家族が買い物をしている間、暇だったので本屋で立ち読みをしていたら、たまたま手に取った本に、「詐欺師の手口」というものが載っていた。それによると詐欺師の代表的な手口として、
1、時間で追いつめる
2、欲をくすぐる
3、相手の弱みをつく
4、相手の知識不足を利用する
5、権威を利用する
以上の5点が紹介されていた。
詐欺師の手口はこれ以外にもたくさんあるのだが、この5点が代表的なものだとされていた。これを見て、この5つが秀明の手口とあまりにもぴったり一致することに今さらながら「感心」するとともに、妙に「納得」してしまった。
では、秀明のやり方がどれくらいこれに合致しているかを確認してみよう。
1、時間で追いつめる
秀明会では、「前古未曾有の危機が目睫(目前と同意)に迫っている。この危機を乗り越えるには我が神慈秀明会を信心することである。「ノアの洪水」では神のお告げを信じて方舟(はこぶね)作った8人だけが助かったことからも分かる通り、目睫に迫った危機は神を信じぬ者には空前の変異が及ぶが、神慈秀明会を一生懸命信心する者は救われる。
最後の審判が来たときに、多くの未信者は死に絶えるのだ。阪神大震災ではたくさんの人が亡くなったが、あれは最後の審判の前触れだった。最後の審判が来ても明主様を信心する信者だけは救われるので、神慈秀明会を信じ、借金をしてでも明主様に献金することは結局あなたを救うことになる。
最後の審判までに残された時間はわずかしかない。もう躊躇している時間はないのだ」、という趣旨の内容が秀明会の中心的教本の「聖教書」や、副読本の「神慈秀明会ハンドブック」に書かれており、「秀勉」という定期的な教義勉強会では繰り返し繰り返し、「最後の審判」、「目睫
秀明信者の中には秀明会資格者から、「あんた、今献金しないと、あんたの子供の命取られるで!」と脅迫された者もいた。こうした子供や家族をだしにした脅しは秀明会では日常的に行われていた。
1982年6月15日の地上天国祭(秀明会の祭典)が近づいていた時、「地上天国祭後に世界が滅びる」という噂(うわさ)が流された。これをまともに信じた者が多く、「世界が滅びるから何名入信させろ、桃の実いくら献金しろ、地上天国祭には信者は全員行かせろ・・・」等パニック状態となった。この煽りに乗らない信者を世話人や助教師で取り囲み、「あなた滅びてもいいの! 今やらないと救われないのよ!」と責め立てた。
20西紀末が迫っていた時期には、ノストルダムスの予言をまねて、「1999年はもう直ぐですよ!」と言って煽っていた資格者もいた。
献金や、自己放棄、夏季布教の強要も盛んに行われていたが、夏期布教への参加を渋っている信者に対しては、信者の家まで説得に押し掛けたり、信者を支部に軟禁状態にして説得・強要が行われた。それでも参加に同意しない信者には、「行かなければ大変なことになる!」と、まるで家族の誰かが死ぬかのような脅し文句をたたきつけていた。
2、欲をくすぐる
伝統宗教ではなく、新興宗教に多くの人が走る理由は何か? それは現世御利益の豊富さだろう(ただし、それが本当であればだが)。
家庭の主婦などが新興宗教に走る原因の一つに家族の健康問題がある。自分の子供が難病にかかり現代医学ではどうしようもない等と言われると、残るのは「神頼み」しかないと思い宗教にすがる者も出てくる。神慈秀明会を信心する者は、「浄霊」という手かざしを行うことにより、数々の難病を治す力があるとされており、この浄霊によって病気から家族や信者が救われたとする「おかげ話」が山のように用意されている。
個人事業主で神慈秀明会信者という者もいるが、秀明会を信心する前は事業がうまく行かなかったが秀明会を信心し、献金を捧げたら急に業績が好転したという、「おいしい話」も用意されている。確かに一時期業績が好転した経営者もいるのであるが、この者の企業が後日倒産した時にはそのことは一切信者には知らされなかった。
秀明会を信心していたおかげで災害等から身を守ることができたという話も数え切れない程用意されている。次から次と出てくるこの種の、「おかげ話」を連続して聞かされると人間の判断力は狂ってくるようだ。ナチスドイツのヒトラー総統が、「小さな嘘より大きな嘘の方が人民を騙しやすい」と述べた通り、「おかげ話」も数が少なければ偶然だろうと思われてしまうが、シャワーのように大量の「おかげ話」が信者に降り注がれると信者はその一つ一つの真偽を吟味する暇がなくなってしまい、しまいには「これだけたくさんあるんだから本当かも・・・」と思ってしまう。
