平成23年8月29日
横浜地方検察庁
特別刑事部長殿
〒102-0083
東京都千代田区麹町4丁目7番地
麹町パークサイドビルディング3階
リンク総合法律事務所気付
藤 谷 歩 湖 印
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事件番号 平成23年(わ)第458号他
上 申 書
(有)神世界及び関連会社による一連の霊感商法詐欺事件について、下記の意見を上申させていただきます。
1、上申内容の概要
(有)神世界による霊感商法詐欺事件に関与した者を徹底的に検挙・処罰し、同団体が二度と同様の犯罪を起こすことができないようにして、治安の維持を図っていただきたい。
すでに逮捕・起訴されている者に対する裁判では、できるだけ多くの被害者から被害状況を聴取し、被告等が多くの客を巻き込みながら被害を拡大させて行った事件の経緯を明らかにして再発防止に役立てていただきたい。
逃亡中の(有)神世界教祖らを早期に逮捕し、一連の事件を主導した責任の所在を明らかにするとともに、犯罪によって蓄財した莫大な財貨を没収し被害者に返還していただきたい。多くの被害者を生んだ神世界事件を主導した「教祖」を名乗る人物らに対しては、厳罰を与えていただきたい。
未だ逮捕状が出されていない、(有)びびっととうきょう、(有)みろく、(有)えんとらんすわーるどヒルズなど(有)神世界関連企業の代表者等を逮捕・起訴していただきたい。
2、事件の再発防止
(有)神世界による霊感商法詐欺事件は、「ヒーリング」や「デトックス」など、女性に受け入れられやすい題材を用い、宗教色を隠して言葉巧みに客に近づくことで被害を拡大していった。神世界スタッフと客との間に一定の信頼関係が生じた頃を見計らって、「先祖が苦しんでいる」とか、「このままでは家族が大変なことになる」などと虚偽の内容を告げてこれを誤信させ、より高額の金を出させる行為を繰り返してきた。
客であった女性を言葉巧みにスタッフとして誘い込み、その者を使って更なる客集めと被害拡大を行ってきた手口は誠に巧妙なものがある。
こうした手法による霊感商法詐欺が放置されるならば、神世界の手口を利用した同種霊感商法詐欺は社会に蔓延し、今後も多くの市民が被害者とな危険性がある。
神世界事件を主導してきた者を的確に逮捕・起訴し、厳しく処罰することは、こうした犯罪が割に合わないものであることを社会に知らしめ、同種犯罪の抑止になる。
多くの女性が被害に遭った神世界事件を徹底的に摘発・処罰することは、社会の治安を維持する大きな力となる。
3、裁判での事件解明
すでに逮捕・起訴されている(有)神世界関係者に対する裁判は、すでに開始されているものがあるが、起訴状に記載された事件の内容は一連の神世界事件のごく一部でしかない。実際の被害は非常に広範囲に多数の被害者を巻き込んで全国に拡がっている。本来であれば多数の被害者からの訴えがあって当然の事件であるが、事件発生から警察の捜査が実を結ぶまでに3年以上の時間がかかったため、多くの被害者は疲弊し、事件を告発することを諦めてしまった者も多い。犯罪被害者として長期間、怒りの感情を持ち続けるとは、被害者にとって大きな心の負担となる。新たな生活を始めるために、敢えて被害者として名乗り出ることを諦めてしまった者も多い。
裁判に於いて事件の全貌を明らかにするためには、広範な被害者から証言を得ることが重要である。今後行われる神世界関連の裁判に於いて検察・裁判所は、精力的に被害者に対する聴取を行い、神世界事件の全貌を明らかにして、神世界関係者に厳罰を与えていただきたい。
4、神世界教祖らに対する処罰
2011年8月17日に(有)神世界教祖ら4名に対して組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕状が出されたが、捜査当局の手をかいくぐり、教祖ら4名は逃亡した。捜査当局は全力を上げてこれらの者を早期に逮捕していただきたい。4名が逮捕された暁には、これら神世界事件を主導した4名を、組織犯罪処罰法違反で起訴していただきたい。
