神世界の組織的詐欺事件判決に関する声明

平成24年4月16日


東京都千代田区麹町4丁目7番地
麹町パークサイドビル3階
リンク総合法律事務所
TEL 03-3515-6681
FAX 03-3515-6682
神世界被害対策弁護団
団 長 弁護士 紀 藤 正 樹
事務局長 弁護士 荻 上 守 生
外28名  


 当弁護団は、斉藤亨を頂点とする神世界グループによる組織的詐欺事件の被害者らの被害回復等を目的として結成された弁護団です。
 本日午後1時半から、横浜地方裁判所第405号法廷において、神世界グループの有限会社E2(イースクエア)の代表者である吉田(旧姓杉本)明枝に対する組織的詐欺被告事件の判決言い渡しがあり、同被告人に対し執行猶予付判決(懲役3年、執行猶予5年)が言い渡されました。
 しかし、上記判決の量刑は不当に軽く、この点は到底容認できません。当弁護団は、横浜地方検察庁に対しては、速やかに控訴するよう求めるとともに、控訴審では、実刑判決が言い渡されるべきであることについて意見を表明します。以下、その理由を述べます。

  1. 本件は、神世界グループの幹部である被告人らが、「癒し」、あるいは、「ヒーリング」という耳当たりのいい宣伝文句により一般市民をヒーリングサロンに勧誘し、真実は宗教団体である神世界の資金獲得を目的としているにもかかわらず、その目的及び宗教団体であることを殊更に秘し、被害者の抱える悩みや問題点の原因が、体に溜まっている毒素や先祖の因縁であって、御霊光・御祈願をしなければ病気等の被害者の悩みが解決しないなどと虚偽の事実を断定的に述べて、被害者らの不安感・恐怖感を煽り、御祈願や御礼など様々な名目で多額の金銭を騙し取ったという事案です。その被害者は多数に上り、被害金額は、現在判明しているだけでも合計180億円という巨額のものとなっています。
     被告人吉田明枝は、この神世界グループによる組織的詐欺において、同グループ内の有限会社E2の代表者であり、同グループの幹部として重要な役割を担っただけでなく、本件の被害者に対して直接、「神霊鑑定」を行うなどと称して、被害者の病気などの悩みにつけ込み、霊的なものが原因であるなどと虚偽の事実を述べて、不安感、恐怖心を煽り、その旨誤信させて高額な金員を支払わせるという詐欺の実行行為を行った者でもあり、その責任は極めて重大です。

  2. これに対し、横浜地裁は、有限会社E2を含む世界グループが解散を宣言し、会社を清算中であり再犯可能性が低いこと、一部の被害者との間で示談が成立していること、刑事事件の被害者以外の被害者にも被害弁償をしていること、等を被告人に有利な事情として挙げ、懲役5年の検察官の求刑に対し、執行猶予付判決を言い渡しました。
     しかしながら、被告人は当初、公訴事実を否認していたのであり、本件犯行を認めて反省の弁を述べるようになったのも、教祖である斉藤亨が逮捕され、組織的詐欺を認めざるを得なくなったからに過ぎません。むしろ、公判での、被害者や証人を睨み付けるなどの態度や、「騙すつもりは無かったが被害者に誤解を与えてしまった」などという供述内容からは、真に反省している様子は全く窺われません。
     また、神世界グループは平成24年3月22日に解散を宣言して、会社としては清算手続を取ってはいるものの、被告人の公判に動員されて傍聴する信者の態度や被告人の供述内容、同グループ内の各会社が解散をする前の平成24年1月末頃に相次いで商号変更をしていた事実等からすると、同グループは今後も同様の違法活動を継続しようと志向していたことが窺われ、再犯のおそれは極めて大きいと言わざるを得ません。そもそも、組織的詐欺行為を業務内容としてきた会社を解散するのは当然のことであって、これを被告人に有利な事情として斟酌されるべきではありません。
     さらに、神世界グループによる組織的詐欺の被害実態が前記のとおり少なくとも180億円を超えるものであることからすれば、同グループが行った合計約5億円の被害弁償や、今後弁済を約した約1億6600万円は、被害全体の4%にも満たないものであり、実際には多数の被害について被害弁償がなされておらず、組織的詐欺による違法収益はいまだ被告人らの懐に留まっているものと評価するべきです。
     加えて、神世界グループによる組織的詐欺活動は、単に経済的被害をもたらしただけでなく、適切な医療を受ける機会を奪い、幼児2名、成人2名を死亡させ、えんとらんすグループのトップである佐野孝の実子で斉藤亨の養子に重度の後遺障害を残すなど、人の生命、身体への重大な侵害をも伴い、人生そのものを狂わせてしまうものでした。その手口も、藁にもすがりたいような悩みを抱えた被害者に対して宗教性を秘匿して言葉巧みに近づき、その悩みにつけ込み利用していたもので極めて悪質です。これらの事情からすれば、表面的な反省の態度や経済的な被害のごくわずかを被害弁償したという程度でその刑事責任が軽減されるべきではないことは明らかです。
     このような極めて悪質な組織的詐欺事件において、組織的詐欺行為によって得た巨額の資金によって、ごく一部の被害者に対してなされた弁済を過度に評価して、重大な役割を果たした幹部信者である被告人吉田明枝に対し、執行猶予付判決を与えることは、深刻な被害実態への配慮が不十分である点で極めて不当であるだけでなく、統一協会(世界基督教統一神霊協会)をはじめとする同種の霊感商法を行っている団体の違法行為の抑止的効果を薄れさせ、あるいはかえって助長することにつながりかねず、今後の日本社会に対する悪影響をもたらすものである点においても、後世に禍根を残しかねない極めて不当な判決であると言わざるを得ません。
     神世界グループによる組織的詐欺の悪質さ、被害実態及び被告人吉田明枝の果たした役割、責任の重さからすれば、求刑の懲役5年を下回る判決が下されることは到底許されず、実刑判決が下されなければならないと思料します。


以上



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