横浜地検への被害申告

警察・地検
 詐欺犯が警察の取り調べに対し、「私は最初から客を騙すつもりでやっていました」等と供述することはあり得ない。犯意を必死に否定する被疑者を着実に追い詰め、犯罪事実を明らかにする為には、捜査に当たる警察官が予め被害実態を詳細に把握しておくことが欠かせない。
 神世界事件のような「神様がらみの詐欺事件」は、「欺罔の立証」が難しいことは当初から分かりきっていたことだ。被疑者が「自分は神様を信じてやっていた。騙す気などなかった」と言い張った場合、それを論破するのは簡単なことではない。
 こうした犯罪を取り締まる警察官は、被疑者を追及する前に、被害者が受けた被害をつぶさに調べ、犯罪事実を確実に押さえてから被疑者を追及すべきであった。捜査に当たる者が神世界犯罪の実態を細部まで知り尽くしていなければ被疑者に犯行を自供させることなどできはしない。神世界事件は、「神様」を巧みに利用しながらコールド・リーディングなどの心理操作を織り交ぜた、これまでにはなかったニュータイプの犯罪であり、神世界事件を単純な詐欺事犯として捜査していたのでは、到底、本星を挙げることは不可能だ。
 多くの被害者から神世界での被害の実態を詳細に聞き出すことで、捜査に当たる警察官も神世界事件の構図が読み取れるようになっていく。「神世界が行ってきた行為は明確な詐欺だ。それも組織的かつきわめて悪質な犯罪だ」、「このような犯罪を野放しにしてはならない。このような団体の存在を許すことは社会に害を為すだけだ。こんな奴らは絶対に検挙してやる」という強い怒りを警察官が持たなければ関係者の逮捕は難しい。

 私のこうした意見に対し、直接捜査に従事した神奈川県警は当然反論するだろうが、膨大な時間を費やしながらも未だに関係者の逮捕ができていないのは事実だ(※1)。県警は、「被害者及び被疑者からの事情聴取は十分行った」と言うであろうが、私が知る限りでは、県警の被害者に対する被害実態の洗い出しは不十分だと言わざるを得ない。被害者数千人と言われている神世界事件でありながら、実際に被害実態を聞き出すことができたのは数百人に過ぎない。警察から数度にわたり被害実態を尋ねられた被害者は、異口同音に「あんな程度の聴取では神世界事件の実態などつかめはしない」と述べている者が多い。警察は従来持っている詐欺の捜査手法を神世界に当てはめて捜査しようとしてきたが、神世界犯罪のような新手の詐欺には旧態依然とした警察の捜査手法では太刀打ちできないことに気づくべきだ。犯罪は進化しているのに警察の捜査手法は進化していない。
(※1)2011年3月10日に5名、同年3月31日に4名、同年4月12日に2名の神世界関係者が逮捕された。

 第三者である私ですら神世界事件の実態を知ったとき、弱者を食い物にして暴利を貪る神世界の行為に激しい怒りを感じた。私がここまで神世界事件に関わってきた原動力は、卑劣な犯行を重ねてきた神世界関係者に対する強い怒りが私をここまで引っ張ってきたと言える。警察官という、犯罪を取り締まり、犯罪から市民を守る責務を背負った者は、私以上にそうした思いを強く持つのが当然だ。犯罪捜査のプロである警察官は、誰よりも犯罪を憎む気持ちを強く持たねば警察官としての職務を全うすることはできない。そのためには被害者が受けた被害の実態を肌身で感じ取れるだけの緻密な捜査が必要だ。
 捜査に当たる警察官が、被害者の怒り、痛み、苦しさ、悔しさを真に理解していなければ、事件解決の道は遠くなるばかりだ。

 被疑者といえども人権があり、逮捕は一定のルールに則って行われねばならないがのは当然だが、慎重な捜査で被疑者の人権が守られる反面、被害者の人権は踏みにじられたまま放置され、多くの被害者が涙を流し続け、生活に困窮しているのが実態だ。警察は犯罪を取り締まるのが仕事であり、被害者の救済は本務ではないと抗弁するかもしれないが、警察が本当にこの種犯罪を撲滅する気があるのならば、被害者の視点から捜査を構築することなしに事件解決はあり得ない。
 私がこのような発言をすると、捜査に当たった神奈川県警の刑事はそうした思いを全く持っていなかったのか?と思われるかもしれないが、現場で捜査に当たった多くの刑事は、神世界事件の解決を目指して日夜頑張っていたのは事実だ。しかし未だに一人の被疑者も逮捕するには至っていない現実は、これまでの捜査の「ピントがずれていなかったか」を問い直すべきだ。

