著名詐欺事件

写真はイメージです
 ウィキペディアに、「日本の詐欺事件」というCategoryがある。このカテゴリーには、近代に日本で発生した49件の主要な詐欺事件がピックアップされている。49件の中には、最近大きな話題になった安愚楽牧場事件や、近未來通信、平成電電、エル・アンド・ジー、豊田商事事件、天下一家の会事件、「足裏診断」で話題になった法の華三法行事件など蒼々たる詐欺事件が顔を揃えているが、神世界事件もしっかりとその中の1件として名を連ねている。いまや、神世界事件は、日本中に知れ渡った”著名な詐欺事件”の一つなのだ


●あれから6年
 神世界グループによる詐欺被害が全国に広がっていることを私が知り、神世界を告発する目的で、「ヒーリングサロンによる被害」と題したHPを公開したのが、2005年11月21日だった。それから丸6年が経過した(2011年12月現在)。
 神世界グループが行っていることが、ことごとく詐欺であることは、当HPで訴え続けてきたが、「霊感商法詐欺の捜査には時間がかかる」と言われていた通り、神奈川県警による神世界事件の捜査は幾度も困難な場面に直面した。しかし、2011年3月10日にE2経営者の杉本明枝が逮捕されたのを皮切りに、次々と神世界関係者が詐欺容疑や組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕され、これまでに逮捕された人数は延べ25名、書類送検3名に及んでいる。この大量逮捕を見ただけでも、神世界グループが行ってきたことが明白な詐欺であったことは明らかであった。
 逮捕時の取り調べや、公判が始まった当初は、被疑者らは容疑を全面的に否認していたが、詐欺罪で起訴された被告の罪状が”組織的詐欺”へと訴因変更請求(2011年10月5日)され、この変更を裁判所が認めた時点で、「これは間違いなく有罪になる」と神世界側は判断したようで、それを契機に態度を一変させ、2011年12月6日、及び12月8日に行われた公判に於いて、被告全員が組織的詐欺容疑を全面的に認めた。これにより、神世界グループは詐欺を目的に一連の活動を行ってきたことが100%確定したのと同じであり、判決は2012年の早い時期に出されるものと思われる。


●捜査当局の執念
 これまでに行われた神世界事件の公判を傍聴してきた方は、警察・検察の捜査というものは、ここまで詳細に調べ上げるものかと驚いたのではないだろうか。警察・検察の仕事は、被疑者を逮捕して終わりではなく、逮捕した被疑者を起訴に持ち込み、公判に於いて被告の犯行を確実に立証しなければならない。「疑い」だけで被疑者を逮捕できるものではない。公判に於いて、裁判官が、「検察の言うとおり、この被疑者は犯罪を犯した」と断定できるだけの証拠と証人を揃えてからでなければ、”逮捕”という、人の人生を大きく左右する重大な行為は行えるものではない。日本の刑事裁判に於ける有罪率は99%と言われる所以は、こうした警察・検察の緻密な捜査によって成り立っている。
 逮捕された被疑者が実名報道され、顔写真も晒されるのは、「逮捕された」ということは、99%有罪になるだけの証拠が挙がっていることの証でもあり、逮捕によって被疑者の容疑は、ほぼ固まったと判断されるからだ。今回、逮捕された神世界関係者の中には、”起訴猶予処分”となった者が数名いたが、これらの者も逮捕された段階で有罪になるだけの証拠は挙げられており、教祖等と共謀して詐欺を働いたことは明白だ。諸般の事情により起訴が猶予されただけであり、起訴された者と罪の深さは大差ない。

