(2011年9月2日横浜地裁第405号法廷)

3、杉本(吉田)明枝 第3回公判
(以下の第3回公判に関する記事は、公判を傍聴していただいた方のレポートを基に構成しました)

横浜地裁

 杉本明枝被告の裁判は、初公判から続けて傍聴しているが、傍聴者の中にはいつも会員(杉本被告の支援者?)らしき女性が多く来ているようだった。傍聴者の中には、吉田元警視らしき男性の姿もあった。
 弁護側の質問は、宗教性や、被害者が「信じて」いたことを強調するようなものだった。御祈願、御霊光の手順(祝詞を上げる、一礼三拍手など)や部屋の中の様子(千手観音の絵がある、水が供えてある)などを証人に説明させて、「宗教的なものだと認識していたはず」、「神世界の神様を信じていた」と言わんとしていた。
 証人の女性は、事件の経緯を明らかにするため、被害を受けるに至った当時の個人的な悩みも公開の法廷で述べたり、弁護人の厳しい質問を受けたりで、証人の負担は大きいと感じた。傍聴席には現役会員と思われる者がおり、法廷内のすぐ近くには杉本被告がいる前で、堂々と証言を続ける証人の勇気ある行動に頭が下がった。第3回公判では、B証人からの要請によって裁判所は証人の遮へい措置を取っており、証人が証言を行いやすいように配慮されていた。
 今後、検察側がどのような証拠を出してくるか、次回以降の公判を見守って行きたい。


杉本(吉田)明枝に対する第3回公判詳報


1 日時:平成23年9月2日(金)午前10時〜午後4時
2 場所:横浜地方裁判所第405号法廷
3 内容:証人B(被害者)の尋問

●午前の部
検察官の主尋問(に対する証人Bの証言)(要約)
(1)サロンに通うきっかけ
証人B:S川Yミコから、E2のヒーリングサロンを紹介された。S川は、会社の同僚で友人。
証人B:S川から、ヒーリングを受けると体が楽になり、精神的に落ち着く、ヒーリングは1回3000円などと言われた。
証人B:自分は、当時、病気を患っていた。子宮の病気。お産の様な激痛に毎日苦しんでいた。S川にもその事を話していた。
証人B:少しでも楽になるのならと思い、軽い気持ちでヒーリングサロンに行くことにした。

(2)初めてのヒーリング
証人B:ヒーリングを初めて受けたのは、平成16年5月3日、千駄ヶ谷のマンションの一室(後の渋谷サロン)。
証人B:スタッフはY田美香とあと1人いた。
証人B:Y田から、ここはヒーリングサロン、皆色々な悩みを抱えているが、通っている内に楽になったり、病気が良くなったり、家族関係が良くなって行く旨説明される。Y田の対応は、すごく優しかった。
証人B:Y田に対し、子宮の病気で激痛に苦しんでいることを話す。
証人B:Y田から、病気の原因が必ずある、原因はここに通えば分かる、通ってくれれば病気が良くなると言われる。
証人B:Y田に対し、宗教かどうか聞いた。
証人B:Y田から、宗教ではなくて会社、お布施とかはない、ここは結果がいただけるから会社と言われた。
証人B:Y田による御霊光を受けた。痛みが少し楽になった気がした。その後、スタッフと会話して感想など聞かれた。
証人B:Y田から、これからも来てください、御霊光は本当に凄いんですよ、喘息とかアトピーとかあらゆる病気に効くと言われた。
証人B:Y田から、神霊鑑定も勧められた。病気には原因があるが、詳しい原因はスタッフでは分からない、凄い先生がいる、杉本先生、先生は神様の声を聞く力がある、原因を取り払うことができる、杉本先生の鑑定を受ければ子宮の病気の原因が分かり、治る、鑑定は3万円などと言われる。

(3)1回目の神霊鑑定
証人B:初めて神霊鑑定を受けたのは、平成16年5月8日、青山サロン(アクシア青山13階)。
証人B:すごく広い部屋、30畳くらい、綺麗で高級なヨーロッパ調の家具が置かれていた。
証人B:部屋の中に杉本が1人座っていた。風格あった。立派な先生と思った。
証人B:事前に申込書を書いていた。相談内容、病気のこと、異性関係のことなどを書いた。
証人B:申込書を見ながら杉本と会話をしていく。杉本は神様の声を聞いて話す。ゆっくり、堂々と、自身に満ちた顔で話す。杉本の言う事を本当だと思った。
証人B:杉本から、@亡父は突然死だったことから、死を受け入れられず、霊界に入れずにさまよっていること、A先祖の祠をほったらかしにしているから、先祖の霊が憑いていること、B魂レベルが低いので蛇の霊も憑いているので上げないといけないことを言われる。
証人B:先祖の祠とは何?どこにあるのですか?と質問したところ、後ろでメモを取っていたY田から「もう時間です。」と言われて答えのないまま時間切れで終了した。

