「手かざし」や「浄霊」については、肯定意見、否定意見が真っ向から対立している。
私は否定派であるが、手かざし等の生まれた背景と、最近の浄霊実験等についてまとめて見た。
統合失調症
「統合失調症」という病名は、少し前までは「精神分裂病」と呼ばれていた。厚生労働省からの通達により2002年8月から、「精神分裂病」は「統合失調症」という名称に変更された。英語では、Schizophreniaという。
この統合失調症には各種の妄想を伴う症状があるが、誇大妄想の一つの症状として、「分裂病性宗教妄想」があり、一般的には「宗教妄想」と略される場合が多い。
「分裂病性宗教妄想」は、妄想や幻覚が長期的な中心症状となり、統合失調症のなかでは比較的多い症状で、他の分裂病よりも遅く20代後半に発症することが多い。比較的人格崩壊に至る例は少ないが、同時に憑衣妄想を伴う場合もある。
「分裂病性宗教妄想」は、妄想・幻覚などのいわゆる陽性症状が前景に立ち、感覚鈍麻・意欲低下などの陰性症状は目立たない。
経過とともに妄想が次第に発展して壮大な体系を形成することがある。末期には妄想と共生して自閉的生活を送るようになる場合もある。妄想型グルイズムや誇大妄想狂グルイズムに発展する場合もあり、こうした場合は「教祖」となって独自の宗教を興す場合もある。
パラノイア(Paranoia)という言葉が比較的一般化しているが、パラノイアと呼ばれる症状も妄想が内的原因から発生し、体系的に発展する病気である。本人が特にこだわっている一点を除けば、その他の思考・行動には異常がみられず、人格の荒廃もきたさないのが特徴である。パラノイアは40歳以上の男性に多い。日本語では偏執病や妄想症と表現される。
なお、上記は統合失調症の内、宗教妄想の特徴を述べたものであり、統合失調症にはこれ以外にも更に多くの症状が存在する。
神人合一
(前略)いつも言う通り私の腹には光の玉がある。これはある最高の神様の魂であるから、私の言動総ては神様自身が、私を自由自在に動かしているのである。つまり神と人との区別がないわけで、これが真の神人合一なのである。
従って、私に在られます神霊は最高の神位であるから、これ以上の神様は世の中にないのであるから、他の神様に頭を下げる意味はないので、何よりも信者が日々顕わしている奇跡がそれを証拠立てている。その奇跡たるやキリストの顕わした奇跡以上の奇跡が常に顕われているので、私の弟子でもキリストに比べてなんら劣るところはないのであるから、この一事だけでも私の神格は想像つくはずである。
(中略)私にある光の力は非常に大きいもので、普通人の何万倍か何百万倍か、あるいは無限大かも分らないほどで、殆ど想像を絶すると言ってもよかろう。何となれば私が今毎日のようにかいている“おひかり”の文字である。『光』『光明』『大光明』の三種であるが、これを懐へ入れるや即座に人の病気を治し得る力を発揮される。この力こそ“おひかり”の文字から放射される光のためである。ところが私はその“おひかり”の文字をかく場合、祈りもせずなんら変わった事はやらない。ただ一枚ずつ頗るスピーディにかく。まず一枚かくのに七秒平均であるから、一時間に五百枚は楽である。その一枚の紙で何万人もの病気を治せるとしたら、今後何万何十万の人間に与えても、効果は同様である。とすれば、私がもっている光の力はほぼ想像がつくであろう。
これほど絶大なる力をもつ私としたら、何ものも分らないはずはない。信者はよく知る通り、如何なる事を聞かれても、私は答えに窮した事はない。また遠方の人で病苦に悩んでいる場合、よく電報などでご守護を頼んで来るが、それだけでおかげを貰う人も沢山ある。それは私の耳にはいるや、一瞬にして光の一部が分裂してその人に繋がる。これによって霊線を通じておかげを頂くのである。このように、光は何万倍にも、どんなに遠くても放射され、連繋されるのだから重宝である。一層分り易く言えば、私から放射されるものは、言わば光の弾丸である。言うまでもなく普通の弾丸と違うところは、彼は人を殺すが、我は人を活かす。彼は有限であるが、我は無限である。
上記の文章を精神科の医師が読んだら、この原文を書いた人物に対しどのような診断を下すであろうか?