 神世界事件の捜査は、難しい側面をいくつも持っていた。神世界被害者は、大声で脅されたり、暴力を振るわれて金を脅し取られた訳ではない。言葉巧みに、「良いことがあったのは御霊光のおかげ、悪いことがその程度で済んだのも御霊光のおかげ」と刷り込まれた被害者は、何があっても全ての出来事は御霊光のおかげと感謝する”御霊光脳”に思考をコントロールされてきた。大金を出してきたのも、自分や家族のためを思って、自ら金を出したと思い込まされてきた。病気が自然治癒した場合などは、「御霊光のおかげ」と思い込まされていた被害者は、巨額の金を御礼として神世界に支払ってきた。それらは全て被告等の巧みな作戦に乗せられていただけなのだが、一度できあがってしまった”御霊光脳”から覚醒することは非常に困難であった。捜査員がそうした被害者に接触しても、「御霊光に感謝している」というばかりで、捜査に非協力的な者が多かった。

 神世界事件は、被害総額約175億円、全国に数千名の被害者が存在する一大詐欺事件であるにも係わらず、上記のような思い込みや、詐欺事件被害者特有の、「自分が被害に遭ったことを家族や職場に知られたくない」という感情も働き、自分が被害者であることを認識していても、被害を訴え出るのは、実際の被害者数の数十分の一程度に留まった。
 こうした捜査の壁に阻まれながらも、捜査当局は警察・検察の威信をかけて執拗に事件を捜査し、2007年の捜査開始から4年の歳月を要したが、首謀者等の逮捕・起訴にまでこぎ着けた。第一線で長期間、捜査に当たってきた神奈川県警の刑事の皆さんと、県警を指揮するとともに、自ら全国に足を運び、捜査の先頭に立って奮闘してきた横浜地検の検事の皆さんには、感謝と敬意を表したい。
 しかし、まだ逮捕されていない神世界関係者が複数名いるので、これらの者に対する監視と捜査の手を緩めず、今後も精力的に神世界事件を追及していただきたい。


●裁判で明らかになったこと
 公判を通して初めて明らかになったことも多い。裁判の傍聴記や、掲示板でも断片的に報じてきた内容も含めて、神世界事件の悪質さを再確認する意味で、これまでの裁判で明らかになった点などをまとめたみた。
 まだ目が覚めていない人がこうした記事を読んでも、自分のこれまでの認識とはあまりにもかけ離れたことが書かれているので、にわかには信じがたいかもしれないが、教祖・斉藤亨やその他神世界幹部は、以下に述べる全ての内容を、「事実はその通りだ」と認めているのだ。神世界グループは、組織的詐欺を目的にして活動してきた詐欺師集団以外の何ものでもない。「御霊光」も「神霊鑑定」も、「御祈願」、「御礼」、「遠隔」も絵空事でしかなく、全ては詐欺師が客を騙して金を巻き上げる口実としてでっち上げたものでしかなかったのだ。

事実その1

■死者等が出ていた事実
 斉藤亨被告が執筆したとされる神書には、御霊光は現代医学では不治あるいは原因不明と判断された重病・難病を次々と治すことが可能である等と記載され、被告人は祭典等に於いても同種の発言を繰り返した。しかし、実際には、
(1)平成10年5月には、幹部夫婦の間の生後3カ月の子供が当時の千手観音教会の本殿で、御霊光の取り次ぎを受けていたときに引きつけを起こし、ていえいぶや急性胃腸炎等を原因とする心肺停止状態に陥り、病院に救急搬送されて入院し、集中治療を施されたが効果はなく、1才11カ月となった平成12年1月にも高度の脱水を原因とする高体温等によって病院に救急搬送されて入院治療を受けるなどし、重い後遺症が残った。
(2)平成8年秋頃から千手観音教会に通い始めたある顧客は、糖尿病の治療を受けていたにも係わらず、薬は毒であって使い続ければ命の危険もあるから使ってはならない旨の神書の記載を信じ、平成10年秋頃からはインシュリンを使用しなくなるなど病院の治療を受けなくなり、その一方で御霊光の取り次ぎを受け続けていたが、平成12年2月11日、神世界教会で御霊光の取り次ぎを受けていたときに意識不明となり、病院に救急搬送されたものの、その日のうちに死亡した。
(3)平成11年7月には、生後9カ月であった千手観音教会会員の子供が、2日間高熱を発した後に、引きつけを起こして呼吸停止に至り、救急搬送したものの高熱から呼吸不全によって死亡した。
(4)平成13年8月には、生後8カ月であった教会会員の子供が、数日前からの発熱を経て痙攣を起こして呼吸停止に至り、救急搬送したものの急性脳炎等により死亡した。
(5)平成14年8月には、関西方面の幹部会員であった女性が、子宮頸癌に罹患していることが判明し、御霊光の取り次ぎを行うなどしたものの、翌15年2月に死亡した。

