(2011年7月14日横浜地裁第405号法廷)

1、杉本明枝初公判
杉本明枝の初公判が行われた横浜地裁405号法廷。(TBSテレビより)。このニュース動画はここをクリックしてください。

 神世界関係サロンであるE2(イースクエア)の元経営者・杉本明枝は、2011年3月10日に逮捕されたのを皮切りにこれまで3度逮捕され、横浜地検から詐欺罪で3度起訴されていた。3件の起訴は併合審理されることとなり、その初公判が2011年7月14日(木)横浜地裁で行われた。
 「高温注意情報」が出された横浜は、気象台の発表では最高気温が32度であったが、ジリジリと太陽が照りつける日なたの気温は、汗が噴き出すほどの猛暑だった。裁判が行われる横浜地裁405号法廷は傍聴席の数が40席程度であり、多数のマスコミ関係者が優先的に席を確保することが予想され、一般傍聴者の席はかなり少ないのではと懸念された。
 傍聴券は抽選になることが予め知らされていたが、裁判所の様子を観察するためにも少し早めに地裁に着いた。杉本明枝の裁判が行われる405号法廷廊下掲示板記載事項は下記の通りだった。

横浜地方裁判所刑事第5部
合議C係 405号法廷
平成23年(わ)第458号等 詐欺
被告人 杉本明紀枝こと杉本明枝
平成23年7月14日 14:00〜15:30
裁判長 朝山芳史
裁判官 杉山正明
裁判官 山本美緒


 13時頃になると、男女を問わず、多くの人が次々と地裁ロビーに詰めかけ、にぎわっていた。13時15分頃から裁判所職員が抽選券配布の準備を始め、13時30分頃になると通行の邪魔にならないよう、廊下の端に2列に並ぶように声がかかった。その声に合わせて一斉に人が集まって並び始めた。列を作っていく際、知った顔がいないか、それぞれが探り合って並んでいく感じがした。直視する者、俯いて隠れるようにする者、いろいろだ。想像以上に人が並び、3列につめて並び直し、13時40分の抽選券配布終了を待った。定刻になると裁判所職員が抽選券を受け取った人が117名だったと発表した。13時40分の定刻を過ぎて到着する者もチラホラいたが、きっちり配布終了を伝えられていた。列に並んで待っている間、民事訴訟で被告代理人を務めている面々がその横を通り、エレベーター方向へ向かっていく姿が確認できた。杉本被告の弁護人として出廷するのだろう。E2と神世界の代理人はまだ分かるが、びびっとやみろくの代理人までいたことに驚いた。

 裁判所職員の説明では、本日の抽選で傍聴券がもらえるのは25名とのことだ。横浜地裁での傍聴券抽選は、東京地裁のようなコンピュータ抽選ではなく、「クジ」形式の抽選だった。多くの人は抽選に外れ、残念そうに引き上げていったが、ホールには抽選に外れ呆然と立ち尽くす人も多く、しばらく騒然としていた。これだけ世間の注目を集めている事件なのだから、次回からはもう少し大きな法廷を使ってほしいものだ。その後、傍聴券を獲得した人は405号法廷へ向かい、法廷前の廊下でも並んで待ったが、廊下にはマスコミ関係者も列をなしていて、ごった返していた。開廷前にテレビ撮影があるので、映りたくない人は撮影終了後に入るよう説明があったが、すぐに列に従ってぞろぞろと法廷内に入った。傍聴席スペースが東京地裁と違って狭いこともあり、ここでは奥から順に座っていく形になっていた。
 法廷に入って中の様子を見ると、撮影のためか法廷内には既に裁判官、書記官、検察官、弁護士がすでに着席していた。撮影終了後、残りの傍聴者が着席し、杉本被告が刑務官に連行されて入廷。傍聴席に背を向けていたので手錠を外すところは確認できなかったが、腰縄を外している様子は伺えた。被告の人権に配慮してか、そうした作業は目立たないようあっという間に行われた。弁護人席の前に、ベンチ型の被告人席があり、裁判官側に男性刑務官、傍聴席側に女性刑務官が座り、両刑務官に挟まれた形で杉本被告が着席した。

【弁護人席】(敬称略)

NHKテレビより(動画はここをクリック)
(前列) (後列)

