神世界関係者逮捕

15、教祖ら4名に逮捕状
 2011年8月17日(水)、神奈川県警神世界事件捜査本部は、(有)神世界幹部の教祖・斉藤亨(53)、代表取締役・日原易子(70)、取締役・斉藤葉子(44)、取締役・宮入参希江(49)の4名に対し、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕状を取った。
 しかし、今回逮捕状が出た4名は、逮捕状が出てから数日経っても逮捕されておらず、マスコミの報道によると4名の所在が特定できていないようである。これまで多くの神世界関係者が逮捕されており、遠からず自分たちも逮捕されるであろうことはこの4名も予測できていたであろうに、この期に及んで身を隠し、逮捕を免れようとする姿勢は、いみじくも神世界という団体がどのような団体であるかを物語っている。なにもやましいところがないのであれば逃げ隠れする必要はなく、堂々と顔を上げて逮捕され、裁判によって決着をつけたらいいだけである。いい歳をしてコソコソと逃げ回っているのは、みじめ以外のなにものでもない。
 神世界に雇われている弁護士は、逮捕状が出ているにも係わらず出頭しない4名の被疑者に対して適切なアドバイスはしているのか。企業に雇われた弁護士と言えども、法律を守る義務まで忘れた訳ではあるまい。
 未だ神世界に残っている客や神世界関係者は、逮捕状が出ているにも係わらず、いさぎよく出頭しない神世界幹部4名に対して、何を感ずるのか。あなたたちはこのように怪しげな者を教祖として崇めてきたことを恥ずかしいとは思わないのか。

●逮捕状が出されている4名の概要
 登記簿上では、(有)神世界の代表取締役は日原易子(70)となっているが、実質的にこの組織を取り仕切っているのは教祖・斉藤亨である。斉藤亨の父親は、神世界の本部近くで「観音会」という宗教団体の代表をしている。彼らは以前、(宗)世界救世教の信者であったが、その後独立し、山梨県甲斐市に「千手観音教会」という組織を立ち上げた。2002年になって斉藤亨は父親から独立し、(有)神世界を立ち上げた。それとほぼ同時に斉藤亨は山梨から東京に進出し、東京で組織を拡大した。その後、神世界は全国に組織を拡大して行き、神世界による霊感商法被害は全国各地に拡がった。神世界の教典である「神書」を書いたのもこの斉藤亨いうことになっているが、真相は不明だ。

 代表取締役の日原易子(70)は、神世界の中では陽龍(ひりょう)と呼ばれており、この団体の象徴的な存在として扱われていた。日原易子は、”陽神祭(ようしんさい)”と呼ばれる祭典を行うなど具体的活動も行っており、代表取締役という肩書きからしても一連の事件の責任を厳しく問われるべき存在だ。日原易子が神世界の代表取締役になったのは、「教祖を守るため」であると自らかって語っており、自分から進んで神世界の活動に参画していた。日原とともに今回逮捕状が出された教祖・斉藤亨の妻、斉藤葉子は日原易子の実の娘だ。つまり、教祖・斉藤亨の義母が(有)神世界の代表取締役をしている訳だ。斉藤葉子は教祖・斉藤亨と結婚する前は、先に逮捕された佐野孝(42)と婚姻関係にあったが、佐野と離婚した後、教祖・斉藤亨と結婚した。

 取締役・宮入参希江は、神世界関連会社の一つである、(有)みろくの代表者、M入E実(会主)の夫、M入H彰の実姉である。M入E実の実姉が(有)びびっととうきょう代表のW田M和であり、宮入参希江とM入E実、W田M和らは親族関係に当たる。宮入参希江の夫も神世界に係わっていたが、平成21年5月13日に38才の若さで死亡している。死因は癌だった。神世界幹部の親族等には他にも病気で医者にかかっている者が複数名あり、御霊光に最も近い位置にいながら、それら家族の病気は御霊光では全く治らず、医者にかかっている姿には、御霊光の本当の姿がよく表れている。

 このように、今回逮捕状が出た4名は互いに親族関係にある者同士であり、神世界幹部の主立った者は血縁関係によって結ばれている者が多い。先に逮捕され、処分保留で釈放された佐野りら(27)は、神世界関連会社の一つである(有)えんとらんすわーるどヒルズ代表・K山E子の娘である。