 被告人等はこれらの事実を顧客らが知ることのないようにその隠蔽(注1)に努めた。
 その一方で、御霊光による奇跡の体験談である、「奇跡の話」として、虚偽内容の体験談を会報に掲載するなどし、あたかも御霊光に病気を確実に治癒する等の効果があるかのように装い続けた。

(注1、同日午前中に行われた杉本明枝の公判において、隠蔽の様子が次のように述べられている)

(1)この亡くなった男児の父親の供述調書には、淺原嘉子からの電話で男児が病院に運ばれて危篤である旨聞いたこと、同女(嘉子)から男児の母親が千手観音教会のことを病院で話さないように病院まで行って口止めをすることを指示されたこと(中略)が述べられている。

(2)当時、斉藤亨や日原易子等が「神手かざし」と呼ばれる行為で御霊光というものを客に取り次ぐという業務を行っていた。これらの千手観音教会の幹部等は御霊光を取り次いでもらうことで健康になるよと言っていたこと。斉藤亨が薬を使用したその毒素が大量に体内に蓄積されると生命に危険がある等と言っていたため、母がインシュリン注射を打たなくなり、病院にも通わなくなったこと。母が会う度に痩せていき、歩くのさえおっくうそうになっていったこと、母は千手観音教会に通っていた3年間で500万円くらいを千手観音教会に使っていたこと、母は亡くなる少し前頃にも「遠隔神手かざし」を受けていたが、様態がますます悪化していったこと、亡くなる直前、母のたっての頼みで教会に連れて行き、日原易子等の神手かざしを受けさせたが、その途中で、「救急車!救急車!」という声が聞こえて騒がしくなり、母の様子を見たら意識不明の状態になっていたこと、斉藤亨の父が慌ただしく出入り、斉藤亨自身もその場にいたが、呆然とした表情でただ歩き回っていたこと、そのような騒ぎの中、救急車が到着するまでに職員が千手観音教会の看板に白いテープを貼って文字を隠していたこと、斉藤亨の父が、「インシュリンを止めろとか、病院に行くなとは言っていないですからね」、「これを受け取っておいてください」等と言いながら金が入っていると思われる封筒を渡そうとしたが父は受け取りを断ったことが明記されている。


 それらの事件・事案を山梨県警がその都度適切に捜査をしていれば、もっと早い時期に神世界の問題点が明らかになり、神世界グループによる一連の霊感商法詐欺事件が未然に防止できていた可能性がある。
 一連の事件を看過した山梨県警の責任は重い。観音会代表(斉藤亨の父親)が山梨県警のOBであったために、県警は捜査をためらったのか?

 山梨県警の捜査にも問題はあったが、御霊光なるものに何ら病気を治癒させる力などないのに、あたかもそのような力があるかのごとく会員を誤信させ、金儲けの為には人命をも粗末に扱ってきた千手観音教会と神世界幹部の責任が厳しく追及されねばならないのは言うまでもない。



事実その2

■「奇跡話」はねつ造だった事実
 2011年12月6日(火)に行われた、杉本明枝の第8回公判で、千手観音教会当時、「会報」に掲載された”奇跡話”がねつ造であったことが明らかにされた。
 平成8年〜平成13年頃、千手観音教会では「会報」と題した機関紙を定期的に発行していた。平成8年3月18日発行のこの会報に、「ある幹部の母親」の名前で、”奇跡話”が掲載された。
 ところが、そこに掲載された内容は、この「ある幹部の母親」が全く知らない間に、誰か他の者が母親の名前を騙って書いた内容であり、事実とは違ったことが書かれていた。
 この「ある幹部の母親」は、自分の息子が千手観音教会に係わっていることは知っていたが、母親自身は千手観音教会の活動に懐疑的であり、全くこの団体の教えを信じたことも、ましてや奇跡話を投稿したこともなかった。それにも係わらず、母親の名前で投稿された内容は、

