神世界グループは、神霊鑑定士が顧客の疾病や悩み事の原因を的確に特定した上、祈願等の方法により、その悩み事確実に解決する能力等ないのにこれをあるようい装い、顧客から祈願料等の名目で、金員を詐取することを共同の目的とする多数の継続的結合体であって、被告人斉藤の指示に基づき、顧客に対して神霊鑑定及び祈願の実施などの任務を分担し、組織により祈願料などの名目で金員を詐取する活動を反復していた団体である。
被告人斉藤は、神霊鑑定士と称して神霊鑑定及び祈願等を実施していた杉本明枝こと吉田明枝らと共謀の上、顧客から金員を詐取しようと企て、吉田(杉本)明枝には顧客の経営不振や疾病の原因等を特定する能力などないのにこれがあるように装い、「呪縛霊及び先祖の霊が経営不振の悩み事の原因である。祈願等を受ければその悩み事が解決できる」と嘘を言うなどし金員を詐取した。
被告人4名は、共謀の上、子宮筋腫に悩んでいたえんとらんすアカサカの顧客らから金員を詐取しようと企て、被告人史利らには顧客の疾病等の悩み事の原因を的確に特定した上、祈願等の方法によりその悩み事を確実に解決する能力などないのにこれがあるように装い、被害者に対し、薬の毒素が子宮筋腫の原因であり100万円の祈願をすれば子宮筋腫が治癒すると嘘を言うなどし、祈願料等の名目で現金を詐取し、団体の活動として詐欺の罪に当たる行為を行った。
神世界グループは御霊光の取り次ぎを主力商品としていたが、被告人斉藤はこれに加え、神霊鑑定により顧客から多額の金員を獲得する方法を考案し、被告人佐野を神霊鑑定士としたのを手始めに、傘下法人の経営者らを次々と神霊鑑定士に仕立てて神霊鑑定を行わせ、売り上げを飛躍的に増大させた。
中でもえんとらんすアカサカに於いては、被告人佐野や被告人史利が講師となって他の傘下法人の経営者らを対象に「神霊能力開発講座」を開講し、同講座を受講すれば神霊能力が取得できると標榜していた。
神世界グループによる詐欺の典型的手口は、担当従業員が宗教色を隠蔽しつつ「ヒーリングを受けてみないか」などと言って、主として30代から40代の女性を勧誘して顧客を獲得し、サロンと称する店舗に於いて、比較的安価な御霊光の取り次ぎを繰り返し受けさせるとともに、「フォロー」と称する対話などにより、御霊光にはあらゆる病気を治癒して運気を好転させる力がある、御霊光を受け続けなければ大変まずいことが起きる等と信じ込ませた上、神霊鑑定士による神霊鑑定や御祈願を受ければ疾病や経営不振などの悩み事の原因を特定してこれを解決ることができる等と言って高額な神霊鑑定や御祈願へと誘導した。「御玉串」と称して多額の現金を交付させるというものであった。
神世界による一連の犯行は、被告が利益を得る目的で行われ、被害者の健康等に関する悩み等につけ込んで多額の現金を詐取した巧妙かつ悪質な組織的犯行として行われた。
被害者は長年にわたって積み上げてきた貯金を取り崩したり、借金をしたりして工面した現金を騙し取られた上、解決するとされていた悩みは解決せず、御祈願等の他に解決手段はないと言われていたため治療が遅れて苦しめられた他、ヒーリングサロンに加入したことにより友人を失うなど、精神的にも肉体的にも苦痛を被っており、被害結果は重大である。
被告人斉藤は神世界グループの最高責任者であり、教主として絶対的な地位を占めており、神書を著してグループの行動規範を定めると共に、グループの組織を形成し、御霊光の取次から神霊鑑定、御祈願といった詐欺のシステムを構築し、その上で被告人斉藤は祭典や会議などの機会に、傘下法人の各経営者に対し、「御神業のためには金と人が必要である」などと述べ、上記システムに乗っ取って神霊鑑定や御祈願を行い、顧客を獲得し売り上げを到達することを至上命題として掲げると共に、売り上げの低い傘下法人を他の傘下法人に吸収させるなどして、各経営者間の熾烈な競争を煽っていた。
被告人斉藤は、傘下法人からロイヤリティとして、有限会社神世界に上納させた売上金の相当部分を自己の報酬として巨額の利得を得ていた。その上、高級ブランド品などの贅沢品の購入などにこれを充てている。
被告人斉藤は、公判で事実関係を認めたものの、「神霊鑑定を正確にできない者が神霊鑑定をすることを阻止しなかった点に問題があった」などと、不正行為を助長していなかったかのような供述をしており、自己の責任の所在を曖昧にしている。
被告人佐野は、えんとらんすグループの業務を統括していたほか、神世界グループの初代の神霊鑑定士と称し、神霊能力開発講座を開講するなどして、他の者を神霊鑑定士として養成する活動にも従事しており、神世界グループの中でも被告人斉藤に次ぐ最高幹部の一人であった。
被告人佐野は、被告人斉藤の指示のもと、えんとらんすグループ内部においては被告人嘉子および被告人史利を厳しく叱咤することによって、売り上げを上げさせていた。
更に被告人佐野はえんとらんすグループの売上金の中から高額の報酬を受け取り、相当な利得を得ていた。
被告人佐野は、公判においても当初は犯行を否認していた。組織的詐欺の事実を認めた後も、「説明不足により説明が不十分となり、誤解が生じた」と弁解するなど、反省の態度は十分であるとは言い難い。
被告人史利は、えんとらんすグループにおいて被告人佐野および被告人嘉子に次ぐ枢要な地位を占め、神世界グループにおいては、被告人佐野の指示のもと、神霊能力開発講座の講師を担当するなどして、神霊鑑定士の養成に携わったほか、各犯行においても欺罔行為を担当するなど重要な役割を果たしていた。また、被告人史利は、えんとらんすグループの売上金の中から相当額の利得を得ていた。
被告人史利は、公判においても当初は本件各犯行を否認していた。組織的詐欺の事実を認めた後も、各犯行について「自己の言動が各被害者の誤解を招いた」などと弁解しており、反省の態度が十分であるとは言い難い。
被告人嘉子は神世界グループにおいて枢要な役割を果たしており、えんとらんすアカサカにおいては教会長として被告人佐野に次ぐ高い位置を占め、神霊鑑定士として高額の御祈願を担当しており、御祈願を行うなど重要な役割を果たしていた。また被告人嘉子も、被告人史利と同様、相当額の利得を得ている。
被告人嘉子は、公判においても当初は本件各犯行を否認していた。組織的詐欺の事実を認めた後も、「人を集めることがメインで売り上げには固執していなかった」と述べるなど、自己の責任の軽減を図るような供述をしており、反省の態度は必ずしも十分ではない。