上記のような荒唐無稽なことは普通には到底信ずることはできないが、ではこれを書いた人物は嘘をついているのだろうか?
この人物が書いた一連の膨大な文章を見ていると、彼は嘘をついているのではなく、本当にそう思って書いていたのだろう。こうした荒唐無稽なことを確信できるのが、「分裂病性宗教妄想」である所以である。
プラシーボ効果
私は基本的に「手かざし」や「浄霊」に、神の力による治療効果などはないと思っている。それを、上記教祖の言のごとく、「絶大な力がある」と断定するのは「妄想」である。
しかし、手かざし等に治療効果があったとされる例も多数報告されている。これは、手かざし等を受けた人が自己暗示によってプラシーボ効果が発生し、自律神経が刺激され、脳からエンドルフィンやドーパミン等が分泌されることによる自然治癒力の向上によるものだという説が現在では有力になっている。
プラシーボ効果についての知識がなかった当時に、手かざしによって何らかの治療効果が現れた場合、「手かざしにはすごいパワーがある」と思ってしまったのは当時としてはやむを得ないことであったのかも知れない。
しかし、プラシーボ効果について解明が進んだ現代にあっても、こうした科学的な説明は、手かざしや浄霊を信じている人には受け入れてもらえないようだ。神を信ずる人が、手かざしや浄霊を「神の力」と考えるのは、その人自身がそう考えることで「心の整理をつけている」のでそれ以外の考え方を受け入れない場合が多い。「信ずる」ということは、思考を停止することであり、「言われたままを信ずる」ことが信仰の証であると思いこんでいる信者には、それ以外の考え方を受け入れる余地はないのであろう。
浄霊実験
ところが最近になって、画期的とも言える研究が日本でも行われるようになってきた。
浄霊を信じている側の人が、科学の目で浄霊を研究しようとする動きである。MOA(Mokichi Okada Association)という団体が運営する(財)MOA健康科学センターが、浄霊が人体に及ぼす影響を科学の目で捉えようと各種実験を行い、その結果を公表している。
私は、さっそくMOAからこの研究結果報告書を取り寄せ、分析をしてみた。
私が取り寄せた報告書は下記の三種類である。
@生体の流体的秩序構造のポリグラフ的研究(岡田式浄化療法の二重盲検法による実験)
A生体エネルギー(岡田式浄化療法)の二重盲多層べースライン実験(2)
B睡眠中の乳幼児への岡田式浄化療法負荷実験
@は平成4年、Aは平成5年、Bは平成7年の研究報告であるが、実験実施者及び報告者はいずれも小林啓介氏、板垣美子氏の2名となっている。両氏の所属先は「心身相関科学研究所」となっているが、この組織についての解説はなく不明である。
この研究報告書の具体的内容は、著作権の関係でここで紹介することはできないので、関心のある方は、下記の(財)MOA健康科学センターへ資料請求を行い、資料を見せて頂くといいだろう。ただし、資料はかなりのページ数を有し(各A4用紙30枚程度)、その解読には少々骨が折れることは覚悟しておいた方がいい。
http://www.mhs.or.jp/(財)MOA健康科学センター
@及びAの研究報告書をつぶさに検討した結果、私が達した結論は次のようなものである。下記文章(青色文字)は、私が(財)MOA健康科学センターに礼状を兼ねて送ったメールの一部である。
先日は、早速に貴重な資料『生体エネルギー(岡田式浄化療法)の二重盲多層べースライン実験(2)』等をお送り頂き、ありがとうございます。
私は、医療関係者でも、どこかの教団関係者でもなく、全くの個人的興味で「浄霊」の科学的解明に関心を持っているものです。
前回お送り頂いた資料は大変興味深く拝見致しました。
貴重な資料を拝見して私が感じたのは、プラシーボを排除して浄霊の効果を科学的に突き止めようとする研究者の方の真摯な態度に感心致しました。こうした研究を地道に続けておられる貴財団のまじめな姿勢にも大変好感を感じました。
一般的にはこうした資料を部外者に公開することをためらう機関が多い中で、貴財団は何の躊躇もなく私のような部外者に貴重な資料を公開して頂き、こうしたオープンな姿勢にも大変好感を持ちました。