一旦そうした思いが信者に芽生えると、自分も神慈秀明会を信心すればその御利益にあずかれるのではないかという「欲」が生じてくる。
世に中には数え切れないほど多くの新興宗教があるが、自分の信じた新興宗教は他とは違い世界一流の「本物の宗教」だとしたら、信者もさぞ安心感が増すことだろう。
その点、神慈秀明会は、「自画自賛」ではあるが世界最高の「超宗教」とされている。
神慈秀明会ハンドブックには、『人類理想の、病貧争絶無の世界、すなわち地上天国を建設できる者は、明主様の絶対力・み力をさずかっている神慈秀明会の信者のみであります。明主様のみ教えは、仏教も、キリスト教もすべての宗教を包容した超宗教、世界的宗教なのです。これでこそ世界に通じ、全人類を救うことができ得る、唯一無二のみ教えです』と説いている。
このように神慈秀明会は、他の宗教とは一線を画した世界最高の宗教だと信者に説いており、秀明信者の安心に対する欲求を満たすように作られている。
秀明会信者は時折、彼らの神様から「ダイヤモンド」や「ゴールド」と言った具体的なプレゼントをもらえる場合がある。このダイヤモンドはこの世のものではない非常にめずらしい石なのだそうで、ある信者(誰とは特定されていない)が専門家に鑑定してもらったところ、「1000万円(場合によっては1億円との説もある)出すから譲って欲しいと言われたが神様からの頂き物なので売らなかった」等のまことしやかな話も流布している(こうした品物は全て10円〜50円程度のおもちゃであることが外部調査で後に判明している)。
普通に考えればダイヤモンド等が突然出現する等ということはあり得ないことは誰でも判ることだが、事前に周到な「すり込み」がなされ、受け入れ態勢ができあがっている秀明信者はいとも簡単にその「奇跡」を信じてしまい、その奇跡によって急速に秀明会への傾倒を深めていく。
難病も治り、事業も成功し、災害にも遭いにくくなり、人間関係も良くなり、最後の審判にもパスでき、死んで「あの世」に行ったときには天国に行け、場合よっては神様からダイヤモンド等が頂ける・・・。信心した者はこうした「良いことずくめ」になるとカルト教団は盛んに宣伝し信者の「自己愛」をくすぐる。
「利他愛」という宣伝文句を前面に出しているが、実際には自分が幸せを得たいという「自己愛」(つまり欲)を満足させる謳
3、相手の弱みをつく
人間誰しも自分の至らない点や弱点の一つや二つは持っているものであり、なんとかそうした点を克服したいと思っているのだが、「思うは安し、行うは難し」でなかなか簡単には改善ができずに内心悩んでいることがある。
カルトはこうした信者の悩みに巧みに取り付き、「あなたの自己改革を妨げているのは、あなた自身の古い自我です。あなたの古い概念があなたにブレーキをかけているのです。あなたがこれまで持ってきた価値観が自己改革を妨害しているので、これを打破するには、あなた自身の価値観の転換を図ることが必要です。明主様(神)のみ教えに従い、真の御浄霊を行うことが人を救うことになり、またそうした活動を通してあなた自身も新しい自分を発見することになり、救われるのです。」等と言葉巧みに持ちかけ、自己改革の願望をカルトの目的とすり替える。
こうして、この信者は、資格者に言われるまま、「自己改革のために」と思って実はカルトにはまっていくことになる。
信者自身は、自己改革のために自らの意志で信仰の道を選択したと思い込むが、実際にはカルトが仕掛けた思想コントロールの罠にはまっているのである。
「私の自己改革は完結しており、どこも非の打ち所がない!」と断言できる人がいたら別だが、あまりそのような人はいないのでは・・・・?。
上記1で紹介した、「あんた、今献金しないと、あんたの子供の命取られるで!」という脅しは、親にとって最も大切な(そこを責められると弱点にもなる)部分である「子供の命」をターゲットにした卑劣な騙しである。
4、相手の知識不足を利用する
人間誰しも、自分の将来について確たる未来を予測できる者はいない。皆、多かれ少なかれ不安を抱えながら生きている。その不安に巧みにつけ込むのが詐欺師のテクニックだ。