●投稿者の氏名や住所、電話番号などは、明らかに「ある幹部の母親」の氏名・住所・電話番号が記載。
●「体験談」の内容は、この母親や家族しか知らない事情が書かれていた。
●この母親が「額」を持ち帰って参拝している等と書いてあったが、そのような事実はない。
●「体験談」の中では、義母が夢の中で観音様を見たり、その後耳が良くなったことなどが書いてあったが、実際にはそのようなことはなかった。
●千手観音教会の神様なるものから”奇跡を起こしてもらった”と書かれているが、そのような事実はない。当然、その神様に対して感謝したことなどない。
●夫が体調を崩した時のことが書かれているが、その内容や、時間、病状が違う。
●その他、事実と違う記載が数多くあった。

 「ある幹部の母親」の投稿として会報に掲載された内容は、全てがねつ造されたものであった。家族しか知らない内容が書かれていたこと等から推測すると、おそらく、この母親の息子である、”ある幹部”が勝手に母親の名前で奇跡話をでっち上げ、投稿したのであろう。
 長年にわたって組織的詐欺をはたらいてきた連中にしてみれば、奇跡話のねつ造など、造作もないことであり、日常茶飯事にこうしたことは繰り返されてきたのだろう。
 今でも神世界新聞の裏面には毎号多くの奇跡話が掲載されているが、その信憑性は限りなく低いと考えるのが妥当だ。

 千手観音教会や神世界は、岡田茂吉が描いた千手観音図でさえ、「教主が描いた」と平気で嘘をつく連中であり、奇跡話のねつ造が明らかになったからといって今更驚くほどのものではないが、教祖や団体幹部がこぞって組織的詐欺の事実を裁判で認め、多くの死者も出ており、奇跡話も嘘だったことが明らかになっても、今なお観音会や神世界を信じてサロンに通い続けている者がいる事実は、驚愕に値する。



事実その3

■「神霊能力」は単なるパフォーマンスだった事実
 これまでに行われた神世界関係裁判に於いて、起訴された被告全員が、神世界グループは詐欺を目的に活動してきたことを認めた。
 神世界グループは詐欺を目的に運営されてきた団体であるので、活動の全てが客を騙すことを目的にしたものであったが、「神霊鑑定」のインチキ振りを考察することによって、神世界の手口を垣間見ることができる。

●斉藤亨が金儲けを目的に考案
 神世界の「神霊鑑定」は、平成12年2月頃、斉藤亨が、「売上げを劇的に増加させるための高額商品」として考案し、多額の売り上げにつながることを確認した上で、神世界グループの活動の柱として行った。斉藤亨の指示を受けた佐野孝や淺原史利らが、更に他のスタッフ等に広めていった。

●神霊鑑定士の変遷
 神世界に於いて「神霊鑑定」を行うのが、「神霊鑑定士」と呼ばれた人間であるが、神霊鑑定士になる方法については、次々とその内容が変遷した。
@これを考案した当初の平成12年2月頃、斉藤亨は、「佐野孝は長年、私の言うとおりに修行したから神霊鑑定士になれた」と述べていた。
Aところが、平成13年2月頃になると、「神霊鑑定は習えませんからね。突然授かるものですから。誰が授かるか分からないです。私がこの人に授けたいなと思う訳じゃないです。それこそ突如として授かります」という説明に変わった。
B平成14年12月頃になると、「神霊能力開発講座」を受講すれば、神霊能力が授かるとして、えんとらんすアカサカに「神霊能力開発講座」を開講させた。

