平成24年(う)第1239号 被告人 斉藤亨
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(組織的詐欺)
平成24年10月27日
東京高等裁判所第10刑事部 殿
〒102-0083
東京都千代田区麹町4丁目7番地
麹町パークサイドビルディング3階
リンク総合法律事務所気付
電話 090(****)****
藤谷 歩湖 印
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意見書
現在、東京高等裁判所にて審議中の、上記被告人による詐欺事件(組織犯罪処罰法違反)について、被告人に厳罰を与えていだきたいので、私の意見を述べさせていただきます。
1、はじめに
私は藤谷歩湖と申します。神世界事件に関するサイト「ヒーリングサロンによる被害」の管理をしております。私は神世界事件の被害者でも被害者の家族でもありませんが、平成18(2006)年頃、私がインターネット上に開設していた他のカルト問題のホームページをご覧になった神世界被害者の方が、似たような被害に遭っているとして相談を寄せてくるようになり、それ以降神世界事件と係わって参りました。当時、神世界で被害に遭った方々は、どこに相談すればいいのか分からず大変困惑されておりました。私は少しでも被害に遇われた方のお役に立てればと思い、神世界事件に関するホームページを立ち上げ、現在も活動を続けております。その間、約250名を超える神世界事件被害者の方から相談を受け、被害者の方々、神奈川県警、神世界事件被害対策弁護団と協力して神世界事件解決を目指してきました。
私が得た情報の多くを、「ヒーリングサロンによる被害」としてインターネット上のサイトで公開しています。
事件には直接関係していない私の立場が、事件を冷静に考察することができ、被害者、加害者、警察、検察、弁護団、マスコミなど、事件を取り巻く様々な人々を俯瞰的に見ることができている要因だと思います。
そうした私の立場から見て、神世界事件は日本における霊感商法詐欺事件史上、極めて悪質で許しがたい事件であると思います。
これまでの霊感商法詐欺と神世界事件の大きな違いは「ヒーリングサロン」という店舗(空間)を勧誘に利用し、女性をターゲットにし、更に「女性が女性を騙す」という手法を多用し、同性である安心感を最大限に生かしながら、同時に女性の弱点を狙うことで、多くの女性が被害を受けました。その女性たちを手先として使ってきたのが斉藤亨被告であり、「神様の次に尊い人物」と称し、姿を表さないことで崇められる存在を演出し、自らは手を下すことなく配下の者を使い次々と被害者から金を奪い取る詐欺を繰り返してきたのが神世界という組織であり、一連の組織的詐欺を主導してきたのが斉藤亨被告です。神世界事件は斉藤亨被告とその親族等によって極めて組織的に行われてきた事件です。
同種事件を再発させないためにも、こうした事件を引き起こした者には厳しい刑罰が下されることが何より大切です。
斉藤亨被告に厳罰を与えることにより、今後、こうした犯罪を目論む者に大きな警告を発することができます。市民をこうした犯罪被害から守るためにも、今回の判決は大変重要な意味を持つことになります。
2、情状による減刑は必要か
事件の首謀者である斉藤亨被告は、横浜地裁で行われた第一審公判で組織的詐欺の罪状を認めており、神世界グループ全体で詐欺行為を繰り返してきたことは既に確定した事実です。
しかし、10月16日に行われた控訴審にて斉藤亨被告は、「被害者からの返金請求に応じていること」、「今後も引き続き返金していく予定であること」を根拠として第一審で下された懲役5年の判決は重すぎるとして刑を減刑してもらいたいと述べました。
斉藤亨被告が被害者に返金した金は、元々被害者の金であり、その金は被害者に返却して当然のものでしかありません。
コンビニで万引きが発覚した犯人が、「じゃー返せばいいんだろう!」と言って万引きした商品を返しても罪が消えないのと同じで、斉藤被告が被害者に金を返したことだけで彼が犯した罪が軽くなることなどあり得ないのは周知のことです。