霊界を見てきた者は誰もいない。それがあるのかないのか、あるとしたらどのような仕組みになっているか等は誰も知らない。
しかし、神慈秀明会では霊界の仕組みを図解までして解説し、さもそれが現実のことであるかのように思いこませ、恐怖信仰の土台としている。
おかげ話というのも一種の知識不足を利用した詐欺テクニックと言える。「幸運を呼ぶ財布」というのがあったが秀明会のおかげ話はあの幸運を呼ぶ財布のテクニックと共通するところがある。財布を買った者が宣伝通りに幸福になった者ばかりなのかどうかは消費者は調べようがなく、発売元が声高に宣伝する「○○さんも、△△さんも幸せになった」という話しか情報がない。
「浄霊をしたらこんなに効果があった」等というおかげ話は山ほど用意されているが、一般信者はその真偽を調べようもないし、浄霊をしたけれど効果がなかった話は一向に聞こえてこないので、信じやすい体質の者はおかげ話だけで騙される者も出てくる。
浄霊の効果とされるものが、プラシーボ効果によるものではないかといった考察が信者に対して示されることは全くなく、全ては浄霊の効果であると断言され教え込まれる。
上記2の、「欲をくすぐる」で紹介したダイヤモンドの件も知識不足を利用した詐欺である。ダイヤモンドが本物なのかどうかを見分けるには相当の知識と道具が必要であり、素人がそれを見ただけでその真偽が見分けられるものではない。あらかじめ、「ダイヤモンドおかげ話」を聞かせておいてから信者に偽ダイヤを拾わせ、「このダイヤは神様がプレゼントしてくれた非常に珍しいダイヤだ」等と言われると、それをそのまま真に受けて信じている信者も多い。
中にはこうした詐欺テクニックに気づき、秀明の本当の姿を見抜き脱会していく者も多いのだが、とことん騙され深く深く秀明に堕ちて行った者が現在も秀明に取り残されている。
5、権威を利用する
新興宗教団体はこぞって「巨大建築物」を建てたがる。これに関しては、それだけの問題を取り上げた本(五十嵐太郎著、『新宗教と巨大建築』、講談社現代新書)も出版されているほどだ。
器が立派だから中身も立派とは限らないのだが、愚かな人間は外見に騙され、「これだけすごい建物を建てるのだから、この教団はさぞかし・・・」と錯覚する。
中でも秀明の権威好きは有名である。秀明会の教祖殿というバカでかい施設建設やMIHO美術館建設、カリオン塔と呼ばれる塔の建設に当たっては世界の有名設計者や有名建築家に依頼し、MIHO美術館館長には有名人を招聘し、施設オープンのアトラクションには有名タレントを呼び、世界宗教家会議などがあればそこに首を突っ込み、最近では流行の「NPO団体」の肩書きを手に入れ、国連という権威を利用すべくNGO団体を立ち上げるなど、とにかく「ええ格好しい」な団体である。
金の力にものを言わせて手に入れた「権威」を新たな信者獲得や、信者に「秀明はこれだけ世界の有名人と交流があるのだから本物なのだ」と思わせる武器として最大限利用する。
心理学ではこれを、「威光暗示」と呼ぶ。
「ダイヤモンドの奇跡」や「ゴールドの奇瑞」等の「奇跡頻発(本当は奇跡ではないが)」には、この威光暗示を利用する目的も含まれている。彼らが最高神と崇める明主様から「この世のものではない大変高価なダイヤ等が頂けた」という事実(実際にはおもちゃなのだが)はそれを信じた信者にとって非常に大きな権威からの、「畏れ多い頂き物」となる。秀明信者の中には、秀明でダイヤやゴールドを拾ったことがきっかけで秀明の奇跡を信じてしまい、「深く」秀明に堕ちていった者が多い。「たかが偽ダイヤ、されど偽ダイヤ」なのである。
以上、代表的な5つの「詐欺師の手口」は十分秀明には当てはまっており、それだけでも”パーフェクト”だが、これ以外にも秀明の手口は、「親切を装う」、「最初は低いハードル」、「観測結果の選り好み」、「少数の統計」、「前提とつながらない不合理な結論」、「因果関係のこじつけ」、「不安を煽る」、「無価値のものを価値あるように見せかける」、「同業者の悪口」等、詐欺師の世界での常套手段と呼ばれるテクニック満載である。
これだけ怪しげな団体が、これまで警察の手入れを受けることなく、マスコミをにぎわすこともなくやってこれたのは、ある意味で驚異だ。ひょっとすると、それが邪神のおかげなのか・・・・(ん?)。