神世界事件は教祖を名乗る男らが関連企業の経営者らを操り、経営者同士に売り上げを競わせて被害を拡大していった事件である。教祖ら4名は、直接客と接する場面は少なく、詐欺の実行行為者として処罰することは難しい点があるかもしれないが、一連の犯行を指揮し、収益を吸い上げ、巨額の蓄財をしてきたことは警察の捜査からも明らかである。神世界の構図は、暴力団幹部が自分は直接手を下さず、配下の者を使って不法な資金稼ぎをするのと全く同じである。今回、神世界事件に関与した教祖ら幹部を組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕しようとしている横浜地検の行為は、極めて的を射たものであり、この法律を確実に適用し、関係者の処罰、犯罪収益の没収、そして組織解体まで貫徹していただきたい。神世界事件被害者及び国民は、神世界事件の解明に向けて組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕状を取った横浜地検の英断に賛辞を送りたい。
5、(有)神世界関連会社の摘発
神奈川県警及び横浜地検の捜査により、これまで延べ20名の神世界関係者が逮捕された。このうち数名はすでに起訴され裁判も始まっているが、未だに逮捕されていない神世界関係者が残っている。
(有)びびっととうきょう、(有)みろく、(有)えんとらんすわーるどヒルズといった関連会社に於いても、すでに関係者が逮捕された会社内で繰り返されてきたのと全く同様、もしくはそれを上回る犯罪行為が繰り返されてきた。
今回、神世界教祖ら4名の幹部に逮捕状が出たことで事件の捜査を終えては絶対にならない。残る関連会社の経営者らが逮捕・起訴されねば、神世界事件捜査は片手落ちであると非難されるであろう。神世界事件で最も被害者数が多かったのは(有)びびっととうきょうである。(有)みろく、(有)えんとらんすわーるどヒルズに於いても、「先祖が苦しんでいる」など、虚偽の内容を誤信させ、高額の金をだまし取ってきた。
万一、これらの関連会社経営者が逮捕されないようなことがあれば、教祖らが処罰されても、これら逮捕されなかった者が中心となって神世界は再び同様の犯行を繰り返す危険性が多分にある。また同じ犯罪を犯していながら、ある者は処罰を受け、ある者は処罰を受けないのは「法の下の平等」にも反する行為である。被害者感情から言っても、一部の経営者が処罰されないようなことは断じて容認できるものではない。
横浜地検は、神世界事件の全貌を明らかにし、同種事件の再発防止の為にも、関連会社関係者を確実に逮捕し、起訴していただきたい。
6、終わりに
上申者である私・藤谷歩湖は、神奈川県警が2007年12月20日に(有)神世界に対する強制捜査を行う数年前から被害者救済の立場でこの事件と係わり、これまで250名以上の神世界被害者から多くの情報提供を受け、神奈川県警及び神世界事件被害対策弁護団とも連絡を取り合いながら事件解明と被害者救済の活動をしてきました。
私が得た情報の多くは、「ヒーリングサロンによる被害」としてインターネット上のサイトで公開しています。
神世界事件は日本における霊感商法詐欺史上、エポックメイキングな事件です。警察・検察が事件の全貌を暴き、神世界事件関係者に厳罰を与えることにより、今後、こうした犯罪を目論む者に大きな警告を発することができます。市民をこうした犯罪被害から守るためにも、神世界事件の処理を適切に行うことは非常に重要です。逆に、神世界事件の処理に齟齬があれば、市民を再び大きな危険に晒すことになってしまいます。多くの善良な市民を食い物にして繰り返し霊感商法詐欺を行ってきた(有)神世界に対して、横浜地検は更に捜査を進め、事件の全貌を解明し、神世界事件関係者を厳罰に処すよう切望します。
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