 県警が関係者の逮捕に踏み切ることができない背景には、地検との関係も推測できる。

 警察の捜査は警察独自で行われていると思われがちだが、捜査が進み、関係者の逮捕が近づいた段階では地検との関係が生ずる。地検は警察が関係者の逮捕を行おうとしても、逮捕した者を確実に送検し、裁判で有罪にできる確証が得られなければ警察の逮捕に難色を示す。
 日本の刑事裁判は「有罪率99%」といわれている。これは、「確実に有罪にできる犯罪しか検察は起訴していない」ということだ。冤罪を生まないためには慎重な捜査、慎重な起訴が望ましいのは分かるが、そうした検察の慎重さが一部の犯罪者を喜ばせる結果になっている。多くの神世界被害者が現存している事実がありながら、誰一人として被疑者が逮捕されないのは絶対におかしい。神奈川県警は捜査の過程で多くの神世界被害者を現認している。被害があったことが確認できているのに、「詐欺の確証が得られなければ逮捕できない」、「疑わしきは罰せずだ」というのは警察の捜査が不十分であることを警察自らが是認しているようなものだ。加害者なしに被害者が生ずることなどあり得ないのは小学生でも分かることだ。法治国家の根幹を成す警察が、全国規模で多数の被害者が発生した犯罪の取り締まりができないのでは日本の治安はどうなるのだ。日本は法治国家であるはずだ。
 神を騙って弱者から大金を巻き上げ、多くの弱者の生活を破綻させてきた神世界の行為が野放しにされるようなことがあっては絶対にならない。

 神世界事件は「ヒーリングサロン」を隠れ蓑にして、多数の被害者を出してきた新手の霊感商法事件だ。全国に多くの被害者を生んだ神世界事件は、犯罪史上に残る大きな霊感商法事件だ。神世界事件の幕引きを警察・検察がどのような形で行うかによって、今後の社会に与える影響はきわめて大きいことを忘れてはならない。
 万一、警察・検察が神世界関係者の逮捕ができないようなことになれば、警察・検察は犯罪者に、「ここまでやっても警察・検察は手が出せない」とお墨付きを与えてしまったことになり、日本は霊感商法やり放題の国になってしまう。
 犯罪を取り締まり、犯罪を抑止する筈の警察が犯罪の蔓延に手を貸すようなことになっては断じてならない。警察そして検察が神世界事件を「きちんと」処理することが、今後の霊感商法事件を抑止する大きな力になることを改めて認識し、全力を上げて事件解決に向けて奮闘していただきたい。
 以上私が述べたことは、警察・検察に対する叱咤激励であり、警察・検察への期待の大きさを示したものであると理解していただきたい。


被害者の皆さんへのお願い
 私は警察関係者ではありませんので、神世界事件の捜査が現在どのような形で進められているか、その詳細は分かりません。神世界事件捜査本部は規模は縮小されましたが、今でも捜査は続いています。
 捜査を行うのは警察ですが、警察の捜査結果を受け、関係者の逮捕に踏み切るか否かを決するのは地検です。神世界事件を捜査している神奈川県警と横浜地検の間には、「密接な関係」ができあがっています。しかし横浜地検には被害者の声がまだ十分届いていません。横浜地検に対し、多くの被害者の声を伝えることは事件解決を早める大きな力になります。電話でも、FAXでも、メールでも、ハガキでも、可能な方法で結構ですので、「被害者の声」を下記の横浜地検に届ける行動を起こして下さい。
 検察庁というと敷居が高く感ずる方もあるかもしれませんが、警察よりも親身になって話を聞いてくれる場合も多いようです。難しく考えず、「思ったまま」を率直に伝えてもらえば結構です。検察庁などについて分かりやすく解説している法務省の犯罪被害者の方々へというHPがありますので、一度目を通しておかれると勇気が湧いてきます。

 最近のことですが、ある方が横浜地検に電話で意見を述べたところ、即日に県警の刑事がその人の所へ飛んできたそうです。一人一人の声は小さくても、たくさんの声が集まれば大きな力になります。被害者の皆さんの勇気が神世界を壊滅させる原動力です。

(2010.7.30)



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