佛教タイムス

 一般の方にはあまりなじみがない新聞だが、「佛教タイムス」という新聞がある。佛教タイムスは1946年(昭和21年)に創刊され、現在は週刊で発行されている新聞だ。記事は特定の宗派に偏ることなく編集されており、伝統仏教界の情報を中心に幅広い視野に立って新宗教の情報や環境問題、宗教産業に関する情報など、仏教界、宗教界の情報を幅広く伝えている。
 2012年5月24日発行の佛教タイムス(第2488号)に、「神世界事件の判決と実態の乖離」と題した記事が掲載された。この記事は、ジャーナリスト・藤田庄市氏が執筆したもので、記事の内容は誠に的を射たものとなっている。5月1日の判決を聞いた神世界事件被害者の多くは、自分たちが受けた被害の大きさ・深刻さと比較して、被告等に下された判決はあまりにも軽く、日本の司法制度は被害者に厳しく加害者に甘いものであることを改めて実感させられた。藤田氏の指摘通り、今回の判決は神世界事件の被害実態から大きく乖離(かいり)した不当な判決であった。


1、被害実態が裁判で精査されていない
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 藤田氏は記事の中で、実際の被害額と立件された被害額の極端なアンバランスを指摘している。神世界事件全体では被害者数約1万人、被害総額約180億円という大きな被害が出ていることが捜査の過程で明らかになっていながら、実際に立件され裁判の訴状に記載された被害額は斉藤亨と杉本明枝が共謀して詐取した1340万円、佐野孝ら3名が騙し取った150万円だけでしかない。これでは氷山の一角どころか神世界事件という大きな氷山を前にしながら、米粒ほどの被害だけを見て判決を下したのと同じだ。今回の裁判は極めてミクロな視点で被告等を裁いたために、神世界事件全体の被害実態から見れば被告等に下された判決は極めて不当な、被害者を愚弄する判決となった。
 記事の中では紀藤正樹被害対策弁護団長が述べた、「普通の金銭詐欺と同じように裁判所に受け取られてしまった。人生そのものを狂わす被害実態のひどさ、精神的被害の大きさの立証が足りなかった」という言葉も紹介されている。
 私(fujiya)は約6年間にわたり多くの神世界被害者から情報を得て神世界を告発する活動を続けてきたが、この事件は金銭被害の大きさもさることながら、神世界のために仕事を辞めさせられ、貯金を取り崩し、生命保険まで解約し、一日の時間の大半を神世界のために使うことを強要され、その結果家族関係が破綻するなど、金、時間、人間関係の全てを奪われ、貴重な人生を神世界によって翻弄されてきた被害者の無念を思うと、今回被告等に下された判決はあまりにも軽すぎるとしか言いようがない。特にスタッフとして働かされていた人達は経営者等から脅迫的な言葉を絶え間なく浴びせられ、恐怖心を煽られ、その当時は御霊光が絶対的なものと思い込まされていた。神世界事件がこれだけ大きな事件になったのは、斉藤亨や神世界幹部らが、スタッフらを巧みにマインド・コントロールし手先として使っていたからだ。神世界事件を正しく捉えるためには、斉藤亨や会主と呼ばれた連中によって行われてきたマインド・コントロールの実態を知ることが特に重要だ。警察・検察・裁判所関係者は、5/30に紀藤正樹氏が出した「マインド・コントロール」の本を熟読し、こうした犯罪を正しく裁くためにはマインド・コントロールに関する十分な知識が求められることを知るべきである。今回の裁判では神世界事件に於けるマインド・コントロールによる被害には全く目が向けられていない。
 元スタッフなどで、神世界によるマインド・コントロールによって操られ、心ならずも神世界事件に加担させられ、それによって精神的被害を受けた人は、個々の会主・経営者・特定の幹部スタッフに対して、個人的に損害賠償請求を起こしても然るべきと思われる事例も多い。

