神世界幹部に有罪判決が下され、ある程度の被害回復もなされたことで神世界事件に一つの区切りはついたと思われる。
 神世界事件に巻き込まれ被害を受けた方は本当に大変だったが、これをバネとして、これから未来に向かって強く生きていっていただきたい。もし余力があれば、今後こうした犯罪被害に遭う人が少なくなるように力を貸していただきたい。
 すでに多くの被害者の方は新たな生活に邁進している。新しい年2013年が、皆様にとってより良い年になることを心から願っています。

 神世界から被害を受けたが、まだ被害申告をしていない被害者の方は、早急に被害対策弁護団に連絡していただきたい。いま最も大切なことは、神世界に金を残さないことだ。

2013年1月1日 fujiya



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