尾崎幸廣
笠原静夫
大八木治夫
門西栄一

大森一志
清澤清一郎
谷地向ゆかり


 弁護人席には、先ほど廊下で見かけた面々がずらっと並んでいた(右記写真・氏名等)。杉本被告1名の裁判に、総勢7名もの弁護士を繰り出してきたのは???であるが、今回の裁判は神世界に対する初の刑事裁判なので、神世界側も必死なのだろう。彼らお得意の”てんびんの法則”には外れていると思われるが(笑)
 杉本被告の服装を見て驚いた。上はピンクのジャンパーのような上着、下は白のパンツ姿で、どこかに遊びに行くような服装だった。傍聴者の一人は、「杉本はピンクのジャンパーに白のパンツ姿というスポーティーな出で立ちで現れ、目を疑った。罪を問われている刑事裁判の法廷でピンクの服装はないだろう。刑事裁判を競技場とでも間違えているのか?? サロンでは『外見が大事』とか『T.P.O』等と言っていたのに裁判にピンクの服装で現れるとは!さすが常識にとらわれない団体のすることだ。時折、長くおろしたままの髪をかきあげてみたり、何度も襟を気にしたり、”反省はしない”という神世界の教えにふさわしい態度だった」と言っていた。
 逮捕される直前にTV局が杉本被告を撮影した映像では、随分ふっくらした顔立ちであったが、この日の初公判に出廷した被告は、”クリスマス会見”の時よりやや細くなったように見えた。3/10の逮捕から4カ月経過しているので、その間の拘置所生活によって”強制的ダイエットに成功”したようだ。

14:00開廷
 定刻になり、杉本明枝に対する詐欺事犯の公判が開始された。この裁判を担当する朝山芳史裁判長は、裁判員裁判で初の死刑判決(2010年11月)を出した裁判長だ。朝山裁判長は死刑判決を与えた被告に対し、「控訴を勧めたい」と伝えたことが大きく報道されたが、あの発言は裁判員に対する精神的負担を軽くするためと思われる。杉本明枝に対する裁判は合議制で行われるため、朝山裁判長の他に2名の裁判官(1名は女性)が裁判官席に着席していた。

人定質問
 まず、朝山裁判長が被告人に対し、人違いでないことを確認するため、氏名、生年月日、職業、住居、本籍等を確認した(規則196条)。この中で杉本被告は、起訴後の2011年4月に吉田元警視と結婚し、杉本明枝から吉田明枝になったと答えた。また職業を尋ねられた際、「会社員です」と答えた。「会社員」という言葉に?と思ったが、下記「被告人の身上」を聞いて意味が分かった。

裁判概要
 人定質問の後、起訴状朗読。検察官からAさん(女性)、Bさん(女性)、Fさん(男性)について公訴事実が読み上げられた(詳細は下記「検察の起訴状朗読概要」
 これに対し、尾崎弁護人が「釈明を求める」と手を挙げた。
 「宗教活動を旨とすれば、有限会社E2が宗教組織か。教義はどのようなものか。共犯者とする者と各被害者は信者だったのか。悩みの原因を的確に特定し、確実に悩みを解決・治癒する能力などないとされているが、なぜ異なる○○(聞き取り不能)を用いられているのか。共謀したY田みか「ら」とは誰のことを指しているのか。事前共謀か現場共謀か。共謀の日時、場所、内容はどのようであったのか。欺もう文言は誰の発言か。悩みの原因を的確に特定して、解決する能力とは医学的な能力について問題にしているのか、宗教的能力を問題にしているのか。供養とはどのような行為なのか。供養をしなかったことを問題にしているのか、その値段が不適正だったことを問題にしているのか。神霊鑑定とは宗教行為か否か。祈願とは誰が誰に対して何を行うものなのか。経営コンサルタント能力の有無を問題としているのか」などAさん、Bさん、Fさんそれぞれの起訴状内容に対し、求釈明がなされた。朝山裁判長は検察官に「任意釈明はあるか」と問い、検察官は「任意釈明すべきことはない。冒頭陳述にて詳しく釈明する」と返答。裁判長は、「裁判所も(釈明を)求めない」と延べ、あっさり先へ進んだ。

黙秘権告知
黙秘権の告知(刑事訴訟法第291条第3項)
 これから、今朗読された事実についての審理を行いますが、審理に先立ち被告人に注意しておきます。被告人には黙秘権があります。従って、被告人は答えたくない質問に対しては答えを拒むことができるし、また、初めから終わりまで黙っていることもできます。もちろん、質問に答えたいときには答えても構いませんが、被告人がこの法廷で述べたことは、被告人に有利・不利を問わず証拠として用いられることがありますので、それを念頭に置いて答えて下さい。

