客をスタッフにする裏技
(最終更新日時:2011年9月8日)

 神世界の”手口”については、ほぼ解明しているつもりの私だったが、ここにきて新たな手口を知ることになり、改めて神世界の狡猾さを思い知った。
 神世界が活発に活動していた頃、地方のサロンに客として通っていたAさんは、「新たなサロンを作るので手を貸してほしい」と言われ、その新しいサロンを開設する手伝いに数回だけ出向いた。手伝いといってもたいしたことをする訳ではなく、お茶くみ程度の軽作業を手伝っただけだった。他の客もそうした依頼を受け、同じように手伝いに行っており、手伝いに行くのはそれほど特別のことではなかった。
 ところが、そうしたことがあった数日後、いつものサロンに出向いたAさんは、サロンのK先生から別室へ呼び出された。何事かと思って別室に行くと、K先生から茶封筒に入った1万円を渡された。Aさんは、そのような金を受け取るようなことは何もしていないので、これは何かの間違いだと思い、その金を受け取るのを断った。ところがK先生は、「会主様が、Aさんはよくやってくれているので、これを渡すように言われた。会主様のお言葉ですから受け取ってもらわないと私が困るのよ」と言って、受け取りを断るAさんに1万円入りの茶封筒を強引に押しつけた。
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 仕方なく茶封筒を受け取り、自宅に帰ったAさんは、封筒の中を改めて確認して驚いた。なんとそこには1万円だけでなく、「給料明細書」(右記)が入っていたのだ。つまりこの1万円は単なる手伝いの”お礼”ではなく、(有)神世界関連サロンから、「給与」としてAさんに支払われたものだったのだ。Aさんは客としてサロンに通っていただけであり、神世界との間で雇用契約を結ぶような話をしたことなど、ただの一度もなかった。
 この「給与」は、次の月にも同じように支払われた。Aさんは気味が悪くなり、何とかして二度目の受け取りは拒否しようと頑張ったが、K先生は「会主様のお考えなのだから」の一点張りで、受け取りを拒否するAさんに無理矢理封筒を押しつけると、K先生はそのまま部屋を出て行ってしまった。

 Aさんはこの後、サロンに通うのを止めた。サロンを止めてから、同じ時期にサロンに通っていて、その後通うのを止めた人達に聞いてみたところ、他の人達も同じように「給与」を受け取らされていたことを知った。
 Aさんだけでなく、他にもAさんと同じように「給料」を押し付けられていた客がいたということは、こうした手口でのスタッフ増強(兵隊増強)が、日常的に神世界では行われていたことが推測できる。サロンに通う客の中から、”これは”と思われる客にターゲットを絞り、その者にサロンの手伝いをさせた上で強引に給料を支払い、「給料を支払った」という既成事実を相手に押しつけることで、客をスタッフとして”刈り取って”いたのだろう。
 Aさんも、もう少しで”刈り取られる”ところだったが、Aさんは賢明にもサロンを離れることができ、危うく難を逃れた。しかし、客の中にはこうした神世界の”毒牙”にかかり、”刈り取られた”者も少なからずいたのだろう。

 神世界のような”新興組織”が、組織を拡大するためには、客とスタッフの数を如何にして増やすかが大きなポイントになる。神世界が急速に客の数を増やすことができたのは、「あなたが他の人を連れてくれば、その行為は神様にとってプラスとなり、あなたにとってもそれはプラスの効果として返ってくる」と繰り返し客に吹き込んできたことが上げられる。客が更に次の新しい客を連れてくる、つまりはマルチ商法と変わらない仕組みだ。自分が客を連れてくることが自分にとってプラスに作用すると信じた客は、友人や家族、場合によっては、デパートの買い物客などを狙って言葉巧みにサロンに誘い込む、”キャッチ”や、”火の玉隊”と呼ばれる手法も使って、客が客を増やしていった。神世界による霊感商法被害が急速に全国に広まった背景には、こうした巧みな戦略があった。
 急速に増えていく客をさばくには、スタッフも急速に増員せねばならず、Aさんに「給料」を押しつけてまでスタッフにしようとしたのは、こうした”神世界拡大政策”の一環だったのだろう。



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