●神霊能力開発講座
 開講した「神霊能力開発講座」の内容は極めていい加減なものであった。
 一例をあげると、人の絵が描かれた紙を受講者に示し、その人の絵を受講者の病気の家族や知人に見立てさせてその名前を書かせ、その絵の周りに祖父母等すでに亡くなった親族の名前や続柄を書かせて、その親族のうちの誰を供養すれば最初に名前を書いた家族の病気を治すことができるかを思い描かせる等というものだったが、思い描いた答えが正解かどうかの答え合わせを行うことはなかった。講座の講師であった淺原史利は、「神霊は答え合わせをしてはいけません。判定する人によって答えはいくつもあるのです」と嘯いていた。講座の講師は、佐野孝、淺原史利、淺原嘉子らであった。
 講座を受講したことによって、受講者が人の悩みの原因を的確に特定したり、その確実な解決方法を示すことができるようになったかどうかの確認を全く行うことがないまま、淺原史利は、「皆さんは、もう神霊能力を得た」等と宣言して講座を終了し、受講者に対して”神霊能力を得た御礼”と称して、高額な受講料とは別に御礼名目での金員の支払いをも要求した。

●御礼の金額
 講座を受講したことにより、”神霊能力を得た”と勝手に決めつけられた結果、受講者が要求されたのは、高額な”御礼”だったが、その金額は各人によって様々だった。Aさんは250万円、Bさんは180万円、Cさんは400万円、Dさんは60万円・・等とその金額が違っている。神世界に於いては、同じ「商品」であっても客に売りつける際の金額が違うことは他にもあり、要するに相手の”懐具合”を見定め、客(スタッフ)が支払えるであろう最高額を提示していたことが明らかになっている。正に客(スタッフ)はカモ以外の何者でもなかった訳だ。

●神霊はパフォーマンス
 「神霊能力開発講座」では、「分かるんだと自信を持つ」、「全部分かると思い込む」、「女優になる」、「神霊能力を一部授かった自分だと思うこと」などの内容が伝えられた。要するに相手のことが分かったフリをして、もっともらしいことを口から出任せに言うだけのものが神世界の「神霊鑑定」であった。当然であるが、高額な金を支払って講座を受講したが、受講後、霊が見えるようになった者は誰一人としていなかった。

●責任逃れ
 受講者に対して、「講座を受講したので、あなたは神霊能力が得られた」としながらも、その一方で、「神霊能力の使用は全て本人の責任に於いて行うものであって、神霊能力の使用によって生じた全ての事柄の責任は自分にあるから、開講者であるえんとらんすアカサカには責任が帰属しない」とした内容の誓約書を書かせ、首謀者らに責任が及ばないように工作していた。

●神霊鑑定は神世界の縮図
 このように、「神霊鑑定」なるものは、極めていい加減なものでしかなかった。この神霊鑑定は神世界に於ける各種詐欺行為の根本を成すものであり、神世界に於いて行われてきた、御祈願、御礼、遠隔など、彼らが言うところの「宗教行為」なるものも、単なる思い込みをそれらしく装っているだけしかなかった。
 その雰囲気に騙され、高額な金員を支払った客は、「あれだけの金を支払ったのだから、何か見返りがあるはずだ」と錯覚し、日常的・常識的なできごとでさえ「御霊光のおかげ」と思い込まされ、ズルズルと深みに嵌っていったのが神世界事件だった。



事実その4

■被告全員が、組織的詐欺を認めた事実
 神世界事件で起訴された被告等は、2011年12月6日及び12月8日に行われたそれぞれの公判において、それまで全面的に否認していた起訴事実を一転して全面的に認め、神世界はグループ全体で客から金員を騙し取る目的で組織的詐欺を働いてきたことを認めた。彼らがここにきて急遽起訴事実を認めたのは、下記に述べるような理由によると思われる。
 彼らが有罪を覚悟してまで起訴事実を認めざるを得ないところまで追い込まれたのは、詐欺であることが歴然とした事実を次々と突きつけられ、裁判所も組織的詐欺への訴因変更を認めるなど被告に厳しい状況となり、もはや言い逃れはできなくなったと判断するに至ったのであろう。有罪判決は免れないと悟り、弁護人は新たな作戦に切り替えたことが被告等の発言から伺える。