●組織犯罪処罰法を適用
 マスコミの報道によると、今回逮捕状が出ている4名は、これまでに逮捕された神世界関係者の詐欺容疑とは違い、”組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑”で逮捕状が出されているようだ。これは私も以前から主張していたことであり、神世界による犯罪は個人レベルの犯罪というより組織的に行われてきた要素が強く、神世界事件を組織犯罪処罰法違反で捜査することは誠に的を射たものである。
 組織犯罪処罰法は、正式名称を”組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律”という。この法律は、巧妙化する組織的な犯罪行為に対して加重処罰規定を盛り込むことや、犯罪グループの解体をするために資金源に対して、没収及び追徴などを行うことができる法律だ。この法律を適用して神世界による犯罪を徹底的に解明し、二度とこの組織が息を吹き返すことのないように壊滅させることは非常に重要だ。
 現時点では(有)びびっととうきょう、(有)みろく、(有)えんとらんすわーるどヒルズの関係者はまだ逮捕されていないが、これらの者を逮捕せずに残しておくことは、神世界に生き延びる道を与えるだけにしかならない。必ずこれらの者も逮捕し、神世界を根絶やしにすることが、この種犯罪の再発防止には欠かせない要件だ。決して”残党”を残してはならない。

 一般的な詐欺罪での罰則は「10年以下の懲役」しか課すことができないが、組織犯罪処罰法の適用を受けると、懲役1年以上15年までとすることができる。そして、犯罪組織が不法な方法で集めた不法収益を没収及び追徴することができる。また犯罪が行われていることを知りながら意図的に隠そうとした者も処罰することができる。資金の流れを明確にするために、金融機関に対して「疑わしい取引」に関する資料の届出義務を課すこともできる。

●逃亡と刑事訴訟法 (2011.8.26 update)
 逮捕状を取ったことが報道された8/17から10日後の8/26になっても、教祖ら4名はまだ逮捕されていない。逃亡中の4名は、逃げ通せば時効になって逮捕されなくなると思っているのかもしれないが、それは違う。
 2007年4月に、前橋地検が健康食品販売会社「日本ヘルシー産業」(破産)の元社長友松克夫容疑者(59)を法人税法違反(脱税)の罪で前橋地裁に起訴した事案があった。この元社長は逮捕状が出た後、逃亡を続けたため、前橋地検は1999年以降、所在不明のまま42回起訴を繰り返していた。これは時効を停止させるために検察が取った処置だった。
 刑事訴訟法では、起訴によって時効の進行は停止するが、起訴状の未送達状態が2カ月続くと公訴が棄却される。このため、前橋地検は1999年以降、所在不明のまま42回起訴を繰り返し、時効を停止させながら容疑者の行方を追っていた。友松容疑者はこの間、群馬、長野、埼玉各県内に潜伏していたが、2006年3月27日、高崎市内で逮捕された。
 今回逮捕状が出ている教祖ら4名の被疑者に対しても同様の処置が可能であり、被疑者が特定されている事件では、どんなに逃げ回っても時効によって逮捕を免れることはできない。

 また上記とは別に、共犯者の起訴から結審まで、公訴時効を停止する(刑事訴訟法第254条2項)という法律もあり、佐野らを共犯者とすれば教祖ら4名の時効も佐野らの裁判が全て結審するまで停止させることができる。
組織犯罪処罰法違反容疑という、通常の詐欺容疑より悪質な犯罪で逃げている者が逃げおおせる余地はない。

●逃亡は損か得か (2011.8.29 update)
 逮捕状が出たことを知って、(有)神世界教祖・斉藤亨ら4名はいち早く逃亡した。警察は必死に彼らの行方を捜索中だが、まだ逮捕に至っていない。彼らを取り逃がしたことは誠に残念であり、できるだけ早期に逮捕してほしいが、このまま彼らが長期間にわたって逃亡を続けた場合、果たしてそれは彼らにとって「有益」なのだろうか。