 社会から神世界事件のような霊感商法を根絶するためには、警察・検察・裁判所がこうした犯罪に対して毅然とした態度で臨むことが強く求められる。警察・検察・裁判所の存在意義は世の中から不正や悪事を根絶し、社会秩序を維持することにあるのだ。犯罪を抑止するためには、罪を犯せば厳しく罰せられることを知らしめることが大切だが、今回の判決がこうした犯罪を目論む者にとって抑止力になったかと言えばむしろ逆でしかない。今回の裁判では被告等が犯した犯罪のごく一部だけしか審議の対象とならず、更には被告等が刑を軽くするために講じた一部被害者への返金や組織の解散という見せかけの反省ポーズを過大に評価し、求刑を大きく下回る判決や執行猶予付き判決を下したのは、被告等を喜ばせるだけでしかなく、被害者を軽視した判決と言わざるを得ない。今回の判決は、”悪いことをしても、ごく一部の被害者に金を返し、組織を解散したように装えば大幅に刑が軽減される”という悪い見本を犯罪者に示したようなものだ。
 霊感商法事件はこれまでにも多数あったが、今回の事件は教祖が詐欺を認めた前代未聞の事件である。神世界という団体が当初から詐欺目的で設立された極めて悪質な組織的詐欺集団であったことは被告人自らが認めた事件だ。逮捕・起訴された被告は一部の者に過ぎないが、神世界全体で組織的に犯罪が繰り返されたきたことは裁判の中でも明らかにされており、逮捕されていない神世界関係者も含めて、どれだけ多くの者が悪質な詐欺、脅しを繰り返していたのかを解明することは決して不可能なことではなかった。こうした組織的犯罪を裁くためには起訴事実だけに固執するのではなく、事件全体を俯瞰しての判断が求められるが、今回の裁判では事件全体から見ればほんの一部でしかない部分だけを見て判断が下された。一民間人に過ぎない私ですら、神世界事件の深部に迫ることができているのだから、警察・検察・裁判所という公的機関が延べ数千人の人間を組織的かつ的確に動かしていれば、神世界事件の全貌を暴き出すことは決して不可能ではなかった筈だ。裁判所がむざむざ詐欺犯の術に嵌まり、刑を減じたり、執行猶予付き判決を与える結果になったことは甚だ残念である。


2、解散という名のパフォーマンス
 記事の中で藤田氏は、「斉藤教祖らは神世界の解散を表明し、それも減刑の理由とされたが、現役信者の傍聴動員とその様子をみても、本当の解散は疑わしく、また、斉藤は判決後、ただちに控訴した。これも反省のほどを疑わせるものである」と述べている。
 5月1日の判決後も、私のところには各地から神世界関係者の活動情報が入ってきている。数カ所の拠点は閉鎖され、表面上は活動を停止したようだが、今後は団体として活動するのではなく、「個人として御霊光をいただく」方針に変更されたので、会員の自宅等を仮の拠点としながら目立たないように活動していくのだろう。
 活動の中心になっているのは、びびっとのW田M和、みろく(天救)のM入E実とその側近等だが、幹部会員の中にはこれまで熱心に御霊光を推し進めてきた手前、今になって急に方針転換する訳にも行かず、「御霊光は本物だ。今回の事件は一部の幹部が暴走したため起きたものであり、教祖様はそうした者に翻弄されてしまったのだ」と教祖を擁護する解釈も吹聴されている。
 数年後に教祖・斉藤亨が娑婆に戻ってきたときには、「平成24年に行われた裁判では、私は教祖を辞めると述べたが、刑務所から戻ってきてみると時節が到来し、多くの人々が私の教祖復活を望んでいることが分かったので、再び教祖になることにした」等と述べ、再び同じような商売に手を染めるのだろう。斉藤亨がたばこ屋の店番をしている姿や、ハローワークで列に並んでいる姿を想像するのは無理がある。


3、名言
 記事の中で藤田氏は神書を初めて読んだときの感想を、「初めて読んだ時は思わず『こんな宗教見たことない』と、のけぞってしまった」と述べている。カルト問題や宗教問題に精通した藤田氏でも驚くほど神書は代金支払いと神を結びつけた内容になっているということだ。そして、藤田氏は神世界をこう結論づけている。