●被告等の発言
杉本明枝被告
(起訴)事実は認めます
しかし、詐欺をする目的のために宗教活動を行っていた訳ではありません。
(2011.12.6 第8回公判)

斉藤亨被告
(起訴)事実はその通り、間違いありません
でも、私たちの宗教活動が全て詐欺だったという訳ではありません。
(2011.12.6 初公判)

佐野孝被告
(検察官が述べた起訴事実は)間違いありません。(起訴)事実については認めます
ですが、私が長年行ってきた宗教活動は、すべてが詐欺ではありません。
(2011.12.8 第4回公判)

淺原史利被告
(検察官が述べた起訴事実は)間違いありません。(起訴)事実については認めます
ですが、御神業、一般的な言い方をすると、“宗教活動”は、すべてが詐欺ではありません。
(2011.12.8 第4回公判)

淺原嘉子被告
検察官が述べた起訴事実は)間違いありません。(起訴)事実については認めます
ですが、御神業など、“宗教活動”は、すべてが詐欺ではありません。
(2011.12.8 第4回公判)

●発言の真意
 上記の通り、被告5名は組織的詐欺として起訴された内容については全面的に容疑を認めた上で、”宗教活動の全てが詐欺だったのではない”とする趣旨の言葉を付け足した。
 しかし、これは極めて不可解な発言だ。裁判長もその真意がよく分からなかったようで、盛んに首をひねっていた。
 被告等は、現在”組織的詐欺”の罪で裁かれているのだ。その法廷で、検事が述べた組織的詐欺の被疑事実を被告等が全面的に認めたということは、被告等は金を詐取する目的で一連の「宗教行為まがいの行為」を演じてきたことを、全て認めたのだ。つまり、被告が起訴事実を認めたということは、神世界が行ってきた一連の「宗教行為と称する行為」全てがインチキであったことを認めたのと同意なのである。もし仮に、「御神業の一部は詐欺を目的にしたものではない」というのであれば、その部分は否認して今後の裁判で明らかにしていくのが当然なのだ。しかし弁護人等も含め、誰一人としてそうした一部否認は行わず、全面的に組織的詐欺の事実を認めた。

 では、被告等がこのように不可解な発言をした真意はどこにあるのだろう?それは次のようなことだと思われる。

@なんとか裁判官をごまかそうと頑張ってきたが、裁判所が組織的詐欺への訴因変更を認めたことから考えて、被告等が有罪になるのは100%間違いない。
A有罪が免れない以上は、全面的に容疑を認め、「反省の態度」を裁判所に示す方が有利だ。刑を少しでも軽くするためには下手に争わない方がよい。
B起訴事実を全て認めた以上、組織的詐欺の罪が確定し、実刑が下されるのは覚悟する。十数年の実刑にはなるだろうが、詐欺罪では命まで取られることはないので我慢する。
C起訴事実は認めるが、法廷にはたくさんの支援者が傍聴にきているので、今後のために、「御神業の全てが詐欺だったのではない」とするコメントを付け足すのを忘れないようにする。そのようなコメントを付け足しても、裁判所に対しては何の力にもならないが、馬鹿な会員らを引き続き騙す効果は期待できる。
D公判の内容はニュースやネットでも公開されるだろうから、「御神業の全てが詐欺だったのではない」という言葉を見た馬鹿な会員等は、引き続き神世界や観音会に留まってくれる可能性がある。一部の被害者に返金して「反省の態度」を示さねばならず、支払った金を残存会員からまたかき集める必要があるので、今後も馬鹿会員らを大切に温存していく必要がある。