 長期間にわたって逃亡していた被疑者が逮捕された際、「捕まってほっとした」と述懐する場合がよくある。捕まった者が思わずそうした述懐をしてしまうのは、自分に逮捕状が出されているのを知っていながら長期間逃げ回るのは、被疑者にとって大変辛い日々であるからだ。
 氏名や身分を偽り、カツラをつけたり眼鏡をかけて変装し、人の目線を避けるためにできるだけ外出を控え、四六時中追ってくる警察の影に怯え、文字通り”日陰者”の生活が長期間続くことになる。やむを得ず外出する際は、街角の防犯カメラを意識せねばならない。今はコンビニでも、ファミレスでも、クスリ屋でも、どこの店に入っても至る所に防犯カメラが設置されており、できるだけそれらの防犯カメラに写らないように神経を配らねばならない。
 残してきた子供達の様子を確かめたくなっても、電話をかけることもできない。公衆電話から電話をかけても警察はたちまち居所を割り出してしまう。自分の携帯電話はもちろん使えない。他人の携帯電話を借りて子供に電話やメールをしようにも、携帯番号やメアドは自分の携帯の電源を入れねば見ることができない。ほんの一瞬でも自分の携帯の電源を入れれば居所が割り出されてしまうことは、酒井法子が逃亡中に一瞬携帯の電源を入れただけで居所が判明したことからも明らかだ。警察は本人らだけでなく、被疑者に関係のある者の携帯についても通信記録をこっそり見ているかもしれないので、支援者の携帯であってもうかつに使うことはできない。かといって今からプリペイド式携帯電話を買いに行くことも危険でできない。
 クレジットカードを使えばたちまちに居所を突き止められてしまうのでカードは使えず、支払いは全て現金払いしかできない。所持金が少なくなってきても、ATMを利用すればたちまち居所が知られてしまうので銀行ATMで金を引き出すこともできない。郵便局にも警察の手は回っているだろうから使えない。
 ネットの情報を確認したいが、インターネットカフェを利用する際は身分証明書の提示を求められるので免許証を出すこともできない。レンタカーを借りようにも免許証を提示できないので借りられない。運転免許証の更新時期が来ても免許センターに行けばたちまち捕まってしまうので行けない。
 万一病気になっても医者にかかることもできない。長期間の逃亡生活による精神的ストレスは胃潰瘍の原因にもなる。父親と同じように胃潰瘍になり、病状が悪化しても医者に行くことはできない。虫歯が痛み出しても七転八倒するしかない。交通事故に遭っても素性がばれるので、走ってくる自転車に対しても気を配り、こちらから避けるように気をつけねばならない。
 かくまってくれている者がいる場合でも、あまり長期間になると、かくまうのが負担になり、その者が犯人蔵匿で逮捕されることを恐れ、こっそり警察に通報することになるかもしれない。組織犯罪処罰法違反に問われていることが報道されたので、犯罪収益は全て没収される可能性が高く、支援者や弁護士に払う金も早期に底をつく可能性が高い。
 逃げ続けることによって、そのうち罪が消えるのならともかく、すでに被疑者として特定されている以上は時効によって容疑が消えることはない。検察が起訴を繰り返せば何年間経っても時効にはならない。

 一時の損得勘定から、逃亡という卑劣な手段に走ってはみたものの、冷静に考えてみると、長期間にわたって上記のように多くの制約を受けながら逃亡生活を続けることに何の意味があるのだろう。人が人として生きていくためには、「自由」がなければ本当の意味で生きているとは言えない。逃亡者に一切の自由はない。逃亡者としての生活は、人として当然あるべき社会との関わりを一切断った生活を続けねばならない。常に逮捕されるかもしれないと怯えながら、ビクビクして暮らすことは、それは本当の意味で生きてるとは到底言えない。

 しかし、愚かな教祖らは、目先の逮捕を免れることだけに意識が集中してしまい、長期間の逃亡生活がどれだけつらいものであるかに思い至ることなく、今後も逃げ続けるのだろう。彼らの心が落ち着くことはついぞなく、つねに何かに怯えながら社会の片隅で逃亡者として薄氷を踏むような生活を今でも、そしてこれからも教祖らは続けていくのだろう。
 神世界被害者にとって、教祖らが逃亡したことは誠に残念であり、できるだけ早期に逮捕されることが望ましいと思っているのは当然だ。しかし、彼らがこの先、更に逃げ続けたとしても、それは逃亡者としての辛い状態が続くだけであり、逃亡生活の辛さを考えれば、教祖らに向かって、”ざまあみろ”と言って冷笑してやりたい気持ちになることもできる。逃亡することで身柄拘束から逃れることはできるが、教祖らの生活はこれまでの贅沢な暮らしとは全く違う。不自由で、警察に捕まることに怯えながら、コソコソと逃げ回っている姿は、見方を変えれば、すでに一種の”刑罰”を受けているようなものだ。大規模な霊感商法詐欺を働いた代償として、刑務所に入る前から逃亡者としてまず十分苦しんでもらい逮捕されてからは正式に犯罪者として刑務所の中で罪を償ってもらうのも一興かもしれない。
 教祖ら4名がそうした二重苦を味わねばならないのは、犯した罪の大きさから考えて、まことに釣り合いがとれたものであり、”天秤の法則”にかなっているのかもしれない。


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