(神世界新聞第1号と第2号の記事は同時に作成したものですが、携帯端末用に前半と後半の二つに分けました。ここからが後半の記事となります)
5、なぜこの時期に新聞発行?
多くの宗教団体が独自の新聞を発行している。世界救世教は「光明新聞」、神慈秀明会は「秀明」、創価学会は「聖教新聞」、浄土真宗本願寺派は「宗報」、浄土真宗大谷派は「同朋(dobo)」など各団体は信者の教宣活動を目的にした新聞を発行しており発行部数は数万部に及ぶものが多い。
神世界新聞が神世界の最盛期に発行されたのであれば発行の目的はある程度理解できる。組織の勢いが上向きの時はつい調子に乗って、「うちの教団もかなり大きくなってきた。新聞でも出して更に拡大を図ろう」等と欲を出すことはあり得る。この組織の名称が「千手観音教会」から「あっとらんどFuji」に変わった2001年当時に簡単な会報を月刊で発行したり、びびっととうきょうが予定表程度の会報を発行していた時期もあるが、こうした会報を発行していた時期はこの団体が”上昇気流に乗っていた”からこそ会報発行も可能であった。びびっとの予定表を見ると「のど自慢大会」のお知らせまで載っており、浮かれぶりが垣間見える。今では考えられないことだが当時は神世界関係のHPもいくつか作られていた(今は全て閉鎖されている)。
現在(2009年10月)神世界が経営していた大半のサロンは閉店に追い込まれ、最盛期と比較すれば客は激減している。神世界がこのように凋落の道をたどったのは”自業自得”であるが、凋落に至った原因を何ら改善することなしに新聞を発行したところで何の役にも立たないことは明らかだ。これまで一切の説明責任を果たさず沈黙を続けてきた”怪しげな団体・神世界”が発行した新聞など誰にも相手にされないことは分かりきったことだ。神世界関係者であっても神世界の現状を正しく認識していれば新聞を発行しただけで崩壊しかけている神世界を立て直すことなど到底できないことは分かるはずだ(神世界に酔い、盲目状態となっていれば別だが)。
普通に考えると神世界がこの時期に新聞発行をした意味がなんとも理解しがたいのだが、新聞発行後の神世界側の動きを見てみると徐々に新聞発行の目的が見えてきた。
6、新聞発行の真の目的
すでにこの神世界新聞を見せられて神世界への勧誘を受けたという報告が数件寄せられている。
●証言1
葛飾区在住のAさんは、前の会社で一緒に仕事をしていたBと偶然出会って話をしていた。そのうちBはカバンの中から神世界新聞を取り出し、「とうとう新聞を出すことにもなったから話すんだけど・・・」と言ってAに神世界の説明を始めた。話を聞いているうちにAさんはBが全ての出来事を「神様のおかげ」と捉えていることに異様な雰囲気を感じ、「危険」も感じたAさんは適当に話をはぐらかして早々にBと分かれた。
●証言2
サロンに疑問を感じ、しばらくサロンから遠ざかっていた港区のCさんところへ9月上旬、神世界関係者から電話があり、「とても大切な見てもらいたいものがあるのでサロンに来てほしい」と言われた。しかしCさんはすでに神世界に疑問を感じていたので誘いを断った。
●証言3
Cさんと同じようにサロンから遠ざかっていた千葉のDさんにもスタッフから巧みな誘いの電話があり、Dさんはサロンに出向いてしまった。すると案の定、神世界新聞を渡され、これからも続けてサロンに通うように説得された。その際、Dさんに対しスタッフは「訴訟の部分は外に出さないように注意してほしい」と言った。
弾丸報告書(新規用、リピーター用) |
火の玉隊活動報告書 |
7、弁護士の責任
神世界新聞には、「法律解説・宗教活動がなぜ?」と題した記事が大きな面積を占めて掲載されている。この記事は創刊号にも第2号にも掲載されており今後も連載されるようだ。他の記事よりもやや大きなポイントの活字を使い読みやすいように配慮されており、この新聞を発行したもう一つの目的はこの記事を信者に読ませることにあったのではないかとも思われる。
記事は神奈川県警が神世界に対して強制捜査を行ったことへの疑問に始まり、宗教活動に警察が詐欺の容疑をかけるのは筋違いだという内容が、一問一答形式で書かれている。回答者が弁護士であるといいながら回答している弁護士の氏名は一切書かれていない。
表題が、「宗教活動がなぜ?」となっていることにまず驚かされる。大多数の神世界被害者は「宗教活動」という言葉が唐突に現れ、何のためらいもなく宗教という言葉が繰り返し使われていることに驚くのではないだろうか。
私は約200名以上の神世界被害者から話を聞いているが、大多数の被害者が口を揃えていうのは、被害者が神世界に通っていたとき、「ここは宗教なのでは?」という疑問を抱き、スタッフや先生と呼ばれる者に、「ここは宗教なのですか?」と尋ねたとき、決まって彼ら(彼女ら)神世界関係者は、「ここは宗教ではない。会社です」と答えていたと証言している。被害者は口を揃えて、「神世界が宗教だと分かっていたらあんなところに通いはしなかった」と言っている。