(4)その後
証人B:サロンに通ってヒーリングを受け続ける。
証人B:スタッフからもう1回神霊鑑定を受けるよう勧められる。
証人B:当時、医者から子宮の摘出手術を勧められていた。副作用もあるし、女性として抵抗もあったので手術はしたくなかった。ヒーリングで治るなら治したいと思った。
証人B:スタッフは、体にメスを入れてはいけない、ここに通えば手術しなくて済むと言い、目の前で杉本先生に電話して予約を入れた。杉本先生は直ぐに神霊鑑定を受けた方が良いと言っていましたよと伝えられる。
証人B:事前の申込書を書いた。
→甲38を示す。
→相談内容:子宮の病気について、先祖の祠について

(5)2回目の神霊鑑定
証人B:2回目の神霊鑑定は、平成16年6月4日、青山サロン。
証人B:3万円支払った。
証人B:杉本から、@病気の原因は霊的なものである、A先祖の祠(北朝鮮にある)をほったらかしにしているから、先祖が怒って一番弱い立場にいる自分に祟っている、B小さな蛇の霊も憑いている、もっと大きな蛇が憑く人もいるのでまだマシだが、魂レベルが低いから蛇が憑く、C解決するには御霊光を沢山受けるか御祈願するかのどちらか必要、D御霊光の場合は何十回、時間が掛かるが、御祈願なら1回で良くなる、E手術しなくても治る、なるべくメスは入れない方が良い、霊的な問題をほおっておいて手術しても良くならないと言われる。

(6)御祈願(被害額50万円)
証人B:2回目の神霊鑑定後、お金がなかったので、直ぐには御祈願を申込まずにいた。時間が掛かっても御霊光を受けるしかないなと思っていた。
証人B:すると、S川が血相を変えて自宅まで来た。
証人B:S川から、杉本先生が、このままではさんの命が危ない、御祈願をしないと死ぬよ、さんを助けてあげなさいと言っていると言われる。
証人B:渋谷サロンのスタッフからも、命に関わることなので杉本先生の御祈願を受けた方が良い、早く痛みから解放されたいでしょ、子宮の病気が治ったという人もいると強く言われる。
証人B:そこで、御祈願をすることに決めた。
証人B:代金は50万円〜と言われたので、50万円にした。
証人B:50万円は生命保険の契約者貸付を利用して用意した。S川から借りた方が良いと言われた。
証人B:平成16年6月23日、青山サロン。50万円支払った。
証人B:杉本が蛇腹式の祝詞を読み上げた。自分は正座して手を合わせて黙って聞いていた。
証人B:杉本から、御祈願をしたので良くなって行きます、亡父は霊界へ行く、先祖の怒りも鎮まった、蛇の霊も取れたと言われる。

(7)その後(止めた経緯)
証人B:祭典(お茶会みたいなもの)の際に、2000万円使っている人や700万円使っているという人がいるのを知り、金を取られる所だと思う様になった。
証人B:御祈願後も体調良くならなかった。
証人B:家族に北朝鮮の先祖の祠のことを聞いたら、馬鹿言ってんじゃない、そんなのある訳ないと言われた。
証人B:子宮の病気は悪化し、最終的には摘出手術を受けた。4年位前の12月20日。
証人B:入院中、ニュース番組で杉本のインタビューを見た。詐欺ではないと言っているのを見て、騙したくせに、嘘じゃないかと思った。

