起訴猶予処分

日原易子、斉藤葉子、宮入参希江を
起訴猶予処分(2011.11.1ANNニュース)
 2011年10月31日(月)、横浜地検は組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕・送検されていた、(有)神世界代表取締役の日原易子(70)、教祖・斉藤亨の妻で(有)神世界取締役の斉藤葉子(44)、及び(有)神世界取締役の宮入参希江(49)の3名を起訴猶予処分にしたと発表した。これにより、これまでに逮捕された神世界関係者延べ25名中、起訴された者が延べ11名、処分保留で釈放され、その後、起訴猶予処分となった者が延べ14名になった。
 日原易子が釈放されたことを受けて、「陽龍様が釈放されたという事は、神様から今後の神世界活動を許されたという証拠」と、泣いて喜んだ愚かな神世界関係者もいたようなので、起訴猶予処分について簡単にまとめてみた。

1、イエローカード
 起訴猶予処分とは、分かりやすく言えば”イエローカード”だ。サッカーの試合でイエローカードが出されるのは「反則があった」場合であり、なにも反則行為をしていないのにイエローカードが出されることはない。起訴猶予処分もこれと同じで、起訴猶予処分は「被疑事実が明白な場合」に行われるものであり、起訴猶予処分になったからと言って被疑事実がなかったという意味では全くない。起訴猶予処分とは、「起訴すれば有罪に持ち込むことが出来るが、今回は大目に見てやろう」という意味である。

2、前歴
 起訴猶予処分になった者は、”前歴”が警察の記録に残される。前歴とは、「イエローカード1枚」の状態であり、次に何らかの犯罪を犯した際には、「すでに1枚イエローカードをもらっている者」として厳しい処分が下されることになる。今回起訴猶予処分となった神世界関係者が、再び同じような事案で検挙されれば、今度は確実に起訴されることになる。
 前科や前歴は一般に公開されることはないが、神世界事件の場合はすでに多くの報道によって逮捕者の氏名が報道されており、起訴や起訴猶予処分についても報じられているので、神世界関係者の前科前歴は周知の事実である。神世界が消滅しない限り、このサイトがなくなることもないので、神世界事件に深く関与した者等の氏名や前歴はインターネット上に永く記録されることになる。

3、再起
 今回起訴猶予処分となった神世界関係者は、「やれやれ、これで一件落着だ」と思ってる者もいるかもしれないが、それは甘い。確かに起訴猶予処分は一つの処分ではあるが、場合によっては、「再起」といって、再び検察が事件を掘り起こし、新たに処分をする可能性もあるのだ。
 例えば、窃盗で検挙された者が、初犯であるなどの理由で起訴猶予処分になった後、再び窃盗を繰り返した場合、すでに起訴猶予処分になった最初の窃盗案件を「再起」して起訴する場合もある。逮捕されたことを逆恨みし、被害者に対して報復的攻撃を行ったりした場合も再起される可能性が極めて高い。
 裁判によって有罪や無罪の判決が確定した場合は、その後に裁判をやり直すことは禁じられているが、起訴猶予処分は検察官の判断であり、再び捜査し、起訴することは法的に禁じられていない。よく聞く言葉として「執行猶予処分」があるが、起訴猶予処分についても、この「再起」に着目すれば、似たようなニュアンスがある。
 今回起訴猶予処分となった神世界関係者は、自分が「再起」されないようにするためには、今後どのように行動すべきか、よく考えてみるべきだ。自分には1枚のイエローカードが貼り付けられていることを忘れてはならない。

4、起訴便宜主義
 刑法第248条には、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と書かれており、これを「起訴便宜主義」という。検察官には、起訴するかどうかを事案に応じて判断することが認められている訳だ。
 送検された者を全員起訴していたのでは裁判所がパンクしてしまうという事情もあるのかもしれない。今回逮捕された神世界関係者全員を起訴していたら、横浜地裁は連日、神世界関係の裁判で埋まってしまう。現在行われている杉本、佐野、淺原等の裁判だけでもかなり忙しい。今後、斉藤亨の裁判も始まれば、更に神世界関係の裁判は増加する。裁判所の処理能力から考えても、ある程度の者が起訴猶予処分になったのはやむを得ない処置だったのかもしれない。

5、検察審査会
 検察が不起訴処分としたことは妥当性に欠けると思われる場合は、検察審査会に再審査を依頼し、検察審査会が2度にわたって「起訴すべき」と判断した場合は、検察官の判断に係わらずその者を起訴することが可能だ。小沢一郎がこの制度によって強制起訴されたことは記憶に新しい。
 神世界関係者が逮捕された後、「主要人物」が不起訴になった場合は検察審査会を使うことも検討していたが、既に主要人物は起訴されており、起訴された者等の裁判を通して事件の全貌を明らかにしていくことは可能と思われるので、現時点では検察審査会を使う必要はないと思われる。

6、不起訴処分の種類
 @訴訟条件不存在(訴訟を構成する必要条件が欠けている)
 A罪とならず(被疑事実が何らの犯罪をも構成していない)
 B嫌疑なし(被疑者に犯罪の嫌疑が認められない)
 C嫌疑不十分(被疑者に犯罪の嫌疑はあるが公判を維持できるだけの証拠がない)
 D起訴猶予(犯罪の事実は間違いないが裁判にはしない)

 上記のように、「不起訴処分」と一口で言ってもその内容は様々であり、今回、神世界関係者に対して行われたのはDの起訴猶予処分なのである。@〜Bであればまだしも、Dの起訴猶予処分になったということを、関係者は極めて重く受けとめるべきである。「神世界は間違ったことをしていないから釈放され、起訴猶予になった」等と発言するのは事実の歪曲であり、もし起訴猶予をそのように受けとめているとすれば、極めて軽薄かつ愚かなことである。
 いま、神世界の各拠点には、起訴猶予処分を無罪判決を受けたかのように吹聴している愚か者が多数いるようだ。


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