●起訴事実を認めた後の神世界
 裁判で教祖以下、全ての被告が、神世界は”神世界グループ”として組織的詐欺を行ってきたことを認めた。普通に考えれば、神世界はこれで”おしまい”になる運命だ。
 ところが、まだ逮捕されていない残党連中は、鼻息荒く今でも活動を続けているというから本当にタチが悪い。この期に及んで、まだ目が覚めない会員も困ったものだが、被告等が組織的詐欺を認めたことを知りながら、未だに活動を続けている経営者や幹部連中は、自分たちが行っている行為が”組織的詐欺”という犯罪行為であることを100%知っていながら活動しているのだから、悪質さに於いては一級品だ。
 杉本明枝被告の弁護人は、被告が起訴事実を認めた理由を、「被告は反省しており、起訴事実を認めることにした」と語ったが、それはあくまでも裁判所向けのパフォーマンスでしかないことは、残存部隊の言動を見ていれば一目瞭然だ。神世界は反省など、何一つしていない。
 もちろん、そうした悪質な残存部隊の連中に対して、捜査当局が手をこまねいている訳ではない。捜査に係わる内容は、私とて詳細に把握している訳ではないが、現在でも活動している者たちは、常に監視されていると思っていいだろう。
 各人が情報端末を所有する現代にあっては、内部情報を完全にコントロールすることは不可能と考えて行動すべきだ。



事実その5

■神世界は何ら反省などしていない事実
●法廷に詰めかける現役会員等
 神世界の裁判には、毎回、驚くほど多数の”現役会員”や”神世界系列経営者”が傍聴に訪れている。一般傍聴席の7〜8割がそうした者で占められているのではないかと思われるほどだ。
 裁判の傍聴は、誰が傍聴しても構わないのだが、いったい彼女らはどのような思いで神世界教祖や神世界経営者の裁判傍聴に詰めかけてくるのだろう。
 ある現役会員は傍聴席から公判中の被告に向かって、”取り次ぎ”と思われる行為をしていた。またある神世界関係者は、傍聴席から法廷内にいる被告とアイコンタクトを取りあっていた。
 逮捕されるまでは、”教祖様”は雲の上の存在であり、一般会員が教祖・斉藤亨を”拝む”ことは皆無に等しかったが、裁判所に行き、抽選に当たれば間近で教祖様を拝むことができるので、少しでも御霊光を分け与えてもらおうと思って遠路はるばる横浜地裁まで足を運んだ現役会員もいたようだ。
 裁判を傍聴する目的にはいろいろあるだろうが、彼女らの法廷での行動や、傍聴した内容をサロンで報告した内容を聞く限り、真実を見極めようとして傍聴しているのではなく、被告等の応援団として詰めかけている感が強い。

●証人を尾行
 裁判が終わった後、検察側証人を尾行した現役会員もいた。尾行された証人も、最初のうちは、偶然帰宅方向が同じになっただけかと思っていたが、電車を乗り継いでもずっと後をつけられており、不審に思ってある商業施設に入り、フロアーを変えながら尾行者の動向を観察したところ、ぴったりついてきた。身の危険を感じた証人は、携帯電話で警察関係者に連絡し、タクシーを巧みに乗り継いで尾行をまいた。
 証人に圧力をかける目的でそのような行動に出たのかもしれないが、すでに斉藤や他の被告は、「組織的に詐欺を働いていた」と、起訴事実を認めているのだ。責めるべきは詐欺を働いた被告達であり、その事実を導き出すため、裁判という公の場で堂々と証言をしてくれた証人に対しては、「よくぞ勇気を出して証言してくれた。おかげで真実を知ることができた」と、感謝こそすれ、圧力をかける対象では全くない。
 まだ目が覚めない現役会員にしてみれば、検察側証人は、”我らが神と崇める教祖様を被告席に立たせた憎き者”と映るのかもしれないが、それは甚だしい勘違いであり、被告に圧力をかける行為は、神世界という団体の異常性をいっそう際だたせるものでしかない。