ただ、次に上げるような改善点もまだあるのではないかと思い、せっかく貴重な資料を見せて頂いたのに、注文をつけさせて頂くこととなり申し訳ないのですが、次のような点も更に検討して頂くと、より説得力のあるものとなるのではないかと思いますので、若干の意見を述べさせて頂きます。
1、報告者の方も述べておられる通り、浄霊による効果かと思われる部分がある反面、生体の「ゆらぎ」による数値変動かも知れない要素もあり、サンプル数を増やして継続した実験が必要と感じた。
2、また上記検査は「二重盲検法」にて実施されたとされているが、本来の二重盲検法とは手法が違うように思う。投薬などと違い、浄霊という人間が行う行為に対する治療効果を調べる際、浄霊の送り手は「盲」になり得ず、浄霊の受け手と実験観察者を「盲」にすることで二重盲検法とされているが、こうした検査手法は単盲検査のアレンジであって二重盲検法とは違うと思う。
「二重盲検法」とは、各被験者に割り付けられた治療を、被験者及び治験実施医師だけでなく、治験依頼者、被験者の治療や臨床評価に関係する治験実施医師のスタッフも知らないことを意味します。
3、この浄霊実験では、実験実施者が実験結果を評価しているように見受けられるが、「浄霊には効果あり」という立場の実験者だけが実験に立ち会い、自分がおこなった実験結果について自分で評価をしていたのでは説得力に欠けるものとなってしまう。
こうした実験を行う場合は、浄霊に否定的な立場の人にも立ち会いを求め、実験方法や実験結果に対する評価が偏ったものとならないような配慮も必要であると思う。
特に実験実施者が自分の実験結果の評価を行うと、どうしても「思いこみ」が混入してしまうので評価者は別人であることが大切だ。
4、実験によって浄霊に効果があるという結論に至るには、再現性の確認が欠かせない。今回の実験では実験実施者自らが、「変化の様相は受け手が同一の場合でも実験毎に異なる」と言っているように再現性に欠ける部分が多い。一般的にはこのように実験結果が毎回異なった結果として現れる場合は「その実験と結果との間に因果関係はない」と見るのが妥当であるが、この報告書では送り手、受け手双方の「生体としてのゆらぎ」によりそうした変化もあり得るのだという強引な結論に導いているが、これは少々無理があるのではないか。
浄霊の効果を実験により論証しようとするならば、再現性の確保は絶対条件と言ってよく、それが担保されない段階で「浄霊の効果が確認できた」と述べることは早計ではないだろうか。
5、この実験は気功の実験ではなく、「岡田式浄化療法」の実験であるので、実験に当たっては「お光り」をつけて浄霊をしていると思われる。では「お光り」をつけずに同様の実験をした場合はどのように結果が異なるのかも興味深い点である。お光りの有無によって実験結果に差異が確認できれば浄霊が気功とは違うことも立証できるであろう。
以上、勝手な注文を付けさせて頂きましたが、ある意味では私のような部外者の意見を取り入れて頂くことにより、実験がより一層幅広い、説得力のあるものとなっていくのではないかと思いますので、よろしくお願い致します。
乳幼児への浄霊実験
こうして@及びAの研究報告書を検討した後、Bの「睡眠中の乳幼児への岡田式浄化療法負荷実験」があることを知り、(財)MOA健康科学センターに新たにBの資料送付依頼を行った。
同財団のホームページには、Bの資料に関する概要紹介が次のように書かれている。
意識下の生体情報伝達現象の存在を言語誘導や暗示などの効果の混入を排除して、明確にすることを目的に睡眠中の乳幼児への負荷実験を行なった。生後3カ月から1歳9カ月の乳幼児計6名に睡眠状態で、熟練者によって非接触的に手かざし治療を加え、血流、心拍周期、呼吸周期、マイクロバイブレーションなどに現れる反応を調べた。
現在までにブランク実験、およびダミ−負荷実験を加えて各受け手について最低3回、計23回の実験を終えた。乳幼児の睡眠状態の変化に注意を払って解析を行い、手かざしの熟練者だけではなく、経験を持たない者による手かざし負荷にも生理的な反応が現れることが判った。
