カルト宗教など、世間から批判を浴びている団体にとって、組織の維持発展と次世代への引き継ぎは大きな課題だ。
私がメインの活動対象としてきた神慈秀明会というカルトにおいても、次世代の信者獲得のために子供を対象とした催しが盛んに行われている。その活動は教団施設内だけでなく、社会貢献を行うNPO団体を装い、学校教育の中にまで侵入して着々と組織の拡大を図っている。
(有)神世界が運営するヒーリングサロン(最近はサロンやヒーリングという名称があまりにも怪しまれるようになってきたため、”エナジー”や、”美サロン”、”パーフィット”、”リラクゼーション”、”デトックス”などと称している)においても下記に示すような子供を対象とした活動が活発化している。
(有)神世界における子供を利用した活動は、次世代信者獲得という中長期の目的よりも、金を出させる口実として子供を利用しているのが実態だ。
子供の母親=主婦である場合が大半であり、家計を預かる立場にいる主婦を取り込むことによって家族ぐるみの取り引きが可能となり、継続して多額の金を神世界に吸い上げることが可能になるところに主眼が置かれている。
1、キッズ・パーク
びびっととうきょう系列では、”キッズ・パーク”と称して、街中や、友人の子持ち主婦に声をかけてヒーリングを受ける対象者を物色・勧誘している。
キッズ・パークへの勧誘方法としては、”お茶会”と称して手当たり次第に女性に声をかけて勧誘する方法もとられている。
(有)神世界が行うヒーリングは、初期段階の、”お試しヒーリング”でも最低3,000円からというのがこれまでの相場であったが、このキッズ・パークに勧誘された客に対しては、子供も、その母親もずっと1,000円でヒーリングが受けられる事になっている(母親と子供がヒーリングを受けた場合は合わせて2,000円)。
この、”キッズ・パーク”というヒーリングは他のヒーリングと違い、ヒーリングサロンでは行わず、スタッフや熱心な客の家で行っているのが特徴だ。
キッズ・パークを通してヒーリングを受けにきた主婦には、サロンへの案内をしてはいけないことになっている。
サロンへの案内をさせない理由は、批判が高まっているヒーリングサロンとの関係を隠し、子供を使った新たな資金稼ぎの対象として温存していきたいということと、サロンにこうした客を連れて行くと、従来の3,000円でヒーリングを受けてきた客に1,000円ヒーリングの実態がばれてしまう危険性があるので、両者の分断を図っている。
キッズ・パークに参加している一部の客は、サロンのことや、”神様”のことを知っている者もいるが、(有)神世界の存在まで知っている客はいない。
分断を図ることによって、近い将来、(有)神世界や関連ヒーリングサロンが当局の摘発を受けた際にも、キッズ・パーク関係だけは捜査対象にならないようにしたいのが彼らの本音であろう。
”神様スピード”と称して、ネットで少しでも批判されると、すぐに名前を変えたり、それまで言っていたことと正反対のことでも平気で言うような、”変わり身のすばやさ”に長けた神世界が、新たな資金稼ぎの対象として子供をターゲットにした、”新商品”として始めたのが、キッズ・パークだ。
このキッズパークで子供の世話をしているのは、元幼稚園の先生だ。自分の子供が通っていた世田谷のA幼稚園の保護者であった母親達を誘っている。
2、キッズ・ヒーリング
上記のキッズ・パークとよく似ているが、神世界教会(びびっと系)では、平成18年7月下旬から、”キッズ.ヒーリング”というのが始まっている。
キッズ・ヒーリングはキッズ・パークとの共通点が多いが、子連れママを対象にリトミック(音楽教育の一手法)や、手遊びをして、最後にヒーリングをママと子供が一緒に受けるという形が多い。
ヒーリングが終わると、「ヒーリングとは何か」を紙芝居のようにして話して聞かせる。
「キッズ・ヒーリング」に参加した客はサロンには案内しない点はキッズ・パークと同様だ。案内しない理由は上記と同じだろう。
キッズ・ヒーリングの料金は1回1,000円。受け終わったところで、”子育てのアドバイス”を行っている(苦笑)。
「キッズ・ヒーリング」の運営をするのは保育士やピアノの先生など、子供を扱い慣れている者が行っている。といっても彼女らは皆、神世界教会の客やスタッフだ。
3、真のターゲットは主婦
この報告をしてくれた方は普通の主婦だったので、人を集める役を言いつけられ、10人でチームを組み、チーフが二人付いて、毎日毎日、スーパーやデパートを回って声をかけ、人を集めていた。
毎晩チーフは誰が何人に声をかけ、予約を取ったかを東京へ報告していた。
ノルマもあって、次回のキッズ・ヒーリングに一人で5人集めるとか・・・、二人でスーパー等を回った場合はその倍の数字が目標になっていた。