 裁判長が「被告の釈明」と言うと、杉本被告が刑務官に付き添われ、証言台の前へ出た。裁判長より「まず、あなたに注意があります」という言葉があり、一瞬緊張感が走ったが、なんのことはない、黙秘権の告知であった(右記)。「あなたには黙秘権があります」という、TVや小説などで誰でも聞き覚えのあるその一連の言葉を、実際に裁判長の言葉として法廷で聞くと、重みのあるものに感じた。

罪状認否
 杉本被告は、「私はY田、三沢らと共謀して被害者に対する詐欺をしたことはない。神様の声を聞いて伝えただけ。被害者らも同じ神を信仰する信者。起訴状にある文言は述べていない。悩みや疾病の特定や治癒させる能力があるように書かれているが、私が病気を治す能力があるなどと考えていなかったはず。私たちは装ったことはない。誤認させたこともない。私も被害者らも神様が問題の原因を特定して解決してくれると信じて鑑定を行ったもので、欺もうしていない。警察の捜査協力をしてきたのに逮捕されたことは極めて心外」と弁護人から渡された文書を手に、証言台の前ではっきりとした口調で無罪を主張した。
 その後、尾崎弁護士が、「無罪である。E2は宗教活動を行う組織で、被告人も被害者らもいずれも信者で、公訴事実記載の祈願等は宗教行為として行われたものなので、欺もう行為ではなく、被害者らに錯誤もない。いずれの被害者らも被告人に病気等の原因を特定し解決する能力がないと認識していたので、錯誤に陥った事実はない。そもそも被告人は欺もう文言を述べていない。詐欺事犯ではない。検察官の完全なる誤りである」と述べた。

冒頭陳述
 その後、検察官からの冒頭陳述、証拠調べがあった。(詳細は下記「検察側冒頭陳述概要」
 弁護人は、甲号証のうち、E2の登記簿謄本(甲1)のみ全部同意、犯行現場である各サロン等の場所を記載した文書、具体的には、渋谷サロン(甲4)、青山サロン(甲5)、青山サロン(甲6)、寿司屋(甲7)、ウェスティン東京(甲8)を一部同意し、残りはすべて不同意。乙号証は留保した。
 そして、裁判所は同意部分のみ証拠として採用したが、残りの証拠はまだ撤回はしていない。その後、弁護人から冒頭陳述があり、笠原弁護士が書面を読み上げた。(詳細は下記「弁護側冒頭陳述概要」

 以上で審議は終了し、次回期日については追って指定するとされ、訴訟進行については、期日外で協議することになった。

(その後、次回期日は下記の通りと決定された。)

●2011年8月31日(水)午前9時40分
場所:横浜地方裁判所
事件名:詐欺 平成23年(わ)第458号等
抽選券配布場所:横浜地方裁判所1階中央待合いロビー
抽選券配布締め切り:午前9:40
開廷時刻:午前10:00

●2011年9月2日(金)午前9時40分
場所:横浜地方裁判所
事件名:詐欺 平成23年(わ)第458号等
抽選券配布場所:横浜地方裁判所1階中央待合いロビー
抽選券配布締め切り:午前9:40
開廷時刻:午前10:00


15:30閉廷

 裁判終了後、傍聴席にいた女性の中には、被告側弁護士とあいさつをしている女性たちがいたので、おそらく神世界関係者なのではないかと思われた。
 本日の初公判を傍聴して気づいたのは、一部の弁護人の態度が甚だよろしくなかった点だ。7名もの弁護士をずらっと並べたのはいいが、検察側が書面を読み上げている間、弁護人席前列の面々は非常にたるんでいた。法廷という真剣勝負の場で鼻を弄ったり、ふんぞり返ったような姿勢はいかがなものか。その態度は、”面倒だなー”とでも思っているのかのように見えた。法廷内には裁判官、検察官、傍聴者、弁護士がいるが、弁護人席前列に座っていた者の態度は、厳粛な法廷内で唯一異彩を放っていた。傍聴者の中には現役の神世界関係者も数名いたようだが、弁護士達のあの不真面目な態度を見て、どのように感じたのだろう。
 神世界新聞はこの先も発行されるのだろうが、次回9/1号の神世界新聞には今回の初公判をどのように捉えた記事が出るか、非常に楽しみだ。