被害者は神世界が宗教ではないという言葉を信じて通い続けていた。オウム真理教事件後、市民の宗教やカルトに対する警戒心は高まっており、ここが宗教だと分かっていたら大多数の客は通うことはなかった。神世界被害の根本には神世界が繰り返し客に言っていた、「宗教ではない」という言葉が大きなウエイトを占めていることを忘れてはならない。神世界側は市民の宗教に対する警戒心を察知していたからこそ宗教色を隠し、サロンやデトックスなど、女性に警戒されない名称を盛んに用いて営業してきた事実がある。
回答者である弁護士は神書は読んでいるのか? 神書の232ページ、「信仰は不必要」の項にはこう書かれている。
信仰とは信じて尊び心の支えにしたり生きる基準にする事で、簡単にいえば最も強く信じる事であるから最も危険である。「信じる」とは信じる必要があり信じなければ成り立たないから、信じる対象が不安定・不完全・当てにならない・あやふや・実体がわからない事を意味している。もし確実であれば信じる必要がないから信仰も不必要なのである。
(中略)
しかし現実には主な世界的大宗教のユダヤ教・キリスト教・仏教においては数千年も活動しているし、全世界では無数の宗教が活動しているのに病気と貧乏と闘争は大昔から今に至るまで継続していて、世界中のどこにも永遠の幸福者の国や地域が存在しない事実は、今までの宗教の教えが全部間違いで人類の幸福実現には無力だった事を証明している。
したがって本物の神様が地上に出現して人類の幸福を実現した時には、全世界のすべての宗教は全く不必要な存在となって完全消滅するのである。
神書では現存する宗教や信仰を全否定しているんだぞ? 神世界は宗教や信仰とは全く違い、「神様との取引」で客は利益を得ることができると説明してきた。神様との取引には客が金を出すことが最重要であり、そうすることによって幸福が実現すると繰り返し述べている。「神様に金を払えば幸福が得られる」などという宗教が存在するはずもなく、神世界が宗教とは無縁のものであることは明白だ。
それにも係わらず神世界新聞紙上で弁護士が回答している下記の内容はなんだ? 人をバカにしているのか?
要するに、宗教行為は、宗教的確信に基づく限り、詐欺とは無関係なのです。(神世界新聞創刊号「宗教活動がなぜ?」問2への弁護士回答)
こんな回答で神世界の擁護ができるとでも思っているのか? 一連の回答をしている弁護士は神世界がどのような手口で客から金を巻き上げてきたのか分かっているのか?
これまで神世界が客に対して神世界は宗教であることを明らかにした上で営業活動をしてきたのであれば「宗教行為は・・」という弁護士の回答も少しは役立つかもしれないが、客は「神世界は宗教ではない」という言葉を信じて金を出してきたのだから宗教行為は云々という講釈は的外れだ。信仰や宗教を完全否定している神世界関係者に宗教的確信などあろうはずもない。
神世界がこのような新聞を発行し、弁護士を紙面に登場させて宗教行為は詐欺の対象にならないとする論陣を張ろうとしているのは警察や被害者の追及をかわすために宗教へ逃げ込み、保身を図ろうとしているだけだ。
神世界が雇ってきた弁護士はこれまで何人もが途中で解任されている。それは神世界が行ってきたことを知れば知るほど神世界の行為は弁護に値せず、被害者を救済すべきだという見解に弁護士がたどり着くからだ。神世界側にその意見を出した途端に神世界は弁護士を解任したのだろう。
企業側弁護士として神世界から金をもらっている以上は神世界の弁護をせねばならないのは分かるが、弁護士としての気概と法を守るという弁護士の本分を忘れないでほしい。
神世界のために多くの女性が人生を狂わされてきた事実から神世界側弁護士は目をそらしてはならない。神世界は短期間に数百万円、中には1,000万円を超える金を多くの女性に支払わせ、被害者が受けた経済的、精神的損害は甚大なものがある。神世界のために生活が破綻し、友人からも家族からも見放され、社会的にも孤立している多くの被害者がいることを忘れてはならない。
こうした被害を与え続けてきた神世界という団体を依頼人だからという理由で弁護士が全面的に擁護するのは間違いだ。このような団体が今後も存続すれば新たな被害者が発生することは目に見えている。それは結果的には弁護士が霊感商法に手を貸したのと同じことだ。次に被害に遭うのは弁護士の家族かもしれない。神世界側弁護士は、あなたの娘さんやあなたの奥さんが神世界に嵌っても「宗教行為は詐欺とは無関係」と言って安閑としていられるのか?
宗教と霊感商法は全く別次元のものだ。神世界側弁護士として為すべきことは、神世界が行ってきたことを精査し、神世界に然るべき社会的責任を取らせた上でこの企業の解散手続に手を貸すことが企業側弁護士の責務ではないのか。