また斉藤亨被告が返済した金は、多くの被害者から詐取した金のごく一部でしかありません。神世界事件に巻き込まれ、被害に遭った方々は全国に多数おります。被害者の中には、家族や周囲の人に知られたくない等の理由で被害弁済を申し出ることができない者が多数いるのが実態なのです。こうした被害者に対して斉藤亨被告はこれまでも、そしてこれからも返金することはしないのです。そして返金可能な金額と返金ができない金額とを比較すれば、被害者に返金できている金額は被害金額の数パーセントにしか過ぎません。
こうした事実に着目すれば、斉藤亨被告が返金を根拠として減刑を願い出ていることに汲むべき情状など存在せず、ごく僅かな金額の返金をもって斉藤亨被告の刑を減ずるのは明らかな誤りとなります。
また斉藤亨被告は神世界グループ各社を解散する旨の解散公告を官報へ掲載しましたが、法人を解散するに当たり必要とされる「知れたる債権者への催告」を全く行っておりません。神世界被害者の中で、斉藤亨被告や神世界関係者から「知れたる債権者への催告」を受けた者は誰一人おりません。
更に驚くべき事は、京都の奥嵯峨に、(有)神世界名義の不動産が数軒あり、これらの価値は合わせて10億円程度と思われます。(有)神世界は既に法人を解散しており、今後これらの物件は株主である斉藤被告の所有となる可能性が大です。これらの不動産は被害者から不法に奪い取った金で購入したものであり、これら不動産を売却して得られた金は被害者に返済されなければならないものです。しかし、このままではその全てが斉藤被告の手中に納まることとなります。斉藤亨被告は山梨県内にも同様の不動産を所有しており、被害者から奪った金の大半は返金されずに斉藤亨被告が収得する結果となるのです。被害者への返金が無理ならば、国庫へ納めさせるべきです。
繰り返しになりますが、斉藤亨被告が返金した金は被害金額のごく一部でしかなく、被告人が返金した事実を過大評価してはならないのです。
斉藤亨被告は、日々まじめに過ごしていた何の罪もない人々から多額の金を奪い、身体的・精神的にも大きなダメージを負わせてきたのであり、斉藤亨被告も既に組織的詐欺を認めているのですから、被害者にきちんとした形で謝罪をすべきであります。しかし、斉藤亨被告は今日に至るまで一言の謝罪も行っておりません。
被告人が真実反省しているのであれば被害者に対して謝罪するのは至極当然のことでありますが、一言の謝罪もしていない事実は、斉藤亨被告が全く反省などしていないことを如実に物語っています。
こうした一連の事実を精査すれば、斉藤亨被告の第一審判決を減刑するのは誤りであり、返金行為を過大評価して下された第一審判決を見直し、求刑通りの懲役10年の刑を言い渡すのが妥当と思われます。できることであれば、求刑を上回る組織的詐欺罪の最高刑を斉藤亨被告に与えてほしいのが被害者の切なる思いです。
3、市民が安心して暮らせる社会を実現するために
犯罪を行う者は後を絶ちませんが、犯罪を抑止し、市民が安心して暮らすことのできる社会を実現することは警察、検察、裁判所関係者のみならず、日本国民全ての切実な願いです。
犯罪を抑止する方法は多岐にわたりますが、犯罪を行った者に厳しい刑罰が下されるという事実は、犯罪の抑止に大きな力を発揮する部分です。
神世界は、日本各地に拠点を作り、多数の者を奴隷の如く手足に使い組織的詐欺を繰り返し、多数の被害者から多額の金を奪い、被害者にいい知れない苦痛を与えてきました。被告人には厳罰が与えられて当然であり、それが新たな霊感商法詐欺を抑止する大きな力となります。
万が一、東京高等裁判所が被告人の刑を減ずるようなことがあれば、それは犯罪者達を喜ばせ、新たな霊感商法詐欺が続発する結果を招きます。
被告人に厳しい判決が下されることは、神世界事件被害者のみならず、日本からこうした犯罪をなくしてほしいと思う市民の切なる願いでもあります。
来る12月6日には、被告人・斉藤亨に対し東京高等裁判所が賢明な判決を下されることを心より期待しております。
以上
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