検察の起訴状朗読概要

@視力低下のことで悩むAさんに対し、霊的なものが脳の右側に何かあるとして、従業員が先生(=杉本被告)の神霊鑑定を勧める。被告人は、神霊鑑定で、「子狐が3匹見えます。この狐の怒りを鎮めるには先祖御供養するしかない。しないと視力は回復しない。特に狐の霊は重い」と言い、200万請求。それ以外にも、「御霊光を受けないと入院ですよ」等と言われ、100万の御祈願、150万の昇魂祈願、御礼等で計650万を交付。罪名及び罰条、詐欺、刑法第246条1項、60条

A子宮内膜症で悩むBさんに対し、被告人は、「病気の原因は霊的なものであり、北朝鮮で祀っていた祠(ほこら)を放置しているので怒っている。蛇の霊が病気の原因だとし、御祈願を勧める。根本的な原因を取り除く必要があり、御祈願は一度に効果が上がる。手術はしない方がいい。実際に手術しなくて済んだ人がいる」等と言い、祈願料50万交付。罪名及び罰条、詐欺、刑法第246条1項、60条

B会社の業績不振に悩むFさんに対し、被告人は、「会社の場所は首切り場だったので、処刑された人の念が成仏できずにいる。無縁墓地に入っている先祖の霊が霊線によってつながっているので、特別御祈願をした方がいい。会社と自宅のお浄めをする必要がある」等と言い、計490万交付。罪名及び罰条、詐欺、刑法第246条1項、60条



検察側冒頭陳述概要

■被告人の身上
 H12 千手観音教会に通う
 H13 契約し、自宅拠点活動開始
 H15 E2設立
 H18 E2中止、びびっととうきょう従業員になり、現在に至る

■神霊能力取得
  悩みを特定、解決するする力はないのに、あるかのように装って神霊鑑定や御祈願を行った。

■売り上げの増加
 担当従業員による営業を行わせ、サロンへと誘導。御霊光取次ぎ等を行い、客に信じ込ませ、悩みを聞き出す。すごい先生がいるから鑑定に入るといいと勧める。客から得た情報をあらかじめ、被告人へ伝える。被告人が客と面談し、神霊鑑定や御祈願等を行う。それに対する御礼を求める、という一連の流れを説明した。

■被告人は従業員に対し、指示していた
 結婚、仕事、子育てで悩みを抱える30代の女性をターゲットにして、「スピリチュアルブームだから、興味がありそうな人に本屋で声をかけてみなさい」、「もっと神霊鑑定につないで、御礼をさせていかないと売り上げが上がらない」などと指示した。
 活動は、売り上げの増加を至上命題とする方針の下で行われた。一部宗教に対するマイナスイメージを回避するなどの目的で、『(神世界は)宗教ではなく会社です』と顧客に説明するよう指示した。ヒーリングなど宗教を連想させない言葉で被害者をだました。神霊鑑定と称して顧客の悩みを特定し『御祈願』という方法で解決する能力があるかのように装い、『鑑定料』や『御玉串』名目で現金を得る活動を繰り返した。
 『ここは信仰するところではなく結果が得られる所です』と説明するように指示したり、内部では『御霊光』と称する行為を勧誘等に際しては『ヒーリング』と呼ぶなど、宗教を連想させる用語を使わないように指示したりした。『お客さんを育ててどんどん私の鑑定に誘導しなさい』とか『御霊光しか受けない客は雑魚だわ。もっと私の神霊鑑定につないで、その後に御祈願や御礼をさせていかないと売り上げが上がらないわよ』と指示したり、鑑定への誘導に消極的な従業員を叱責したりした。こんないいことがあると話し、フォローするよう指示、御礼を勧めるよう指示した。フォローと称する対応は、被告人に報告させた。顧客が被告人の神霊鑑定を受けるよう従業員に誘導させた。

■Aさんに対する詐欺行為について
 アトピーが治った人がいると話し、E2を訪れるよう従業員が誘導。サロンを訪れると、目の疲れは霊的なものなので、原因を知りたければ鑑定へ入るといいと勧めた。鑑定を受けたAさんは通うのをやめればまた悪くなる不安から通い続けた。騙されていると知人に言われ、通うのをやめてみたところ、やめてもかわらないことに気づいた。

■Bさんに対する詐欺行為について
 Aさん同様に経緯を説明。魂のレベルが低いので低い霊が憑いていると言って不安をあおった等、持病を持つBさんに対する詐欺行為に対する説明があった。

