神世界に対する損害賠償訴訟
第6回口頭弁論(2010.4.21)

改修工事中の東京駅丸の内駅舎
この日の東京地方は25度まで気温が上がった。

 2010年春の天候は不順で、野菜等の値段が高騰したり、いつまでもコートが手放せない状態が続いていた。しかし第6回口頭弁論が行われた4/21(水)の東京の天気は快晴となり、最高気温は前日より9度も高い25度まで上がった。翌日(22日)は強い雨模様の天気となり、11度も気温が下がるとの予測も出されており、神世界に対する口頭弁論が行われた21日だけがきわめて良い天気に恵まれたことになる。21日の青く晴れ渡った東京の空は、あたかも今後の口頭弁論が原告にとって良い結果となっていくことを象徴しているかのように感じた。
 口頭弁論終了後、東京駅まで移動すると丸の内駅舎の見慣れた赤レンガの建物は工事中で建物全体が作業テントで覆われていた。丸の内駅舎は創建当時の姿(3階部分にドームがあった)への復元を行う工事が行われているとのことで、完成予定時期は2010年度末とされている。東京駅丸の内駅舎に3階ドームの姿が復元される頃には神世界に対する損害賠償訴訟も大きな進展があるのではないだろうか。

原告17名が受けた被害を詳細に綴った準備書面
ページ数281ページ、厚さ3cmに及ぶ(写真はイメージ)

 626号法廷では10時過ぎから他の事件の口頭弁論が行われていた。事件内容がどのようなものかよく分からなかったが、原告側、被告側から提出された準備書面の確認作業が淡々と行われ、実質的な審議はほとんどないまま10:10直前に終了し、その後慌ただしく神世界事件関係の代理人などが法定内に入った。

 神世界関係の口頭弁論が始まる前、原告側スタッフが大きく重そうなキャリアバックを引いて傍聴席に座って準備をしていた。「裁判が終わったらどこかに旅行にでも行くのかな?」と思って見ていると、女性スタッフがチャックを開けたのでバックの中味が見えた。バックの中には数十冊もの裁判資料が隙間なくぎっしりと詰まっており、女性スタッフはその資料を次々と取り出して原告側代理人に渡していた。この膨大な資料は裁判長にも渡されていたが、その中には平成21年5月25日付訴状記載の原告17名が受けた損害を克明にまとめた準備書面も含まれていたようだ。弁護団の説明によると原告17名の被害状況をまとめた準備書面は、A4用紙281ページ、厚さ約3cmにも及ぶ膨大な書面とのことだ。


第6回口頭弁論が行われた法廷

 第6回口頭弁論では、まず最初に裁判長から今回から裁判官の一部が入れ替わっている旨の説明があった。
 口頭弁論の冒頭部分では、準備書面の確認や求釈明についての確認が行われたが、被告側求釈明の内容について裁判長が、「法律構成要件についての求釈明なのか、具体的事実についての求釈明なのか?」と問いかけたのに対して被告側代理人は、「法律構成要件についての求釈明である」と答えた。
 これに対して原告側代理人からは、「従前の求釈明に対して被告側はきちんと答えていない。原告側が提出した書面では、(原告らが受けた)具体的事実に基づき述べている。被告側も神世界の取締役からどのような指示が出されていたか等を明らかにするとともに、認否をする際も具体的事実について認否してほしい」と被告側に注文をつきつけた。  これを受けて裁判長は、「事実関係を明らかにする方がよい。今回の被告側認否は積極的認否ではない」と被告側の姿勢が消極的であることを指摘する発言があった。

 具体的認否を得る方法として原告側から提案があり、Excelで一覧表形式の認否確認表を作成し、○(認める)、×(否認)、△(不知)と印を付けていく方法はどうかという案が出され、被告側も取り敢えずそれでやってみて、結果を見て最終的にどうするかを判断したいと同意した。裁判長も、「そういう形でやりましょう」と同意した。

原告17名が受けた被害

ここをクリックすると第6回口頭弁論にて原告・被告双方から裁判所に提出された準備書面の内容についてまとめた、「原告17名が受けた被害」の記事があります。


 原告側から二種類の神書が裁判長に提出された。これに対し裁判長から、なぜ同じ神書が二つ提出されたのかとの問いがあり、原告側から「奥書に書かれた発行者名が変化しているので二種類提出した」と説明があった。
 また神書について、慶応大学の准教授が書いた意見書も証拠として提出したことが報告された。
 原告側は証拠として各サロンが発行していたチラシ類も裁判所に提出した。チラシの内容は、系列が違っても記載内容には共通点が多く、いずれもが宗教性を秘匿した内容となっている点について説明が付け加えられた。
 えんとらんすの淺原がスタッフに対して、「8割以上の客を”リピーター”として再度サロンに足を運ばせるように」と指示したことを示す文書も証拠として提出された。

 この後、裁判長から次々回(第8回)の日程について打診があり、7月21日(水)の午前10時10分からと決定した。なお第7回の口頭弁論期日は6月9日(水)の午前10時30分からとすでに決まっている。

 原告側代理人から、「(齊藤亨)が会主から教主になった時期について「不知」となっているが、被告側は最近では自らを宗教だと言っており、組織のトップが教主になった時期が分からないのはおかしい。このようなことまで「不知」とするのは避けてほしい」と発言があった。
 これに対してアカサカ代理人は、「私たちが聞き取った範囲ではよく分からなかった」と述べた。
 原告側代理人は、「末端のスタッフなどが知らないというのであればそういうこともあるかもしれないが、佐野や和田までもが知らないというあり得ない」と指摘した。
 アカサカ代理人は、「佐野はアメリカに行っていた時期があり、その間は組織内部のことについて知らないこともある」と発言した。

 こうした一連のやり取りを見ていた裁判長から、「当然知っているであろうことを『不知』とした場合、『否認』ではないのでその内容について認めたものとみなすことになる」と発言があった。被告側代理人があまりにも真実を明らかにしようとする姿勢に欠けていることに裁判長も呆れているように見えた。
 この日は口頭弁論の後、裁判所と双方の代理人による「進行協議」が予定されていたため、10:30頃に口頭弁論は終了した。
進行協議とは、民事訴訟規則第95条に、「進行協議期日」として定められた裁判手法の一つだ。


民事訴訟規則第95条
裁判所は、口頭弁論の期日外において、その審理を充実させることを目的として、当事者双方が立ち会うことができる進行協議期日を指定することができる。この期日においては、裁判所及び当事者は、口頭弁論における証拠調べと争点との関係の確認その他訴訟の進行に関し必要な事項についての協議を行うものとする。



 進行協議に対する一つの見方として、「当事者の目が届かないところで実質的な処理が進んでしまう危険性がある」と否定的に捉える人もあるが、神世界被害対策弁護団としては神世界事件のように被害者が多く、社会的影響も大きく、マスコミも注目している事件の審理は口頭弁論という公開の場で審議を進めるのが最善と考えている。
 21日の口頭弁論後に原告代理人、被告代理人、裁判所の3者で行われた進行協議の内容は、次回や次々回の口頭弁論までに原告側、被告側がどのような書類を提出するかなどの段取を調整し、今後の口頭弁論の実効が上がるように裁判所が”交通整理”を行ったのが進行協議の内容であり、審議はあくまでも公開の場で行うとのことだ。

第6回口頭弁論を傍聴した人から寄せられた感想や意見など

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