●午後の部
証人Bへの弁護側反対尋問】
笠原弁護人の尋問(13時20分〜)
→以下の弁護人による一連の質問では、杉本は神の声を聞いて被害者に伝えたにすぎず、詐欺をしたわけではない、神様を信じていただけ、ということを言いたかったらしい。
笠原弁護人:神様、霊界に興味はあったか
証人B:はい。
笠原弁護人:神様はいると思ったか。神様とはあなたにとってどういうものか。
証人B:はい。神様は宇宙を作った方。神様は、一般的な形でいると思った。
笠原弁護人:あなたにとって宗教とは。
証人B:お祈りとか、拘束するものが宗教。
笠原弁護人:奇跡を起こすのは、神様か杉本先生か。
証人B:奇跡を起こすのが神様だとしても、杉本先生が間に入って、役割を果たしてくれる。杉本先生が奇跡を起こされる。
笠原弁護人:神世界は、宗教だと思ったか。
証人B:メニュー表にしたがってお金を払うことになっていたので、宗教とはまた違うと思った。
笠原弁護人:ヒーリングと御霊光は、同じか違うか。
証人B:同じ意味かどうかは分からない。
笠原弁護人:神書は読んだか。書いたのは誰か。
証人B:1回だけ読んだ。神の教え。書いたのは誰だか分からない。1回だけしか読んでいないので、よく覚えていない。
笠原弁護人:御霊光は、何回くらい受けたか。
証人B:御霊光と遠隔を合せて、50回くらい受けた。
笠原弁護人:御霊光を受けたら、どうなったか。
証人B:御霊光を受けたのと、話を聞いてもらうので、気持ちが楽になった。杉本の能力として、病気をなおしたりするということだったと思う。
→この後、サロンでの御霊光や儀式などについて、延々と聞く。
→御祈願の申込書のようなものを示す。
笠原弁護人:あなたは神世界に通う前に、ネットワークビジネス、連鎖販売取引をしていないか。
証人B:はい。
笠原弁護人:平成13年ころ、ニューウェイズジャパンで働いていたか。これはどんな会社か。
証人B:健康食品の会社です。
笠原弁護人:ダウンとして、200人位の組織を作ったか。
証人B:はい。
笠原弁護人:シナジーワールドワイド社、アクアサービス株式会社、有限会社YOとありますが、これらは何の会社か。ネットワークビジネスの会社か。
証人B:いいえ。水の代理店、○○の会社です。
笠原弁護人:紹介者であるN山さんや、K原さん、○○さん・・は、ネットワークビジネスの知り合いか。S川さんもか。
証人B:はい。
笠原弁護人:平成16年5月当時、あなたに180万の借金があったのはなぜか。
証人B:研修や経費で借金ができました。
笠原弁護人:民事訴訟や刑事告訴はどうなっているか。
証人B:民事訴訟については、今考えている。刑事告訴は、しているのかしていないのか、分からない。

門西弁護士の尋問(15時24分〜)
門西弁護人:平成21年夏ころに、刑事が来たということだが、その前に弁護士に相談したことはあるか。
証人B:特にない。
門西弁護人:神世界の一連の騒動については、テレビや新聞などでの報道を見たか。
証人B:見た。
門西弁護人:神世界では、信者と呼ばれていたか、会員と呼ばれていたか。
証人B:会員と呼ばれていたように思う。
門西弁護人:御霊光を発するのは、神か被告人か。
証人B:神様の御霊光を、杉本先生が会員に取次ぐ。

大八木弁護士の尋問
大八木弁護人:ヒーリングというのは、自分の意思で受けたのではないか。
証人B:はい?
大八木弁護人:悩みとして、男性運に恵まれなかったということだが、あなたは、主尋問で沢山の男性をヒーリングサロンに紹介したということだった。御霊光を受けた結果、男性運には恵まれたのではないか。
→法廷全体が笑いに包まれる。
証人B:紹介した方々は、ヒーリングに通う前からの知っている人だったので、御霊光を受けて男性運に恵まれたということはありません。
大八木弁護人:神霊鑑定を受けてお金をはらったということだが、何かをしてもらったら、御礼をするのが常識ではないか。
証人B:御礼としていくら払うのが常識かというのがあると思います。

裁判長の尋問
■裁判長:神世界の前に、占いなどを受けてお金を使ったことは?
証人B:5回くらい。
■裁判長:E2以外で、ヒーリングを受けたことはあるか。
証人B:一度だけ。S川さんに連れられて受けたことがある。払ったのは1000円位。

【証拠調べ】
弁1 検察官異議なし。
弁2 検察官意見留保。弁護人(尾崎)、被告人質問で示して、関連性立証する。
弁3 検察官同意。

15時50分閉廷

この日の公判を傍聴しての感想
 反対尋問がほとんど無意味と思われるものだったこともあり、概ね立証に成功したという印象を受けた。



 下記の、「やや日刊カルト新聞」(2011年9月2日号)にも第3回公判の様子が掲載されています。
 


吉田(杉本)明枝被告に対する次回以降の公判予定
●2011年9月21日(水)被害者の証言等
2011年10月12日(水)(中止)
●2011年10月14日(金)(佐野被告らの公判に変更)
●2011年10月25日(火)
●2011年10月27日(木)

場所:横浜地方裁判所
事件名:詐欺 平成23年(わ)第458号等
開廷時刻:午前10:00
傍聴券が抽選になるかについては、期日が近づいてきた段階で確認します。

佐野孝被告らに対する初公判予定
●2011年9月22日(木)
場所:場所:横浜地方裁判所405号法廷
開廷時刻:午後1:30
傍聴券は抽選になるものと思われます。期日が近づいてきた段階で確認します。


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