(神世界は)新宗教を母胎とし、スピリチュアルで厚化粧した宗教的脅迫による拝金呪縛宗教。

 宗教問題に造詣の深い藤田氏ならではの極めて明解な分析である。”スピリチュアルで厚化粧”というフレーズから、私は数名の神世界関係者の顔が思い浮かんだ。


4、今後も監視が必要
 神世界が解散宣言を出そうが、教祖等被告全員に有罪判決が出されようが、長年にわたって御霊光を刷り込まれてきた会員の中には、未だに御霊光は本物だと言い張り、家族と対立を続けている者が多い。W田M和やM入E実にしてみれば、こうした者がたくさん残っているおかげで今でも活動を続けることができている訳で、こうした者がいなくならない限りW田やM入は今後も活動を続けていくことだろう。
 しかし幸いなことに、私のところには、”やや目覚めつつある者”から断片的な情報が入ってくる。個々の情報は断片的であっても、そうした情報をつなぎ合わせていくと現在の神世界の活動実態が徐々に浮かび上がってくる。
 どのような情報でも良いので、神世界に対して疑問を感じている方は私のところに情報をお寄せいただきたい。「御霊光は本物だ」とするメールも時折舞い込むが、そうした内容でも良いので意見を寄せていただきたい。
 神世界の活動は全国に及んでおり、私一人ではなかなか監視しきれないので、可能な範囲でよいので、神世界の新たな動きが分かればお教えいただきたい。残念ながら今回は逮捕に至らなかったW田やM入であるが、彼女等が新たな犯罪を犯した事実をつかむことができれば、今度こそは彼女等に手錠をはめることができる。彼女等を逮捕するためには、”特商法違反”でも構わない。新たな勧誘をする際にクーリングオフ(契約解除)に関する書類を渡さなかったり、強引な勧誘をしたりすればそれだけで特定商取引法違反(不備書面の交付など)で逮捕が可能だ。例え微罪であろうとも逮捕されれば実名が晒され、更なる犯罪を抑止することにつながる。未だに一言の謝罪もしない神世界幹部は反省など全くしていない。今なお活動を続けているW田、M入姉妹とその取り巻き連中に対しては、徹底した監視を続けることが肝要だ。


5、御霊光からの脱却
 神世界は解散宣言を出し、一部の被害者には返金し、斉藤亨等被告全員に有罪判決が出されたことで、一見すると神世界事件は解決したかのように見えるかもしれないが、そうではない。
 いまなお多くの人が御霊光を信じ続けている。これだけ神世界事件の報道が繰り返し流され、斉藤亨が組織的詐欺を認めたことが明らかになっても、未だに目が覚めないのはなぜなのかと不思議に思われる方もあるかもしれないが、それがマインド・コントロールの怖さだ。一旦マインド・コントロールにかかると、すべての事象はマインド・コントロールされた思考をベースにして判断されるので、新聞やテレビで流されているニュースが間違っていると本気で思ってしまう。現に、「マスコミが間違っている」、「警察が間違っている」という言葉が現役会員らの間では普通に言い交わされているのが現状だ。マインド・コントロールされている人に世間の常識は通用しない。
 御霊光を信じている家族を抱え、日々悩んでいる家庭は多い。どうすれば、いつになれば目が覚めてくれるのかと家族を案じている方は、ぜひ上記「マインド・コントロール」をお読みいただきたい。決してこれは本の売り上げを伸ばす営業目的で言っているのではない。スティーヴン・ハッサンが書いた「マインド・コントロールの恐怖」はページ数も膨大で非常に難しい本だが、紀藤氏が書いた「マインド・コントロール」はオセロの中島さんの事例など身近な例を多く紹介して書かれており理解がしやすいことと、マインド・コントロールされた家族を救うための方法がたくさん書かれている。ぜひこれを読んで、御霊光から目覚めない家族の方を一日でも早く救ってあげていただきたい。

 またこの本は今なお神世界に属している方にも読んでいただきたい。「敵が書いた本など読めるか!」と思われるかもしれないが、私は神書も参拝の栞も神世界新聞もその他のチラシ類も何度となく読んだ。戦いに勝つためには相手を知らなければならない。神世界側から見れば紀藤氏は「敵」に見えるのであろうが、その”敵”がどのようなことを言っているか見てやろうという動機でも良いので「マインド・コントロール」を読んでいただきたい。
 この本を読むことで、あなたは救われるかもしれない。読まなければ大きな損をし続けることになるだろう。読んでみて、「何の役にも立たなかった」と思った場合は、私が本代1,000円をお返ししてもよい。



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