ヒーリングサロンの実態

1、それは1,000円の体験ヒーリングから始まった
 まず最初に下記のチラシや女性向けフリーペーパーに掲載されたサロンの宣伝をご覧頂きたい。なにか”怪しい雰囲気”、や”危険な匂い”を感じるだろうか?
 こうした気軽に体験できるお試しチケットを大量に配布したり、女性向け情報誌にサロンの紹介記事とともに割引券をすり込んだりして1,000円から2,000円というお手軽な金額でヒーリング体験をさせるのが神世界関係サロンの共通した、「低い入口」の手口だ。
 その下にある写真は神世界関係サロンの内部だ。高級マンションの一室に案内され飲み物が出されきれいな女性スタッフがにこやかに応対してくれる。どこにも怪しさを感じさせる雰囲気はない・・・。

左のチラシにも「ここから始まり・・・」とあるが、まさに1,000円が入口
右のチラシは女性向けフリーペーパー「ララパド」に掲載されたサロンの宣伝



神世界のヒーリングサロン内部



 こうした入口の”入りやすさ”につられてサロンに足を踏み入れた女性がその後にたどる道は悲惨だ。
 下記のグラフを見て頂きたい。
 この女性がサロンに初めて行ったときに支払ったのは1,000円の体験ヒーリングだった。それをきっかけにして数回低額ヒーリングを受け、その後神書の購入、ライセンスの購入を勧められそれを購入したことにより、「この客は行ける!」と神世界関係者に判断されたのか急速な勢いで金を奪われて行くことになった。グラフが急速な勢いで右上がりに上がっていく様子からも神世界の金の奪い方がいかに激しいかがよく分かる。
 私は他のカルト団体で同様の被害を受けた人の実情も調べているが、神世界のように短期間で被害額が一気に高額に及ぶ例は珍しい。
 このグラフの基データはここにあるので、詳細を知りたい方はご覧頂きたい。

 体験ヒーリングから僅か9カ月、彼女の家族が被害に気づきストップをかけた時には延べ139回にわたってヒーリングや水の購入、各種グッズの購入、各種祈願の実施、改名等、”フルコースの被害”を受けており、その被害額は約172万円になっていた。こうしたパターンが神世界サロンにおける被害の典型的なスタイルだ。
 最初は1,000〜2,000円と低額で明るい雰囲気のため興味本位で試しに受けてみたヒーリングの裏に潜んでいた大きな闇に飲み込まれた女性は全国で数千人に上る。

9カ月間に女性が受けた被害額積算グラフ (1,000円でスタート、9カ月後には約172万円)


2、宝くじ

 宝くじを買ったことのある人は、くじを買ったときの自分の気持ちを思いだしてほしい。
 くじの発売枚数から考えれば高額賞金に当たる確率など天文学的に小さな確率なのだが、買った人はあまりそのようには思わない場合が多い。
 「ひょっとしたら・・・」。自分の財布から金を出して宝くじを買った瞬間から心の中では自分に当たるかもしれない可能性がどんどん大きくなっていないだろうか? 心の中では賞金の使い道まで考えている人も多いのが宝くじファンの一般的姿ではないだろうか。
 人間は、「行動することで考えが変わる」動物だ。金を出して宝くじを買った自分の行動は正しいと思いたいのが人間の心理であり、その考えが宝くじの当選確率が自分に近づいてきたような錯覚を呼ぶ。

 これと同じことが神世界のサロンに通う客の心理にも起こっていたのではないだろうか。
 例え僅かな金額の体験ヒーリングであっても、「自分の財布から金を出してサロンに払った」という行動はサロンに対する自分の考え方をサロン寄りに微妙に変化させている。
 最初の行動と次の行動との間に矛盾を生じさせないようにするためには、サロンスタッフが、「次回も・・」と誘ってくる言葉を否定しにくい心理状態になっており、その結果、第2回目、第3回目・・・、とヒーリングを受け続けていくことになる。
 大げさに修飾された奇跡話と、「これだけ金を払い込んだのだから何らかのメリットがある筈だ」という思いこみがプラシーボ効果を増強する力ともなり、自分も奇跡を体験したような気持ちになってしまうともう歯止めは効かず、神世界という底なし沼に落ち込んで行くことになる。

3、フット・イン・ザ・ドア・テクニック
 神世界のヒーリングサロンにおいても上記で紹介した通り、最初のうちは体験ヒーリング1回:1,000円、ボディーヒーリング20分:3,000円、30分:5,000円など比較的低料金でのヒーリングが設定されており、客に警戒心を持たれないようになっている。
 しかし、これは客を誘い込む手口であり、入口はこのように低く設定しておき、客との接点をつかんだ後は言葉巧みに徐々に高額なヒーリングや関連グッズを購入させる仕組みになっている。

 カルトが好んで使う手口の一つに、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」というものがある。一種のセールス・テクニックとして有名な言葉であるが、セールスマンだけでなく、カルトもこの手法は大いに利用している。
 最初は僅かの金しか出していないのだが、大切なのは、この「金を出した」という実績作りにある。僅かな金額ではあるが、「自分はサロンに一度金を出した」という事実行為があるため、次の行動を求められた時にそれを断ると自分が前回取った行動との間に矛盾が生ずることになってしまうので、断りにくくなってしまう。
 この手法は、最初は体験ヒーリング等ごく軽い要求を客に承諾させることにより、次の段階への足がかりを作り、本題の要求(御祈願など)を断りにくい心理状態に客をしてゆく手法だ。
 他の先輩客と接するようになると、この神世界では金を出して”神と取引”をすることを皆、「当たり前」のように行っているため、「それがここでは当然」のような感覚に陥り、あまり抵抗感を持たなくなってくる。
 こうして客は徐々に深みにはまっていき、気づいたときには数百万円の金が消えている。

 そして自分が被害者となった後も、『自分の判断で金を出した以上はその行為が「正しい」行為でなければ、自分が間違っていたことになってしまう』と考えるため、神世界を悪として認めたがらないという逆転現象がしばらくの間みられる。
 悪徳商法で高額の商品を買わされた人が、自分がだまされたとはなかなか認めず、自分が買わされた高額商品にはそれなりの効用がある、などと売り付けた人間を擁護するような発言をする場合があるが心理的には理解できる行動だ。
 神世界はこうした人間の深層心理を巧みに利用して多くの客から金を巻き上げてきた。


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