神世界事件の和解成立についての声明
平成24年1月31日
関係各位
記者会見をする被害対策弁護団(TBSニュースより)
(2012年1月31日、司法記者クラブ)
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神世界被害対策弁護団団長 弁護士・紀藤正樹
お問い合わせ先
東京都千代田区麹町4丁目7番地
麹町パークサイドビル3階
リンク総合法律事務所
神世界被害対策弁護団
事務局長 弁護士 荻上守生
TEL 03-3515-6681
FAX 03-3515-6682
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1 神世界被害対策弁護団は、平成19年12月20日の、神奈川県警による有限会社神世界及び同関連団体(以下、「神世界」とします。)に対する家宅捜索をきっかけに、神世界による霊感商法の被害者救済を目的として、全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、宗教法人世界基督教統一神霊協会(統一協会)が組織的に行う霊感商法問題に取り組んで来た弁護士を中心として結成されました。
弁護団結成後、神世界から多額の金銭を騙し取られたという多くの被害者の方々からの相談が寄せられました。
多くの被害者の方々や神世界の元スタッフ、神霊能力があるとされていた神世界の元先生らからの情報提供によれば、神世界は、「癒し」、あるいは、「ヒーリング」という耳当たりのいい宣伝文句により一般市民を勧誘し、真実の目的が神世界が組織的に行っている資金獲得活動を目的としているにもかかわらず、殊更にこれを秘し、被害者の抱える悩みや問題点を言葉巧みに聞き出し、その原因が、体に貯まっている毒素や先祖の因縁であって、御霊光・御祈願によって病気がよくなる、などと虚偽事実を断定的に申し述べて被害者らの不安感・恐怖感を煽り、悩みや問題点を解決するためには御祈願や御礼など様々な名目で金銭を支払うしかないと畏怖・誤信させ、多額の金銭を支払わせてきた団体であることが分かりました。
2 弁護団としては、神世界による「神書」「ライセンス」「お肉筆」等の物品販売や、「ヒーリング」「御霊光」「御祈願」を名目とする多額の金銭収奪行為は、いわゆる典型的な霊感商法であり、詐欺ないし組織的詐欺にあたるものと判断し、被害者の方々の損害賠償請求及び神奈川県警及び横浜地方検察庁に、詐欺ないし組織的詐欺での告訴を行ってきました。
被害者の方々の損害賠償請求につきましては、平成20年中に、被害者87名、被害総額2億4603万6272円の損害賠償請求の通知書を、順次4回送付しました。
当初、神世界は、和解の意向を示していたものの、代理人に笠原静夫弁護士が就任すると、一転して賠償責任を否認したため、平成21年5月25日に第一次提訴(原告17名、訴額1億7313万463円)、平成21年12月25日に第二次提訴(原告24名、訴額7426万5792円)、平成22年12月17日に第三次提訴(原告1名、訴額1419万195円)、平成23年9月14日に第四次提訴(原告6名、訴額2097万6248円)を行いました。原告は、合計48名、請求金額は2億8256万2698円です。
神世界は、民事訴訟において不法行為責任を全面的に争うだけでなく、その機関誌である神世界新聞で、弁護団を誹謗中傷するなどしておりましたが、平成23年9月12日、斉藤亨が組織犯罪処罰法の組織的詐欺容疑で逮捕され、その後起訴されたことをきっかけに、刑事事件で、神世界幹部らが全面否認していた組織的詐欺について認めるに至り、民事訴訟においても、平成23年11月9日の口頭弁論期日において、和解を申し入れてきました。
神世界が申し入れた和解の内容は、民事訴訟の原告については、支払わされた金額、慰謝料、弁護士費用、遅延損害金のほぼ全額である合計3億5048万1718円を支払う内容であり、裁判外で請求をしている65名についても請求額の合計1億5150万5728円を支払う内容であり、請求を認諾するに等しい内容となりましたので、弁護団としても、和解を受諾することとし、昨日和解が成立しました。これをもって、当弁護団にご依頼いただいた被害者の被害回復については、全面的に解決する目途が立ちました。平成19年以来、神世界の問題を、社会問題として取り上げ続けていただいたマスコミ各位、粘り強く捜査を継続し、組織的詐欺による立件を実現した神奈川県警、横浜地検に対しては、重ねて感謝と敬意を表します。
3 もっとも、今回の和解により回復された被害は約5億円にすぎず、平成13年から平成19年までの間の神世界の売上げが、少なくとも189億円もあることからすれば、被害回復は、微々たるものに過ぎません。
また、刑事事件においては、神世界において、適切な機会に医療を受けられなかったことなどにより子供を含む数人の死者が出ていたことも明らかになりました。
今般、神世界が損害賠償責任を全面的に認めたため、和解となりましたが、刑事事件の被告人質問における杉本明枝、淺原史利は、未だに神霊能力があった、御霊光による奇跡はあるなどと供述しており、心からの反省の態度を示しているとは思われません。
したがって、当弁護団としては、今後も、神世界の活動の動向については注視していく所存であり、被害者の救済に注力する所存です。
以上
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