ところが、この人集めはある時、急に打ち切りとなった。
なぜ打ち切りになったか? それは苦情が寄せられたからだ。
東京のTデパートから、「デパート内の客に対してびびっとうきょうへの勧誘活動が行われており、大変迷惑をしている」という苦情が寄せられたため、活動は中止になった。
神世界の、”苦情に弱い”体質が露呈された事件だった。ちょっと苦情が出るとすぐにその活動を止めてしまう(これを彼らは、”神様スピード”という)のは、元々自分達が行っている活動が正しい活動だとは思っておらず、人を騙してでも金を巻き上げようとするやましい行動をしているからだ。
こうした苦情が寄せられたため、勧誘活動においては、『びびっととうきょうの名前は出さないように』とか、『ヒーリングの話をいきなりしないように。まず仲良くなってしばらくしてから話すように』という指示が出された。
苦情が表面化しないように、隠れ蓑をまとった活動に変身した訳である。
上記の活動とほぼ同じと思われる活動だが、「火の玉」と名づけられた活動もあった。 「火の玉」は、毎日毎日スーパーを回って人を集める活動で、『毎月100人ご案内する』という目標を掲げて活動していた。
30人から40人くらいで一つのチームを組んで活動していたが、県内だけでは限界があるといって、家族を置いて県外で人を集める活動も行われていた。
他県に行って、サロンに寝泊りし、一人で毎日毎日スーパーやデパートを回って手当たり次第に女性客に話しかけヒーリングの案内をしていた。
この活動はかなりハードで、参加者にとっては辛い活動だったが、その活動で実績を上げた者の中には、その後チーフとなり、更に活動にのめり込んでいった者もいた。
母親がこうした活動にのめり込むことによって、残された家族はじっと母親の帰りを待つだけの生活を強いられ、もっと辛かったが、活動することが幸福への近道と信じて活動している母親にはその気持ちを理解することはできなかった。
サロンの客であったAさん(女性)からは次のような報告もされている。
「私は、平成18年12月頃から平成19年2月初めまで、駅やデパート周辺で声かけ(キャッチ)をしていました。山梨からスタッフが地元に手伝いに来た時には、商店街に行ってチケット配りをしましたが、『こじんまりとしないと営業妨害になるから、なるべく自然に振舞ってするように』との注意がありました。駅などでの通行人への声かけは、先生の指導によって主婦・子持ちを対象にしていました」。
人集めの活動が中止になった後は、『習い事をさせるように』という指示が出された。『習い事をさせる親は向上心が高いので、ご案内がしやすい』と言われていた。『まず習い事で知り合い、仲良くなって、相手が悩み事を話し始めたらチャンスだ』と具体的に説明がされていた。実際にその指示に従い、新たな習い事を始めた人も多い。
アレルギーの子供さんがいる家庭では、食事に大変な神経を使わねばならず、我が子の食事を作る母親は、「アレルギーによい」という話題には敏感に反応する。
そこをねらったのか、上記「火の玉」の時には「お茶会」もあり、”マクロビオティック”という食事法(健康法)のレシピで作ったお茶菓子を用意し(作るのはお客やスタッフだが、本格的に勉強をしているのでプロ並み)、参加費100円だった。料理教室もあり、母親が我が子のアレルギーによいと思って料理教室に参加したら、いつの間にか神世界にのめり込まされる結果となるのは目に見えており、アレルギーの子供さんをお持ちの母親は本当に気をつけないといけない。
こうした手法は、カルトがマインド・コントロールの常套手段として使う、シンプロシティという感情コントロールであり、このような卑劣な手段を使ってまで女性を騙そうとたくらんでいる神世界の姿が如実に表れている。
街頭で配布されている名刺大のカード2種類(左・表、右・裏) |
山梨のあるサロンでは、現在も街頭などでチラシ配布をしており、集まった客に対し、お茶とヒーリングで人集めをしている。つい最近、ある女性がたまたまスポーツのイベントへ行った際にそのチラシをもらっており、地域によっては街頭や女性が集まりそうな場所でのチラシ配布が続いている。
また別のサロンでは、名刺大のカードを、『プラスのエネルギーが出る』といって配布を続けている。
インターネットで批判され、デパートからも苦情が出されたため、デパートやスーパーでの露骨な勧誘活動は中止されたが、今度は幼稚園や学校を舞台にして子供を対象にした活動を装って母親をヒーリングへ誘う作戦に変更されているのが最近の、「キッズ・・・・」等の実態だ。
狙いはあくまでも、”主婦”、”母親”なのだ。母親の心情として、「子供、家族が良くなれば・・・」という気持ちが強いので、それをうまく利用して神世界にのめり込ませようとする作戦が進行中だ。