■Fさんに対する詐欺行為について
 E2従業員が事前にFさんが山梨出身であることや、先祖の墓が浅草にあることなどを聞き出し、事前にその内容をfaxで被告人に伝えた。被告人は、青山のサロンで神霊鑑定と称してFさんと面談した際、Fさんの菩提寺が山梨と浅草にあるなどと言い当て、事前に被告人が従業員からこれらの情報を得ていたことを知らないFさんが驚いて声を上げたのに対し、『これは神様からのお言葉です』などと言ったため、Fさんは被告人には特殊な能力があるのだと信用した。Fさんはインターネットの情報で騙されたことに気づいた。

 検察官の冒頭陳述が終わると、裁判長が「弁護人、ご意見ございますか?」と言い、尾崎弁護士が何か答えたが、何を言っているのか聞き取れなかった。

 次に、検察官が証拠書類について読み上げていった。

 甲1号証:本店所在地、会社の目的、役員は被告人のみ記載
 甲4号証:犯行場所・渋谷サロンの所在地、貸主等
 甲5号証:犯行場所・青山サロン1305号の所在地、貸主等
 甲6号証:犯行場所・青山サロン2001号の所在地、貸主等
 甲7号証:犯行場所・寿司店の所在地等
 甲8号証:犯行場所・ウェスティンホテルの所在地等



(冒頭陳述を聞いた感想)

 以上のように、検察側の冒頭陳述は、組織としてどのような指示があったのか、どのようにして客を信じ込ませているのかが具体的にイメージすることができるように工夫されていた。検察の起訴状朗読や証拠調べは長い時間を要したが、それを聞いている間、杉本被告は検察の方を見据え、背筋は伸ばしていたが、時折、唇を噛み締めたり、ため息をついたり、苛立ちを抑えているのかのような表情、ふて腐れたような表情が見受けられたが、全体として杉本被告の態度は終始、堂々としており、”ふてぶてしい”という印象が強く感じられた。
 裁判官たちもその間、書類を凝視するのではなく、杉本被告のそうした様子や傍聴席の様子をよく見ていたのが印象的だった。裁判官は言葉のやり取りだけでなく、全体の印象を観察しているように見えた。



弁護側冒頭陳述概要

 E2は営利企業ではなく宗教組織である。人類救済するための宗教行為であり、神世界実現のための行為(御神業と呼んでいた)をしているにすぎない。
 杉本は2歳の頃、実兄が癌となり、父親が秋田の大舘の神様(先生)に相談した。父親も癌で亡くなり、被告人は検査しても原因不明の高熱に襲われた。大館の神様から「あなたの父が遣り残したことをやってほしい。先祖のお墓にコギツネがついている」等と言われ、12年を要して北海道、青森等でお墓探しをしてみつけた結果、発熱が治り、状態が良くなった。それに驚いた杉本は霊的なことを理解したいと思い、膨大な書物を読みあさった。
 平成12年に御神業に携わるようになった。「中村」と名乗る人が杉本の所を訪ねて来て、太陽神の話をした。書物から学んでいた杉本は太陽神が最高の神様と認識していたので、興味を抱き、御霊光を受け、神書を受け取った。その3時間後、発熱したり、アンモニア臭の強い尿が多量に出たりした。神書を読んで、御霊光による排泄だと思って翌日、中村に電話をし、山梨の千手観音教会を訪れた。会主と面談し、入会し、信者となる。「あなたは神様に選ばれた人。神事をする人だ。お手伝いをやってみなさい」と言われ、昔、大館の神様に言われたこともあり、活動を始めた。
 平成15年、 E2設立。神霊能力を授かる。神霊能力とは神様の声を聞くというものであり、共犯とされる者、被害者ともに信者であった。公訴事実記載の祈願等は宗教行為として行われたものなので、欺もう行為ではなく、被害者らに錯誤もない。いずれの被害者らも被告人に病気等の原因を特定し解決する能力がないと認識していたので、欺もうの事実はない。杉本の神霊能力に確信を持っており疑っていない。客は懇願して神霊鑑定を受けたのである。そもそも被告人は欺もう文言を述べていない。


(冒頭陳述を聞いた感想)

 神世界新聞でお馴染みの弁護士が相変わらず、「宗教団体による宗教活動」だと声高々に主張していた。傍聴席でそれを聞いていた多くの人たちは、どれだけ立ち上がって「ふざけるな!」と叫びたかったことでしょう。本当にハラワタ煮えくり返ります。傍聴者の中には全く関係ない純粋な傍聴者もいたと思いますが、あの弁護士の主張を客観的に納得、共感できた人がいたとは到底思えません。



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