神世界に対する損害賠償訴訟
第7回口頭弁論(2010.6.9)

東京メトロ霞ヶ関駅構内の地下鉄サリン事件
追悼碑
(クリックすると詳細を表示します)

 神世界等に対する損害賠償訴訟の第7回口頭弁論が2010年6月9日に東京地裁で行われた。この日の口頭弁論はいつもより開始時刻が少し遅かったので、地裁に向かう前に東京メトロ霞ヶ関駅構内にある「地下鉄サリン事件追悼碑」を参拝した。
 今年は地下鉄サリン事件が起きてから15年の節目の年に当たる。神世界はサリンこそまかなかったが、神様を騙り、多くの犠牲者を出した点ではオウム真理教の悪質さに負けていない。追悼碑の前で犠牲になった方に黙祷を捧げてから東京地裁に向かった。

 雨の中、東京地裁に着いた。前回、裁判官が1名交代したとの報告があったが氏名などの確認ができていなかったので、法廷に入る前に1階ロービーに置かれている当日の裁判一覧表を閲覧した。
 その結果、民事部第50部(626号法廷)の裁判を担当する者として、裁判長・廣谷章雄、裁判官・和久田道雄、裁判官・原田佳那子、書記官・森川博之の氏名が書かれており、和久田裁判官が新たな裁判官であることが確認できた。
 神世界等に対する損害賠償訴訟は、第一次訴訟が、「平成21年(ワ)17050号」であったが、第二次訴訟の方は、「平成21年(ワ)47212号」という裁判名になっていた。前回からこの二つは併合審議となったので、10:30からの裁判名には両方の番号が記載されていた。第一次訴訟の原告は16名、第二次訴訟の原告は23名、計39名の原告が被告・(有)神世界外24名を訴えているのがこの訴訟だ。

 この日、午前10時から626号法廷では別の事件の口頭弁論が行われていたが、傍聴は誰でも自由にできるので参考までに傍聴した。係争の内容は損害賠償訴訟のようであったが、やり取りの中で興味深い内容があった。準備書面の中には、原告・被告間で交わされた会話の内容を収めたボイスレコーダーの記録があったとする内容が書かれていたようだ。裁判長がその所在を被告に尋ねたところ、被告は、「そのときは、このような裁判になるとは思っていなかったので消してしまいました」と答えると、廣谷裁判長は「エーー!」という顔で、「え!消してしまったの?残念だなぁ・・・。それがあればいい証拠になったんだけどねぇ・・」と述懐した。
 神世界に今でも通っている人がこの記事を見ていたら、是非サロン内での会話をボイスレコーダーに録っておくことをお勧めする。将来、自分が原告になった際には、それが大いに役立つかもしれない(笑)
 この裁判は10分ほどで終わったので、神世界関連裁判まで20分ほど待つことになった。

 10:30が近づくに連れて神世界側、原告側の人達が続々と入廷してきた。法定内の人数や人物配置は前回とほぼ同様で、原告側は紀藤弁護士を初めとして16名ほど、被告側は8名の被告及び被告代理人が着席した。被告側で被告本人が出廷したのはこれまでと同じくプラス花の被告夫妻だけで、それ以外は代理人が出廷していた。傍聴席は今回もほぼ満席に近い状態となり、警察関係者も傍聴していたようだ。

 開廷前に、「今朝届いた書類です」と言いながら書面が慌ただしく原告代理人に配布された。被告側は、またしても、「遅くとも一週間前には準備書面を届けるように」との裁判長の指示を無視し、当日になって準備書面を出してきたのだ。
全部△が付けられた準備書面(4)
(イメージ)
 ほぼ定刻の10:31になって裁判長らが入廷し、全員起立の後、口頭弁論が開始された。まず双方から提出された準備書面の確認が行われたが、廣谷裁判長は、「被告・(有)神世界から全部に△をつけた準備書面(4)が出された。これは被告・(有)神世界としては現場は分からないということですね?」と改めて被告代理人に尋ねた。これに対して被告代理人は「はい」と答えた。感情表現が豊かな廣谷裁判長は、思わず、「まぁ〜・・・」と声を出し、このとんでもない準備書面の内容に呆れ果てたという仕草を見せた。
 みろくは原告の金銭支払い認否については「まだ検討中」との返答だったが、「すでに資料は警察から還付されていますよね?」との問いに、「すでに還付はされていますが確認には1カ月半くらいはかかりそうだ」と回答。
 E2は原告の金銭支払い認否について、「4トントラック2台分の資料が警察に押収されており、資料の還付がまだなので確認できない。資料が戻り次第確認したい」との回答だったが、E2の杉本被告は現在の住居が狭く、トラック2台分の資料を警察から返されても保管する場所がないので還付を受けることができない状況にあるとのことだった。
 アカサカは原告の金銭支払い認否について、「第一次訴訟分については現在分析中なので次回には認否ができそうだ。第二次訴訟分についても現在調査中だ」と答えた。
 びびっとは原告の金銭支払い認否について、「他と同様だ。全てを認否できるようにしたい」と答えたに留まった。
 プラス花は原告の金銭支払い認否が具体的かつ詳細に行われているとのことだ。原告代理人はプラス花の対応について、「金銭支払いを認めるにしても、否認するにしても付随する情報を提示しているので日時の誤りや項目の誤りなどがあった場合にも原告・被告間で調整が可能だ。他のところも原告に関する収支資料を提示して認否をしてほしい」と申し入れていた。
 こうした中で、尾崎幸廣弁護士が、「原告は、これだけの支払いをしたと主張しているのだから領収書を受け取っている筈だ。それを出せばいい」と主張した。私はこの発言を聞いて、尾崎弁護士はひょっとすると神世界がどのようなところか全く知らないのではないか?と思った。神世界のサロンでは客から金を受け取っても領収書は発行しないのが常の姿であり、一部の客が領収書の発行を強行に求めた際も、「それを何に使うのか」などと言って領収書の発行を渋ってきた団体だ。領収書がないために原告は被害実態をまとめるに当たり非常に苦労している。
 尾崎弁護士が神世界では領収書を発行していなかったことを知っていながら上記の発言をしたのであれば原告に対する新たな挑戦であるし、知らずに発言をしたのだとすれば被告代理人として極めて調査がお粗末であることを露呈したに過ぎない。尾崎弁護士のこの発言を聞いていた他の被告側代理人も、さすがにこの発言を援護する者はいなかった。

 最後に、廣谷裁判長は、「まず、認否を先行させましょう」と述べ、再度被告代理人に対して、「当日に準備書面を出したりせず、少なくても一週間前までには書面を出すようにして下さい」と伝えた。
 次回期日(第8回)はすでに7月15日(水)と決まっていたので、次々回期日の設定が行われ、次々回(第9回)は夏休み期間中を外して9月21日(水)の午後3時からと決まった。
 10:57閉廷。

 口頭弁論終了後、別室にて被害対策弁護団から本日の口頭弁論の内容等について説明があり、今後の口頭弁論の進め方についても概要が説明された。
 神奈川県警に提出した刑事告訴の件については現在進行形の事案であるため詳細を述べることはできないが、「動いている」とのことだった。


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