言語の発達していない乳幼児の、意識のない睡眠状態では誘導や暗示の効果が混入する可能性はない。本実験の結果は意識下の生体情報伝達がヒトに共通した潜在的能力の一つであることを証拠づけるものと考える。
このBの実験では、手かざしの熟練者だけでなく、一般の人が手かざしを行った場合との比較も行っているという。その結果、「手かざしの熟練者だけではなく、経験を持たない者による手かざし負荷にも生理的な反応が現れることが判った」と結論づけている。
こんなに大胆な発言をしてもこの人たちは大丈夫なのかと私は心配になってしまった。神慈秀明会でこんな発言をしたら、大変なことになるであろう。
これを認めることは、彼らが教祖と仰いでいる岡田茂吉の腹中に存在すると言われている「光の玉」から目に見えない光線がお光りを通して放射され、その放射を受けた人の病気が治るとされている根本的な教えを否定することになる。
MOAは団体名に教祖の名前をそのまま使用している団体であり、岡田茂吉に対する信仰心は、ことのほか強いと思われるのに、このような大胆な発言が許されることは、ある意味で驚きであった。こうした大胆な報告をした研究者の度胸もさることながら、それをそのまま報告文書へ掲載することを許し、それを一般に公開した財団も「太っ腹」というか、たいしたものである。
午前中にBの文書を請求したところ、その日の夜には資料がPDFファイルで送られてきた。印刷してみると、A4用紙で19枚分の資料であった。
その内容を読んでいくと、いかに幼児を対象にした実験が大変であったがよく分かった。資料の前半は実験に先立ち、幼児の生体としての標準的状態を探るための検査に多くの時間を費やしたことが詳しく書かれている。生後3カ月から1才9カ月までの幼児6名を対象にして検査を行っているが、幼児は睡眠中であっても大人に比べてかなり活発に動いたり、呼吸も浅い呼吸をしばらく繰り返した後、大きく息をつくときがあり、寝返りや大息の度に波形が大きく変動するため、浄霊の検査をしようにも、数値データの変化がどの原因に基づく数値変化であるかを見極めるのが非常に大変であることが分かる。検査中に睡眠から覚めてしまったり、中には排尿をしたため、数値が大きく変化した場合などもあり、幼児を被験者にした検査は自己暗示の影響を排除できるメリットがある反面、検査時の状態を平静に保つのが非常に難しいことがひしひしと伝わってきた。
実験結果を表すグラフには、その時の幼児の特徴的な状態も併記されており、大きく波形が変化した場所は寝返りやフーッと大きく息をしたところであることがわかるようになっている。
上記のような浄霊以外の原因での波形変化に惑わされないように注意しながら複雑に波打つグラフの波形を観察して、浄霊の効果と思われる部分を探し出して行くのであるが、一目見て「これが浄霊による変化を表している」と断定できるほど明確な波形変化は見あたらない。
この実験担当者自らが、「心拍周期や呼吸周期は実験によって変化のパターンが一定ではない」と言っていることからも分かるように、実験の度に変化の様相が違うため、浄霊の効果であると断定するのは非常に難しい。確かに、一部のデータでは浄霊の開始・終了と波形変化がシンクロしているように見える部分もあるが、これが生体の「ゆらぎ」によるものなのか浄霊によるものなのかの判定は難しい。
もしこうしたかすかな波形変化が浄霊による変化であったとしても、その変化は生体の「ゆらぎ」による変動と判別が難しいほどわずかな変化であり、浄霊によって痛みが取れたり、疾患が目に見えて回復したり、癌細胞が消滅するといった治療効果が発揮されるような強力なパワーにはほど遠い。
おわりに
しかし、こうした研究を続けることにより、新たな発見があるかも知れず、研究者のひたむきな努力は十分評価に値するものがあると思われるので、今後の更なる研究に期待したい。この実験を担当した2名の方は、報告を次のように締めくくっている。
浄霊士による負荷だけでなく、未経験者による負荷に対しても明瞭な反応が検出された。この結果は、このまだ正体のわからない生体間の非接触的な情報伝達がヒトに共通した能力であることを強く示唆している。 |