●虚偽情報の流布
 証人に圧力をかける行為も悪質だが、もっと悪質な現役会員もいる。
 傍聴に行った会員からの速報で、教祖等が裁判で起訴事実を認めたことを知ったある会員は、その情報がマスコミのニュースとして報じられる前に、いち早く他の現役会員等に虚偽の速報を流した。
 その虚偽情報とは、「明日の新聞やテレビのニュースでは、教祖様が起訴事実を認めたと報道されるだろうが、事実はそうではない。教祖様が指示した内容は間違っていなかったのだが、一部の先生やスタッフが教祖様の指示を取り違え、行き過ぎた言動をした。それらの者の行為は誤りであったので、教祖様は”代表者として誤りを認めた”というのが真実だ。一部の、頭のおかしい”自分は被害者だ”と言い張っている連中には、金を返して縁を切らないと神世界を広めていく妨げになるので、金を返すことにした。今回の出来事は神世界を成就させるための”生みの苦しみ”のようなものだ。皆さんは間違ったニュース報道に惑わされず、一日も早い神世界成就を目指して、これまで通り御神業に励みましょう」といったものだ。



●現在の「神世界の本心」
@組織的詐欺の最高刑は懲役15年だが、斉藤亨被告等の刑期を何とかして短くしたい。
Aそのためには裁判所に対して「反省のポーズ」を示さねばならない。
B裁判官の心証を良くするためには起訴事実を全面的に認め、一切争わない。
Cただし、残存会員を騙し続けるために、「御神業は詐欺ではなかった」とのコメントを残しておく。
D裁判官の心証を良くするために民事訴訟は和解に持ち込む。
Eそのためには被害対策弁護団を飛び越えて原告に直接和解案を送付する。
Fしかし出所後に備えて、金をたくさん残しておきたいので、和解金額はできるだけ低額に抑え込む。
G裁判所の外で何をやろうが裁判官にさえ分からなければ大丈夫だ。
H神世界や観音会には、まだ御霊光や神世界を信じている愚かな会員が残っている。
I逮捕されていない幹部は、残存会員をうまく誘導し、金を出させ続けろ。
J神世界・観音会はこれからも活動を続けていく。


●今後は観音会の動向に注視
2012年1月1日には多数の人間が集まっていた
 いまや神世界の命運は尽きたと言っていい状態だ。斉藤一族は、こうした日が遠からず来るであろうことを、ある程度は予測していた節がある。観音会は昨年5月頃、観音会本殿を完成させ、それに合わせて、吉田澄雄・杉本明枝の両名を観音会の後継者候補として養成してきた。
 公判中の淺原史利らも、逮捕前には観音会に足繁く通っており、高齢の観音会代表に代わって各地の祭典に出席するなどしており、観音会を新たな活躍の場としていた。まだ逮捕されていない、びびっと会主・W田M和は、今でも盛んに各地の観音会関係サロンに顔を出し、「これからも活動を続けていく」と会員らに公言している。
 組織的詐欺組織というレッテルを貼られた神世界は、批判サイトやマスコミの標的としてのみ残しておき、神世界をスケープゴートにした裏側で、神世界から人や資産をこっそり引き継ぎ、神世界の残存部隊は観音会を新たな活躍の場として、今後も活動を続けていく算段だ。
 「人の噂も75日」という諺もある通り、しばらくすればほとぼりが冷めるだろうから、それ以後はまた元通りの活動を再開させ、せっせと資金を貯め込み、教祖・斉藤亨が刑務所から帰ってくるのを待っていようという目論見が進行中なのだろう。

 神世界・観音会が今後も存続すれば、必ずや新たな被害者を生む結果となる。何しろ彼らは詐欺を目的にした団体なのだから。社会に害を為す、このような団体の存続を許してはならない。今後は、神世界だけでなく、観音会の動向に十二分の注意を向けていく必要がある。私は今後、神世界や観音会がどのように形を変えようが、この団体が完全に活動を停止するまで、監視の手を緩めることは絶対にない。
 神世界関係者が、「被告等の刑期を短くしたい」と真に願うのであれば、まだ逮捕されていない経営者を自首させ、神世界・観音会は今すぐ全財産を処分し、被害者全員に弁済した後、組織を解散することだ。そうすれば”反省の色あり”として被告等の刑期は少しは短くしてもらえるだろう。姑息な手段を講じて見たところで、詐欺団体が行うことなど裁判所は全て見通している。神世界・観音会に明るい未来は絶対にあり得ない。解散しろ。

 神世界・観音会が存続する限り、捜査当局も監視の手を緩めることはない。


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